F1チームの収支の秘密…儲かる?賞金だけでは赤字?生々しい金額とその分配方法

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FIA-F1世界選手権でチームに支払われる賞金は、コンコルド協定と呼ばれる商業的な取り決めによって定められている。F1では各レース毎に支払われる賞金というものは存在せず、年間のチーム順位=コンストラクターズランキングに応じた賞金が翌年に支払われる。

結論から言えば、賞金だけでF1チーム事業を成立させる事は不可能に近い。

賞金の概要

コンコルド協定では、F1の商業権保有者であるFOMの年間収益の7割弱をチームへの分配金として定めているとされる。分配金全てが賞金の原資となるわけではない。分配金は次のような形で各チームに流れ落ちる。

特別待遇枠
原資の2.5%がフェラーリのみに支払われる
プレミアム枠
原資の15%がF1への貢献度に応じて一部チーム(フェラーリ、レッドブル、メルセデス、マクラーレン、ウィリアムズ)に支払われる。これはフェラーリが最も多いとされる
賞金枠
上記金額を差し引いた残金が賞金となる

FOMの収入の内訳としては、グランプリの現地主催者からの開催権料とテレビ放映権料が大部分を占めている。何らかの理由でレースを開催できない場合、放映権料は割引となり、F1側の都合でレースを中止した場合、開催権料は入ってこない。

賞金枠の分配方法

コンストラクターズランキングの順位に応じて支払われるのが賞金枠である。賞金枠は「カラム1」と「カラム2」の2つに分かれており、以下のように各チームに分配される。なお、カラム1の枠の賞金を受け取るためには、過去3年間で少なくとも2回以上トップ10に入る必要がある。

  • 賞金枠の半分を上位10チームに均等配分(カラム1)
  • 賞金枠の半分を上位10チームに以下の割合で分配(カラム2)
    • 1位19%
    • 2位16%
    • 3位13%
    • 10位4%

Forbesによれば、2014年のコンストラクターズチャンピオンであるメルセデスは1億900万ドル(約122億円)、4位フェラーリは1億6400万ドル(約184億)、5位マクラーレンは1億ドル(約112億)の賞金を受け取ったとされる。年間王者でもたったの122億円しか手にする事はできない。

その年の賞金は翌年のグランプリ開催期間(3月から11月)の毎月末に分割で支払われる。

F1チームの収支

F1チームの大部分が本拠を構えるイギリスでは、企業登記局(Companies House)が各企業の決算書などを公開している。つまり、メルセデス、レッドブル・レーシング、マクラーレン、ルノー、レーシング・ポイント、ウィリアムズについての財務状況は誰もが閲覧可能だ。

ただし、公開された数字の全てがF1に関連しているわけではないため、F1ビジネスでの収支を知るためには精査が必要となる。

例えば2019年にコンストラクターズランキング最下位に終わったウィリアムズは、1億5000万ドル(約165億円)を費やして125万ドル(約137億円)の売上を上げた。つまり2500万ドルの赤字だ。

収入の内訳は2019年シーズンのF1の賞金が6000万ドルと半分弱を占め、タイトルスポンサーであるROKITからのスポンサー料が2000万ドル、ドライバー持ち込み資金が3000万ドル、その他が1500万ドルとなっている。賞金だけでは開発コストと参戦費用を賄うことはできない。

賞金だけでは大赤字

以上のように、賞金だけに頼ってF1参戦する経済合理性は存在しないことが分かる。そのためチームは各々スポンサーシップを募ったり、グッズを販売したり、F1での知名度を活かして他のビジネス領域で事業を行うなど、多角的なビジネス展開が求められる。

無論、大手自動車系メーカーであれば、F1参戦費用を広告宣伝費、あるいは研究開発費として考えることもできる。この場合は必ずしもF1参戦による収支のみを考える必要はない。ただし多くの場合プライベーターはこの限りではないので、F1活動での収支のみで黒字化する必要がある。

F1チームは儲からない

小林可夢偉の在籍していたケータハム、鈴木亜久里が代表を務めていたスーパーアグリ等…我々はこれまでに数多くのプライベーターが資金難を理由にフィールドから去っていくのを目撃してきた。ザウバーやウィリアムズ、フォース・インディアといったプライベーターが、事ある毎に賞金の分配方法に対して不満を示すのは至極当然と言える。

現状のルールにおいては「F1チームは儲からない」という結論で締め括りたいと思う。