ドル札が舞う中を疾走するF1マシンのイメージ
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F1:2024年に過去最高収益―最も多くの分配金を得たのは戴冠マクラーレンに非ず? 1900億円の”分け前”

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F1の商業権を所有するリバティ・メディアが2024年の通期決算を発表し、過去最高の収益を記録したことが明らかになった。年間収益は34億1,100万ドル(約5,030億円)に達し、前年比6%増。これで4年連続の増収となる。

F1の収益は2021年の21億3,000万ドルから、2022年に25億7,000万ドル、2023年には32億2,000万ドルと増加を続けてきた。ただし、かつてのような20%以上の成長率は鈍化しており、今後の伸びは限定的になる可能性がある。

2024年はF1史上最多となる24戦が開催され、シリーズのスポンサーやパートナー企業も26社に拡大した。年間24戦を超えるレースを開催することは物流、チームへの負担など、様々な理由により困難で、新たなビジネスモデルの構築なくして、さらなる成長は難しいと見られる。

チームへの分配金、総額12億6600万ドルに

F1チームへの分配金は前年比4%増の12億6600万ドル(約1,866億円)に達した。一方で、収益の増加に伴いリバティ・メディアの取り分が増加(前年比9%増の7億9100万ドル)した結果、チームへの分配率はわずかに低下した。

チームへの分配額はコンストラクターズランキングの成績に基づいて決定されるが、一部のチームには歴史的な特典が与えられている。その代表例が、FIA-F1世界選手権創設当初から唯一参戦し続けるフェラーリだ。

最も多くの分配金を得たチームは?

F1チームへの分配金は正確な金額が公表されていないものの、分配の仕組みはある程度明らかになっている。そこで、既存の情報をもとに推定額を算出した。

2024年に最も多くの分配金を受け取ったのはフェラーリで、総額2億4,200万ドル(約356億円、前年比3,400万ドル増)に達した。その内訳は、賞金が1億3,700万ドル、一部チームに与えられる歴史的ボーナスが2,800万ドル、そしてフェラーリのみが受け取れる特別ボーナスが7,700万ドルと推定される。

マクラーレンは、2024年のコンストラクターズ選手権を制覇したことにより、最も大きな増加を記録。前年より5,100万ドル増の総額1億6,800万ドル(約250億円)を受け取ったと見られる。

また、以下の4チームも分配金の増額を達成した。特に、コンストラクターズ選手権最下位から7位へと浮上したハースは、前年比2,000万ドル(約29億円)増と大幅な増収となったものと推定される。

  • ハース:9,000万ドル、前年比2,000万ドル増
  • アルピーヌ:1億1,000万ドル、前年比500万ドル増
  • アストンマーティン:1億600万ドル、前年比500万ドル増
  • レーシング・ブルズ(RB):8,400万ドル、前年比400万ドル増

一方、ザウバーはコンストラクターズ選手権9位から最下位に転落したものの、分配金は7,400万ドルで前年と同額だった。これは、分配金全体の増加による相殺が影響していると考えられる。

レッドブルとメルセデスが減収

コンストラクターズ選手権争いでランキングを落としたレッドブルとメルセデス、そしてウィリアムズの3チームは、その結果として分配金も減少した。

  • レッドブル:1億5,200万ドル、前年比3,200万ドル減
  • メルセデス: 1億5,100万ドル、前年比2,800万ドル減
  • ウィリアムズ: 9,000万ドル、前年比700万ドル減

F1の収益の大部分は、テレビ放映権、スポンサー収入、グランプリの開催料から成り立っている。ブランド価値の高まりを背景に2024年シーズンには、新たに複数のグローバル企業がスポンサーに加わり、また、自社運営のF1 TVの加入者増加が収益拡大に貢献した。

一方で、全てが順調というわけではない。ラスベガスGPではチケット販売が伸び悩み、積み重なった開催コスト6億ドルの回収が課題となっている。また、今後の成長率が鈍化する可能性も指摘されており、新たな収益源の開拓が求められている。