意外か、妥当か? キャデラックF1、2026年布陣確定へ―角田裕毅の選択肢は残るのか

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米国を本拠とするキャデラックF1チームは、2026年のF1参戦初年度に向け、バルテリ・ボッタスとセルジオ・ペレスの2人を起用する方向で契約交渉の最終段階に入っているようだ。米専門メディア『RACER』などが報じた。早ければ次戦オランダGP前にも契約が締結され、正式発表に至る可能性がある。

チーム代表グレアム・ロウドンは以前から「少なくとも1名は経験豊富なベテランを起用する」との方針を示していたが、複数の候補と交渉を重ねた結果、最終的には若手を選ばず、F1通算527戦・16勝の実績を誇るボッタスとペレスのベテランコンビに絞ったとされる。

バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)とセルジオ・ペレス(レッドブル)、2023年4月2日F1オーストラリアGP決勝Courtesy Of Alfa Romeo / Red Bull Content Pool

バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)とセルジオ・ペレス(レッドブル)、2023年4月2日F1オーストラリアGP決勝

ペレス&ボッタスの実績

ボッタスはメルセデス時代に通算10勝を挙げ、7度のF1王者ルイス・ハミルトンのチームメイトとしてランキング2位を2度獲得した。2024年末でザウバーを離脱し、今季はメルセデスのリザーブドライバーを務めている。

一方のペレスはレッドブルで5勝を記録し、レーシングポイント時代にも1勝を挙げている。2024年末にレッドブルのシートを失い、現在はF1浪人生活を送っている状況だ。

ペレスは通算281戦で歴代8位、ボッタスは246戦で歴代13位タイに位置し、両者ともF1史上屈指の経験を持つ。2026年の開幕時点でともに36歳を迎えるが、その豊富なキャリアは新規参入チームにとって大きな財産となり得る。

角田裕毅起用の可能性

最終プラクティスのためにパドック入りする角田裕毅(レッドブル)、2025年6月14日(土) F1カナダGP(ジル・ビルヌーブ・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

最終プラクティスのためにパドック入りする角田裕毅(レッドブル)、2025年6月14日(土) F1カナダGP(ジル・ビルヌーブ・サーキット)

キャデラックは当初、周冠宇、ミック・シューマッハ、ジャック・ドゥーハン、フェリペ・ドルゴビッチら若手起用の可能性も検討していた。だが7月の首脳会議で「経験を優先すべき」と結論づけ、以降はボッタスとペレスに絞って交渉を加速させてきたとみられる。

一方で、2026年以降の去就が未定の角田裕毅にも可能性は残されている。角田は25歳ながら既に100戦以上を経験しており、成長途上で知名度も高い。現役F1ドライバーとして2025年シーズンを戦う点は、ペレスやボッタスにはない強みだ。

一部報道では「角田裕毅が現行契約から解放されれば、キャデラックが関心を示す可能性もある」とされ、キャデラックにはペレスかボッタスのどちらか一方と先に契約し、もう一方を後回しにする選択肢もあると指摘されている。

それでも、キャデラックが早期に契約を成立させるメリットは大きい。シミュレーター開発やテスト走行への投入が直ちに可能となることは、チーム体制を固めるうえで重要な意味を持つ。そのため、キャデラックがレッドブルにおける角田の去就を待つかどうかは不透明だ。

ボッタス、復帰の暁には降格ペナ

メディアの取材を受けるバルテリ・ボッタス(ザウバー)、2024年12月5日(木) F1アブダビGP(ヤス・マリーナ・サーキット)Courtesy Of Sauber Motorsport AG

メディアの取材を受けるバルテリ・ボッタス(ザウバー)、2024年12月5日(木) F1アブダビGP(ヤス・マリーナ・サーキット)

ボッタスは昨年のアブダビGPでケビン・マグヌッセンと接触し、5グリッド降格のペナルティを科された。だが今季に向けてザウバーのシートを失ったため、この処分を消化する機会がなかった。

2026年に向けてはF1競技規則が改定され、グリッド降格処分に「12ヶ月間」の時限措置が設けられた。この変更を受け、一部では「ボッタスはペナルティを消化する必要がないのでは?」との見方も出ている。

だが、規則改定があったとしても、それ以前に下された裁定が遡って無効化される仕組みは存在しない。当時のルールに基づいて科された処分は有効であり続けるため、ボッタスがキャデラックでF1復帰を果たした場合、2026年の開幕戦で5グリッド降格を受ける見通しだ。

短期の参戦準備、逆境に強い2人

キャデラックは2023年11月にフォーミュラ・ワン・マネジメント(FOM)と国際自動車連盟(FIA)から正式参戦の承認を得たばかりで、準備期間が非常に限られている。それもあってデビューイヤーは苦戦が予想されるが、名門チームで経験を積んだ2人の加入は、組織作りや開発プロセスに貴重な知見をもたらすことになる。

ペレスは、資金難に陥り管財人管理下となったフォースインディアで勝利を掴んだ実績を持ち、ボッタスは後方グリッドでの戦いを熟知している。逆境を知る2人の存在は、参戦初年度のキャデラックにとって大きな武器となり得る。