
F1オーストリアGP 決勝直前情報: タイヤ戦略考と天気、見所とスターティンググリッド
日本時間6月29日(日)22時にスタートを迎える2025年F1第11戦オーストリアGP。ここでは、スターティング・グリッド、予選結果からの変動、そして予想されるタイヤ戦略や気象条件についてまとめる。
スターティンググリッド & 見所
前戦カナダGPでは12名のドライバーのグリッドが変動したが、オーバーテイクが容易なレッドブル・リンクでの週末に降格ペナルティを受けた者はなく、全車が予選順位通りにスターティンググリッドに着く見通しだ。
優勝候補筆頭ノリスのスタート
Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.
ピレリ・ポールポジション・アワードを受け取るランド・ノリス(マクラーレン)、2025年6月28日(土) F1オーストリアGP予選(レッドブル・リンク)
最前列に並ぶのは、前戦カナダGPでチームメイトのオスカー・ピアストリ(マクラーレン)に衝突したランド・ノリス(マクラーレン)。その隣には、シャルル・ルクレール(フェラーリ)がつける。
ノリスにとってレッドブル・リンクは、2020年にF1初表彰台を獲得した相性の良いサーキット。今回の予選では圧巻のラップを披露し、2番手に対して今季最大となる0.5秒以上の大差をつけてポールを獲得した。
決勝ではスタートを無難に決められれば、現在22ポイント差があるピアストリとのギャップを縮める好機となる。ただ、ノリスはこれまでスタートでポジションを落とすケースが少なくなく、不安材料が残るのも事実だ。
一方で、3番手のピアストリも「3位でフィニッシュするつもりはない」として、逆襲に向けてモチベーションを高めている。
マクラーレン最大の脅威はフェラーリ
Courtesy Of Ferrari S.p.A.
フリー走行開始に向けてガレージで待機するフェラーリのシャルル・ルクレールとルイス・ハミルトン、2025年6月27日(金) F1オーストリアGP(レッドブル・リンク)
予選結果においては、Q3終盤に発生したピエール・ガスリー(アルピーヌ)のスピンによる黄旗の恩恵を受けたことは否めないが、新型フロアを投入したフェラーリ勢が今週末、マクラーレンにとって最大の脅威となる可能性はほぼ間違いない。
2番手ルクレールのすぐ後方、2列目にはピアストリが3番グリッド、ルイス・ハミルトン(フェラーリ)が4番グリッドに並ぶ。
金曜のロングランでフェラーリは、マクラーレンに次ぐ安定したペースを示しており、2台が揃って上位に位置したことで、戦略面でもマクラーレンにプレッシャーをかける存在になりそうだ。ルクレールは「ランドを苦しめてやりたい」と鼻息を荒くしている。
また、ガスリーのスピンの影響で最終アタックを断念し、7番手に甘んじたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が、決勝でトップ4争いに絡めるかどうかも注目される。フェルスタッペン自身は、暑いコンディションがクルマの問題を悪化させていると指摘しており、レース当日の気温にも注目が集まる。
角田とサインツの巻き返し
Courtesy Of Red Bull Content Pool
最終プラクティス前のファンフォーラムステージで映画『F1:The Movie(邦題:F1/エフワン)』の主演俳優ブラッド・ピットのマスクを着用するマックス・フェルスタッペン(レッドブル)と、セバスチャン・ベッテルのマスクを着用する角田裕毅、2025年6月28日(土) F1オーストリアGP(レッドブル・リンク)
フィールド全体が拮抗するなか、角田裕毅(レッドブル)は0.1秒未満という僅かの差で予選18番手に沈んだが、週末を通じたプラクティスでのペースは決して悪くなく、皮肉にも後方グリッドからの追い上げに慣れていることもあり、波乱含みの展開となれば、ポイント圏内に浮上する可能性は十分にある。
同様に、19番手に沈んだカルロス・サインツ(ウィリアムズ)にも巻き返しのチャンスがある。予選ではフロアの損傷、ブレーキトラブル、さらにソフトタイヤという三重苦に見舞われたが、本来であればQ2上位争いに絡むだけのパフォーマンスは備えていた。
