マジで大丈夫なのか?―フェルスタッペンをも動揺させた角田の衝撃事故、それでも握るステアリング

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2025年5月17日のF1エミリア・ロマーニャGP予選Q1で発生した角田裕毅(レッドブル)の激しいクラッシュは、瞬く間にピットレーンからパドックまで衝撃の波を広げた。時速約200kmで進入したヴィルヌーヴ・シケインでのこの事故は、F1という極限のスポーツが持つ危険性を改めて世界中のファンに思い起こさせた。

事故の瞬間:一瞬の判断ミスが招いた大惨事

ターン5・6、通称ヴィルヌーヴ・シケインで角田のマシンは縁石に乗り上げ、一瞬でバランスを喪失。制御不能となったRB21はそのままコースサイドのバリアに激突し、その衝撃で空中へと舞い上がった。横転したマシンはその後、グラベルに叩きつけられた。

セッションは即座に赤旗中断。レスキュークルーがクラッシュ現場に急行する中、サーキット全体が息を潜めた。

幸いにも角田は自力でコックピットから脱出。メディカルチェックを受けた結果、奇跡的に深刻な怪我はなく無事であることが確認された。近年のF1マシンに施された安全性向上の取り組みが、再び命を救う結果となった。

角田の率直な告白:「欲をかきすぎた」

事故後、メディアの前に姿を現した角田は自身のミスを率直に認めた。「Q1からヒーローになろうとしたのが間違いでした。1セットのタイヤで突破しようと気負いすぎてしまいました」と角田は語った

「それに、クルマにいろいろ手を加えていたので、各速度域で実際にどう動くか分からない状態でした。本来であれば少しずつビルドアップすべきでしたが、自分なら大丈夫と思ってしまい…とはいえ、それも言い訳に過ぎません」

角田のマシンは深刻なダメージを負っており、技術チームは夜通しでの修復作業を強いられることになった。彼の決勝レースは最後尾もしくはピットレーンからのスタートが見込まれている。これは、コンストラクター選手権争いという点でレッドブルにとって痛手となることは間違いない。

衝撃を受けたドライバーたち:「それでも走り続ける」

角田の事故は、ファンだけでなく、同僚ドライバーたちにも大きな衝撃を与えた。チームメイトのマックス・フェルスタッペンは、事故直後に無事との報告を受けたものの、リプレイ映像を見て一瞬その情報を疑ったと明かした。

「当然、まず最初に”大丈夫なのか?”って確認したよ。無事と聞いて安心した。でも、リプレイを見て”マジで大丈夫なのか?”ってなったよ」とフェルスタッペンは語る。

「かなり大きな衝撃だったし、ダメージも相当だった。でも一番大事なのは、ユーキが無事だったってことだね」

メルセデスのジョージ・ラッセルも、安堵の意を示しつつ、現代F1マシンの安全性について言及した。

「彼が無事でよかった。ああいった状況であれだけのクラッシュでも無事というのは、今のクルマの安全性がいかに優れているかがよく分かる」

予選開始から間もないQ1で発生したこの事故は、残りのドライバーたちに心理的な影響を与えずにはいられなかった。彼らは衝撃的な光景を目の当たりにしながらも、再びステアリングを握り、わずかなミスが致命的な事態に直結するイモラで全開プッシュを続けなければならなかった。

ラッセルはその心境を率直に語った。「それでも僕らは、ヘルメットをかぶってバイザーを下ろしたら、あとは集中して走るしかない。ああいうことは一旦頭から切り離さなきゃいけないんだ」

マクラーレンのオスカー・ピアストリも同様の心理を明かした。

「クラッシュの大きさには驚いたけど、レースというのは、というか人生でも多分そうだけど、自分のやっていることに疑念を持ち始めると、かえって失敗するものなんだ。特にイモラのようなサーキットでは、迷いなく攻める必要がある。だからまあ、少しは頭をよぎるかもしれないけど、コーナーに差しかかる頃には、いつも通りに走る」

過酷なF1の現実と進化する安全性

今回の事故は、F1という競技が持つ二面性を鮮明に浮かび上がらせた。一方では常に危険と隣り合わせであるという過酷な現実、そして他方では驚異的なペースで進化し続ける安全技術の存在だ。

角田が口にした「ヒーローになろうとした」という言葉は、トップドライバーたちが常に抱える心理的葛藤を象徴している。限界に挑み続けなければ結果は出せない。しかし、その限界を僅かでも超えれば、今回のような事態に直面する。それでもなお、彼らは挑み続ける。

角田の事故は、F1ドライバーたちがレース毎に向き合う危険性と、それを承知で極限に挑戦し続ける精神力の強さを、改めて世界中のファンに示すこととなった。


2025年F1エミリア・ロマーニャGP予選では、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)がポールポジションを獲得。2番手はマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、3番手はジョージ・ラッセル(メルセデス)という結果となった。

決勝レースは日本時間5月18日(日)22時にフォーメーションラップが開始され、1周4,909mのイモラ・サーキットを63周する事でチャンピオンシップを争う。レースの模様はDAZNフジテレビNEXTで生配信・生中継される。

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