反発する角田裕毅とフェルスタッペン、FIA会長の”罵り言葉自制要請”を巡り
F1ドライバーに対して、レース中の罵り言葉を慎むよう求めた国際自動車連盟(FIA)のモハメド・ベン・スレイエム会長に対し、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)と角田裕毅(RB)が反発した。
ベン・スレイエムはF1シンガポールGPに先立ち、「モータースポーツとラップミュージックを区別すべきだ。我々はラッパーではない」などと述べ、F1中継で放送される罵り言葉の多さに不快感を示した。
また、ドライバーにも自身の発言に配慮する責任があると強調し、子供の教育にも好ましくないとして、中継で流れる発言の規制強化を進める方針を明らかにした。
ルイス・ハミルトン(メルセデス)は、中継で流れる発言を規制することには賛成の立場を示したが、ベン・スレイエムがラッパーを例に挙げた点について「人種的な要素」があるとして批判した。
テレビ中継で罵り言葉が流れないよう、ドライバーに自制を求めるベン・スレイエムに対して、無線での率直かつ辛辣な発言で知られるフェルスタッペンと角田裕毅は共に反対の立場を示した。
アゼルバイジャンGPでマシンに対する不満を”Fワード”を使って表現したフェルスタッペンは、レース中にアドレナリンが高まる中で罵り言葉が出てしまうのは避けられないとして、そもそもそういった無線内容を放送すること自体に問題があると主張した。
「結局、どこかでみんな罵り言葉を使うと思う。ここでなかったとしても、他の場所で使っているだろう。誰でも罵り言葉を口にするし、頻繁に使う人もいれば、そうでない人もいる。それに、どの言語を話しているかによっても違うだろう。もちろん、侮辱的な言葉は別の問題だ」とフェルスタッペンは語った。
「今は色んなものが放送されるようになっているけど、他のスポーツでは選手が常にマイクを付けているわけじゃない。他のスポーツでも、アドレナリンが溢れ出ている時には多くの人がたくさん悪い言葉を使っていると思うけど、それは拾われていないだけだ」
「でも、F1ではおそらくエンターテインメントの一環として放送され、それがSNSで取り上げられて問題になるんだ。だから、まずはそもそもそれを放送しないことが解決に向けた一歩だと思う。放送しなければ誰も知ることはなく、チーム内で対処すれば済む話だ」
「でも、世の中はそういうものなのだろうね。スポーツの世界でも、一般的にも、今の世の中はちょっと敏感になっているみたいだ。時代が少し変わりつつあるのかもしれない。でも、まずはそれを放送しない、あるいは誰も聞けないようにすることから始めるべきだと思う」
F1は2018年以降、すべてのドライバーの無線内容とオンボード映像を視聴できるサービスを一部の国で提供しており、昨年以降は無線内容を検閲している。フェルスタッペンは、この取り組みをさらに強化すべきだと考えている。
「もちろん、無線を聞けるアプリもたくさんあるけど、制限をかけたり、遅延を入れて不適切な言葉を検閲できるようにする方が、Fワードさえ口にしてはならないという禁止令をドライバーに出すよりはるかに効果的だと思う」とフェルスタッペンは語った。
「でも、それってそんなに悪いことかな? クルマの調子が悪い時にはウンザリ(be fed up)だって言うよね。言葉遣いは悪いけど、僕らを何だと思ってるんだ? 5歳児か? 6歳児か?」
「たとえ親が許さなかったとしても、5歳児や6歳児だっていずれは罵り言葉を使うようになるさ。成長すれば友達と一緒に歩いていて罵り言葉を使うようになる。だから、何も変わらない」
角田裕毅は、レース中に口から出てしまう罵り言葉に対する懸念は過剰だというフェルスタッペンの主張に同意した。
「確かにデリケートな問題だと思います。無線があるため、放送側が罵り言葉をテレビで流してしまうことがあるのでしょうが、例えばサッカーやバスケットボールなど、他のスポーツでも選手全員にマイクを付ければ、罵り言葉を使っていることが分かると思います」と述べた。
この発言に対し、フェルスタッペンは「選んだスポーツが間違っていたのかもしれない。僕らはバスケをやるべきだ」と反応し、グリッドで最も身長が低い角田裕毅に「肩車してやるよ」と冗談を飛ばした。
角田裕毅は「それはいいね」と相槌を打ち、「まぁ、個人の性格の問題というよりは、感情表現の一部だと思います」と続けた。
「もちろん、限度を超えた言葉遣いもあります。僕も今年はそういうことがありましたが、Fワードみたいなものは、感情を表現する手段の一つだと思うので、なぜそれが問題になるのか理解できません。実際、FIAの人たちだってきっと時々、罵り言葉を口にしていると思いますしね」