
エステバン・オコン「礼雄に呼び出される…」―ハースの英チームメイト接触事件の結末
2025年F1第12戦イギリスGP決勝後、エステバン・オコン(ハース)は陰鬱な表彰を浮かべながら語った。「ふたりともアヤオに呼び出されるのは間違いないだろうね」チームメイトであるオリバー・ベアマンとの接触について、小松礼雄チーム代表の”お叱り”を覚悟していた。
オコンにとって、この週末は最初から歯車が噛み合わなかった。アップグレードされたVF-25の真価を発揮したのは、皮肉にも新人ベアマンだった。ルーキーは予選Q3進出を果たして8番手タイムを記録する一方、オコンはマシンのポテンシャルを引き出せず15番手に沈んだ。
決勝でも不運は続いた。オコンは1周目にリアム・ローソン(レーシング・ブルズ)と接触。さらに残り9周では、チームメイトとの間で決定的な瞬間を迎えた。
事の発端は、ベアマンがオコンより4周早く最後のピットストップを行ったことだった。本来なら先行しているべきベアマンだが、高速コーナーでコースから外れるミスを犯し、ピットアウトしたオコンの後方に後退してしまう。
タイヤに熱の入っていないオコンに対し、ベアマンはややアグレッシブにコーナーのイン側に飛び込んだ。右フロントがオコンのフロアと接触した瞬間、デブリが宙を舞い、両者は揃ってスピン。大きくタイムを失った。
ベアマンは最終的に11位でフィニッシュしたものの、10位のジョージ・ラッセル(メルセデス)からわずか1.5秒遅れ。チームメイトとの接触がなければ、10グリッド降格ペナルティで18番手スタートという劣勢にもかかわらず、入賞圏内に手が届いていた可能性は十分にあった。
「オリーとの一件については、僕個人としても、チームのことを考えても残念に思ってる」
オコンの言葉には、複雑な心境が滲んでいた。「僕も彼も、本来ならもっと良い結果が残せたはずだ。あの位置からスタートして、ふたりともポイント圏内に入れるだけの走りができていたからね」
レース後、ベアマンと話をしたかと問われると、オコンは「まだ話をしていない」と答えた。そして今週末の収穫について問われた時、彼は「ふたりともアヤオに呼び出されるのは間違いないだろうね」と返した。
「しっかりとレースを振り返って、改善すべき点を改善し、今後こういったミスを繰り返さないようにしていかなきゃ」
だが、オコンの恐れとは裏腹に、小松は意外にも寛容な判断を下した。一連の出来事を「レーシングアクシデント」と見なし、両者に責任を問わない意向を示したのだ。無論、内部的にどうであるかは分からないが。
「今日のレース運びがひどかったという事実から目を背けることはできません」と小松は率直に振り返った。チームメイト同士の接触について「絶対に起きてはいけないこと」としつつも、両者のオンボード映像を詳細に確認し、2人から詳しく話を聞いた上で、最終的に「レーシングアクシデント」であると判断したと説明した。
ただし、小松はより根本的な問題を指摘することも忘れなかった。「そもそもこのような状況はあってはならないことでした」ベアマンがピットアウト後にコースを飛び出し後退したことで、この危険な状況が生まれたことに言及し、チームとしてより迅速にチームオーダーを発動し、トラブルのリスクを最小限に抑えるべきだったと示唆した。
「今回の件はレースインシデントですが、今後こうしたことが起きないよう、徹底していきます」
2025年F1第12戦イギリスGPでは、ランド・ノリス(マクラーレン)が3番グリッドから優勝。オスカー・ピアストリが2位でフィニッシュし、マクラーレンが1-2フィニッシュを飾った。3位には自身初となる表彰台獲得を果たしたニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)が続いた。
スパ・フランコルシャンを舞台とする次戦ベルギーGPは、7月25日のフリー走行1で幕を開ける。