ブリアトーレ、アルピーヌF1実質トップ就任も“無資格”―正式なチーム代表に非ず

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前チーム代表のオリバー・オークスが突然辞任したことを受け、フラビオ・ブリアトーレがF1第7戦エミリア・ロマーニャGPよりアルピーヌF1チームの実質的な指揮を執る形となった。だが、イギリスの公共放送『BBC』によれば、ブリアトーレはFIAの定める競技者スタッフ登録制度に基づく正式なチーム代表ではなく、必要なライセンスも保有していないという。

FIA登録制度と主要ポジションの条件

FIA国際競技規則(ISC)は、F1を含む管轄下の世界選手権に参加する各チームスタッフ登録について定めており、以下の主要ポジションに就く者は「FIA登録証明書」の取得が義務付けられている。

  • 最高経営責任者(CEO)
  • 最高財務責任者(CFO)
  • チーム代表
  • スポーティングディレクター
  • テクニカルディレクター
  • チームマネージャー
  • 車両担当責任者(レースエンジニアなど2名)

しかしながら、ブリアトーレはアルピーヌF1チームの正式なスタッフではなく、親会社であるルノーにコンサルタントとして雇用されている立場であり、ライセンスも取得していないとされる。そのため、FIAの規定上、チーム代表としての要件を満たしていない。

一方で、実質的にチーム代表の職務を担っていると見なされれば、ISC違反に該当する可能性がある。同規定には「F1世界選手権において、チームを代表してこれらの役割を担う者はFIAに正式登録されていなければならない」と明記されている。

FIA広報担当は次のように述べている。

「アルピーヌはオークス氏の退任に関連するすべての規制要件を順守しており、スタッフ登録の更新も提出済みである。我々は、チームの管理体制についての説明責任はアルピーヌにあると考えており、特定人物の登録証についてはコメントしない」

「責任者」はグリーンウッド

報道によるとアルピーヌは、レーシング・ディレクターのデイブ・グリーンウッドが現在の「責任者」であると説明している。グリーンウッドはイギリス出身のF1エンジニアで、かつてルノーのダブルタイトル獲得に貢献。さらにフェラーリではキミ・ライコネンの担当レースエンジニアを務めた経歴を持つ。2025年1月にレーシング・ディレクターとしてアルピーヌに復帰した。

また、ブリアトーレがライセンスを保有せず、正式なスタッフでもない理由についてアルピーヌは、「フラビオはエグゼクティブ・アドバイザーとしてチームに参加しており、コンサルタントという立場にとどまっている。それ以上でも以下でもない」と回答している。

アルピーヌF1チームのレーシング・ディレクターを務めるデイビッド・グリーンウッド、2025年copyright Alpine Racing

アルピーヌF1チームのレーシング・ディレクターを務めるデイビッド・グリーンウッド、2025年

オークス辞任とブリアトーレの復帰

オークスは2024年7月にアルピーヌのチーム代表に就任したが、2025年5月6日に辞任が発表された。その理由は「個人的な事情」とされているが、その直前に兄であり、FIA-F2選手権などに参戦するハイテックGPの役員でもあるウィリアム・オークスが、「犯罪収益の移転」の容疑でイギリス当局に逮捕・起訴された。そのため、この事件が辞任の引き金になった可能性が指摘されている。

アルピーヌF1チーム代表就任が発表されたオリバー・オークス、2024年7月31日Courtesy Of Alpine Racing

アルピーヌF1チーム代表就任が発表されたオリバー・オークス、2024年7月31日

ブリアトーレは、かつてベネトンおよびルノーF1チームを率い、ミハエル・シューマッハやフェルナンド・アロンソとともに複数の世界タイトルを獲得した名将として知られる人物で、2024年にアルピーヌのエグゼクティブ・アドバイザーとしてF1界に正式復帰した。

一方で、2008年のシンガポールGPでは、ネルソン・ピケJr.に故意のクラッシュを指示した「クラッシュゲート」事件に関与。FIAから無期限の追放処分を受けた。この処分は2010年にフランスの裁判所によって取り消されたが、今回の役割は事実上のチーム代表復帰とみなされており、F1界内外で賛否が分かれている。

現在アルピーヌはコンストラクターズランキング9位と低迷しており、体制の立て直しが急務となっている。さらにドライバーラインアップにも変動があり、ジャック・ドゥーハンに代わってフランコ・コラピントが次戦エミリア・ロマーニャGPから5戦にわたり出場することが決定している。

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