ウィリアムズとしても、適切なレース戦略によって、サインツを中団争いに引き戻せるかが問われるレースとなる。アップグレードの成果を背景に、予選8番手を記録したガブリエル・ボルトレート(ザウバー)のキャリア初ポイントも期待される。
以下は暫定スターティンググリッド。正式版との差異が発生した場合は更新される。なお、各ドライバーの予選結果からの変動も併せて記載する。
Pos | Driver | Team | Qualifying |
---|---|---|---|
1 | L.ノリス | マクラーレン | 1(-) |
2 | C.ルクレール | フェラーリ | 2(-) |
3 | O.ピアストリ | マクラーレン | 3(-) |
4 | L.ハミルトン | フェラーリ | 4(-) |
5 | G.ラッセル | メルセデス | 5(-) |
6 | L.ローソン | レーシングブルズ | 6(-) |
7 | M.フェルスタッペン | レッドブル | 7(-) |
8 | G.ボルトレート | ザウバー | 8(-) |
9 | A.K.アントネッリ | メルセデス | 9(-) |
10 | P.ガスリー | アルピーヌ | 10(-) |
11 | F.アロンソ | アストンマーチン | 11(-) |
12 | A.アルボン | ウィリアムズ | 12(-) |
13 | I.ハジャー | レーシングブルズ | 13(-) |
14 | F.コラピント | アルピーヌ | 14(-) |
15 | O.ベアマン | ハース | 15(-) |
16 | L.ストロール | アストンマーチン | 16(-) |
17 | E.オコン | ハース | 17(-) |
18 | 角田裕毅 | レッドブル | 18(-) |
19 | C.サインツ | ウィリアムズ | 19(-) |
20 | N.ヒュルケンベルグ | ザウバー | 20(-) |
レースの模様はDAZNとフジテレビNEXTで完全生配信・生中継される。
タイヤ戦略:2ストップが有力
レッドブル・リンクでは、現行のグランドエフェクトカー導入以降、2ストップ戦略が主流となっており、この傾向は今大会でも続く見込みだ。
ピレリのモータースポーツ部門を率いるマリオ・イゾラは、「ミディアムとハードを組み合わせた2ストップが最速」と見立てている。
ピレリのシミュレーションによると、最速とされる戦略は「ミディアム→ハード→ミディアム」の2ストップ。1回目のピットインは18〜24周目、2回目は46〜52周目が推奨されており、レーシング・ブルズ、アストンマーチン、アルピーヌ、ハースを除く全チームがこの戦略を実行可能だ。
昨年大会でソフトタイヤを使用したのは、ノリスとの接触によりパンクを喫したフェルスタッペンと、ファステストラップを狙ったアロンソのみであり、今大会でもソフトはレース用としては実戦的ではないと考えられている。
なお理論上、1ストップ戦略も実行可能ではあるが、タイヤのデグラデーションが当初の想定より低いとはいえ、ピレリの試算では2ストップと比べて約7秒のロスが見込まれるという。
レッドブル・リンクはオーバーテイクが比較的容易なサーキットであるため、セーフティーカー(SC)の導入タイミングに合わせることができない限り、シングルストップに固執する利点は乏しいかもしれない。
気になる天気:高温がタイヤ戦略を左右か
日曜のシュピールベルクは終日晴れの予報となっており、ドライコンディションでの決勝が見込まれるが、焦点となるのは気温だ。
フォーメーションラップが始まる現地時間15時からの約3時間は、最高気温が30℃を超える見通しで、週末を通じて最も過酷なコンディションとなる可能性がある。特に高温を嫌うメルセデスやレッドブルにとっては、より一層厳しい試練となるかもしれない。
路面温度も50℃を超えると予想されており、タイヤのデグラデーションが一気に進行する懸念が高まっている。状況次第では、2ストップ戦略に加えて3ストップを視野に入れるチームも現れるかもしれない。