
アウディ、F1プロジェクト再編成―参戦10ヶ月を切りCEOベイカーが退任
2026年よりF1に新規参戦するアウディは、2025年5月5日付でF1プロジェクトの体制変更を発表し、F1パワーユニット開発を担うアウディ・フォーミュラ・レーシング(AFR)の最高経営責任者(CEO)を務めていたアダム・ベイカーの退任を明らかにした。
この決定は「双方合意の上」でなされたもので、AFRではCEOという役職自体が廃止されることになった。これにより、すでに大きく変容していたチーム部門に続き、エンジン部門でも体制変更が行われたことで、アウディのF1プロジェクトは当初発表された体制とは大きく様変わりした形となっている。
Courtesy Of AUDI AG
アウディ・フォーミュラ・レーシングのアダム・ベイカーCEO
ベイカーの業務は、新たにCOO(最高執行責任者)に就任したクリスチャン・フォイエが引き継ぐ。F1プロジェクト全体の統括責任者であるマッティア・ビノットの下、スイス・ヒンウィル、ドイツ・ノイブルク、そして今後設置される予定のイギリス拠点の開発・運営体制が一体化される見通しだ。
アウディは今回の組織変更について、ファクトリーチームとしてのシナジーを最大限に発揮し、業務プロセスにおける一貫性を強化するためと説明。全ての部門をビノットの指揮下に置く体制へと移行するとしている。
Courtesy Of AUDI AG
クリスチャン・フォイエ(アウディ・フォーミュラ・レーシングGmbH COO)、2025年5月5日(月)
フォルクスワーゲン・グループ傘下であるアウディのゲルノート・デルナー取締役会会長は次のようにコメントした。
「アダム・ベイカーのこれまでの尽力に感謝したい。彼はアウディのF1参戦に向けた戦略構想の策定において重要な役割を果たし、ノイブルクのパワーユニット開発拠点の立ち上げを主導した」
「今後は、F1パワートレイン開発における実績豊富な専門家、クリスチャン・フォイエを迎える。彼の経験は、プロジェクトの加速と部門間の連携強化に大きく貢献するはずだ」
1977年にドイツのアーヘンで生まれたフォイエは、内燃エンジンを専門とする工学系の学位を持ち、過去18年にわたり、複数のF1チームや自動車メーカーにおいて、オペレーションおよびプロジェクト管理の分野で実績を積んできたとされる。ただし、F1における具体的な業務経歴については明かされていない。
なお、ノイブルクのPU開発拠点では、ステファン・ドレイヤーが引き続きCTO(最高技術責任者)として開発責任を担うとともに、今後はAFR経営陣の代表スポークスパーソンも兼任する。
また、2025年4月からはジョナサン・ウィートリー(元レッドブルF1スポーティング・ディレクター)がザウバー・モータースポーツAGのチーム代表に就任しており、ビノットと連携するかたちでレースオペレーション面の体制強化も進められている。
アウディは2026年のパワーユニット新規定施行とともに、ファクトリーチームとしてF1にデビュー予定。現在最下位と低迷するザウバーを母体に、ワークス体制への急速な移行を図っている。