フェルスタッペン、「今度一緒にパスタでも!」と”ポール支援”に感謝―だがアントネッリは意外な返答…

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2025年F1第12戦イギリスGP予選。誰もが予想しなかった結末に、パドックは騒然となった。プラクティスを通して一度もタイムシートのトップに立てなかったマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が、まさかの逆転ポールポジション。マクラーレン勢とフェラーリ勢の一騎打ちになると見られていただけに、実にスリリングな頂上決戦となった。

そして、その陰には思わぬ「助っ人」がいた。

4度の王者が見せた茶目っ気

「キミがトウをくれて、僕のラップを少し助けてくれたんだ。だから今度、一緒にパスタを食べに行くよ」

予選後、Sky Sportsのインタビューに笑顔で応じたフェルスタッペンは、ユーモア交じりにこう語った。その感謝の相手は、アンドレア・キミ・アントネッリ。メルセデスの若きホープが、まさかの”アシスト”をしていたという。

予選後のドライバープレスカンファレンスに出席するポールシッターのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2025年7月5日(土) F1イギリスGP(シルバーストン・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

予選後のドライバープレスカンファレンスに出席するポールシッターのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2025年7月5日(土) F1イギリスGP(シルバーストン・サーキット)

1週間前の”負債”が関係?

実は、この2人には1週間前の「因縁」があった。

オーストリアGPの1周目、タイトル争いの真っ最中にいるフェルスタッペンに、アントネッリが追突。4度のF1王者のレースを台無しにしてしまったのだ。

だからこそ、フェルスタッペンのパスタディナーの提案は、アントネッリの「罪滅ぼし」に対する感謝の表れかと思われた。

実際、この微笑ましいやり取りは、“ツノガス / YUKIERRE(角田裕毅&ピエール・ガスリー)”に並ぶような新たな「ブロマンス」の可能性を感じさせるものになり得たが、実際には「罪滅ぼし」などではなかった。

むしろトウを与えないように

「アドバンテージを与えないように、できるだけ早くラインを外れたんだ。少しは彼を助けることになったかもしれないけどね。まぁ、何にしても特に注意を払ったわけじゃないんだ」

当のアントネッリは別のインタビューで、後方からフェルスタッペンが迫っていたことは把握していたものの、意図的にトウ(スリップストリーム)を与えたわけではないと説明。むしろ、できるだけ影響を与えないよう配慮したのだと明かした。

メルセデスとレッドブルは、コンストラクターズ選手権で3位を争うライバル関係にあり、ましてや当のアントネッリ自身も、チームメイトのジョージ・ラッセルもフェルスタッペンと直接グリッドを争う立場にあった。意図的にトウを与えるなど、非現実的と言わざるを得ない。

お互いのヘルメットを見せ合うメルセデスのジョージ・ラッセルとアンドレア・キミ・アントネッリ、2025年F1イギリスGPCourtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

お互いのヘルメットを見せ合うメルセデスのジョージ・ラッセルとアンドレア・キミ・アントネッリ、2025年F1イギリスGP

つまり、フェルスタッペンが受けた「恩恵」とは、アントネッリの支援によるものではなく、不可抗力的に発生した偶然の産物だったというわけだ。

それでも、結果的にフェルスタッペンのラップタイムにプラスの影響を与えたことは間違いない。F1の世界では、わずか数百分の1秒の差が明暗を分ける。アントネッリの「意図しない親切」も、そんなマージナルゲインの一つだったのかもしれない。

パスタディナーは実現するのか?

真相がどうであれ、フェルスタッペンの軽妙なコメントは、先週末の事故を水に流し、若きライバルとの関係を前向きに捉えようとする姿勢の表れでもある。

実際、オーストリアでの事故直後、フェルスタッペンはアントネッリからの謝罪を受け、「誰にでもああいうミスはある」と、大人の対応を見せていた。

とは言え、フェルスタッペンが今回のトウの真相を知ったとき、それでも変わらずアントネッリをパスタディナーに誘うのかどうかは、定かではなく、また同時に興味深いところでもある。

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