
ラッセル発言が波紋…メルセデス、今なおフェルスタッペン獲得交渉を継続か
メルセデスがマックス・フェルスタッペンと交渉を続けているとジョージ・ラッセルが示唆したことで、これまで憶測の域を出なかった移籍話が再燃した。これは、2025年F1第11戦オーストリアGPの舞台、レッドブルリンクで行われたイギリスの衛星テレビ局『Sky Sports』とのインタビューの中で語られたものだ。
ラッセルは2025年末に契約満了を迎えるが、カナダGPでの優勝を含む4度の表彰台という今季の安定した活躍にもかかわらず、未だ延長契約は締結されていない。この状況は、外部から見ると不可解にも映る。
Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.
表彰台の上でガッツポーズを取る優勝者ジョージ・ラッセル(メルセデス)、2025年6月15日(日) F1カナダGP決勝(ジル・ビルヌーブ・サーキット)
ラッセルは「話し合いは少し進んでいるけど、大きな進展はない」と認めつつ、「そこまで急いでいるわけじゃない。パフォーマンスが最優先だし、今の自分の走りには自信がある。心配する理由はまったくない」と強気な姿勢を崩さない。
しかしながら「もちろん、契約書にサインがあれば、助かるけどね」とも述べ、わずかに不安を滲ませる。
ラッセルの発言からは、契約交渉が遅々としている理由が見え隠れする。メルセデスはルイス・ハミルトンのフェラーリ移籍を受け、トップに返り咲くための新体制の構築に取り組んでいる。必要とされているのは”最高のドライバー”だ。
「トップに戻るには、最高のドライバー、エンジニア、ピットクルーが必要だ。それがメルセデスの目指すところだ。だから、フェルスタッペンみたいなドライバーとの話し合いが続いているのは至極自然なことだよ」
ラッセルはそう語り、メルセデスが依然として4度のF1ワールドチャンピオンの獲得に向けて水面下で動いている可能性に言及した。
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ジル・ビルヌーブ・サーキットのパドックを並んで歩くルイス・ハミルトン(フェラーリ)とジョージ・ラッセル(メルセデス)、2025年F1カナダGP初日
ただし、ラッセルとフェルスタッペンの関係は良好とは言い難い。特に昨年のアブダビGPでは、激しい言葉の応酬を繰り広げるなど、現在も緊張関係が続いている。両者を同じチームに置くリスクを踏まえれば、メルセデスが慎重になるのも無理はない。
ラッセルは、自身の契約交渉の遅れがフェルスタッペンに関係していると仄めかす。
「トトは僕に、今シーズンのパフォーマンスは“誰にも負けていない”と言ってくれている。彼に言わせれば、『比較対象になるドライバーは1人だけだ』ってね。だからこそ、将来に不安を感じてはいないんだ」
「ただ、各チームには2つのシートがあるわけで、彼(ウォルフ)はその2人を誰にするのかを考えなきゃならない。それが交渉が遅れている理由なんだと思う」
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予選後のドライバープレスカンファレンスに出席する2番手マックス・フェルスタッペン(レッドブル)とポールポジションのジョージ・ラッセル(メルセデス)、2025年6月14日(土) F1カナダGP(ジル・ビルヌーブ・サーキット)
フェルスタッペンとレッドブルとの現行契約には、シーズン前半戦終了時点でドライバーズランキング4位未満の場合に契約解除が可能となる条項が含まれているとされる。だが現時点でフェルスタッペンはランキング3位。5位のシャルル・ルクレール(フェラーリ)とは51ポイントの差があり、契約解除条項が発動される可能性は極めて低い。
それでも、今シーズン序盤にメルセデスやアストンマーチンへの移籍の噂が浮上した時と同じように、今回のラッセルの発言がパドックに波紋を投げかけることは避けられないだろう。
一方のフェルスタッペンは、来季もレッドブルに残るのかという問いに対し、こう答えている。
「その質問はこれまでに何度も受けてきた。話すつもりはないよ。それとも、昨年の発言を繰り返してほしいの? 何度も言うけど、そんなこと考えちゃいないし、今は兎に角、走りに集中してパフォーマンスを上げるだけだし、来年のことはその後に考える」
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ポールポジションを獲得したジョージ・ラッセルの健闘を称えるメルセデスのトト・ウォルフ代表、2025年F1カナダGP