「ベテラン」対「ライバル傘下新人」の一騎打ちか、注目集まる2025年アウディF1シート争い
レッドブル系列の2チームを除けば、2025年に向けて空いているF1シートは1つしか残っておらず、キャリアの継続を目指すドライバー、そしてF1デビューを夢見るドライバーの視線は、ここ数週間、コンストラクターズ選手権最下位に沈んでいるザウバー/アウディに向けられている。
C44の競争力不足がアウディの選択肢を大いに狭めたことは確かだろう。最優先と見られていたカルロス・サインツ(フェラーリ)は2026年以降のワークスチームではなくウィリアムズを選び、エステバン・オコンはハースの契約書にサインした。
マッティア・ビノットが新たに指揮を採ることになったため、来季ラインナップに関する以前の話し合いは白紙に戻ったと考えるべきだろう。
ビノットは、若手からベテランまで「リストにはたくさんの名前」が載っていると説明した上で、他のチームに候補を奪われる恐れがないため「急ぐ必要はない」と主張する一方、遅くなればなるほど来季以降に影響が及ぶため、決定を無駄に長引かせるつもりはないとしている。
ボッタス、経験重視ならリードか
ビノットによると、今回のドライバー選択における最も根本的な問題は若手か経験者か、という点にある。もし経験を優先するなら、そしてセルジオ・ペレスやダニエル・リカルドを巡るレッドブルの状況を除外するならば、バルテリ・ボッタス一択と言えるだろう。
経験という点で35歳のフィンランド人ドライバーに勝る候補は存在しない。ボッタスはかつてメルセデスというチャンピオンチームと共に仕事に取り組み、これまでに238戦に出走して10勝を挙げている。
ヒンウィルのチームに在籍した過去2年半では目立ったリザルトを残せておらず、今季8戦を残した現段階で稼いだポイントはゼロ。ドライバーズランキング最下位に沈んでいるのも事実だが、それは期待外れのマシンに依るところが大きい。
情報筋によると、アウディは経験重視のアプローチを採る方針で、ボッタスが選ばれる可能性が高いという。
次善策はボルトレート?
既にニコ・ヒュルケンベルグという経験豊富なドライバーが決定しているため、また、少なくとも2026年まで上位を争うことが難しい状況であることから、ひとまずは2025年を若手ドライバーの評価・育成の期間として活用する方法もある。
ここで浮上するのが、マクラーレンの若手育成プログラムの一員で、19歳のブラジル人ドライバーであるガブリエル・ボルトレートだ。
2023年のFIA-F3選手権チャンピオンはフェルナンド・アロンソが率いるマネジメントチームに所属しており、今季はF2でのルーキーシーズンで2勝を挙げ、レッドブル・ジュニアのアイザック・ハジャーに次ぐランキング2位についている。
ボルトレートについてビノットは「素晴らしい才能の持ち主だと考えている」と高く評価しており、ボルトレートが最後尾からメインレースに勝利したモンツァのフィーチャーレースを経て、グリッド上で話を交わす場面も目撃されている。
ボルトレートはレッドブル・リンクで先週、マクラーレンの旧車テストプログラムの一環として2022年型MCL36のステアリングを握り、初のF1テストを完了したが、マクラーレンのF1シートは少なくとも2027年まで空きがない。
ボルトレートにとって、来年以降、少なくとも3シーズンに渡ってマクラーレンのリザーブドライバーを務めるより、チームを離れて将来のワークスチームからF1に挑戦する方が魅力的なのは否めない。
両チームの間では既に話し合いが行われたとみられている。
ボルトレートと同じくライバルチームの育成傘下にあるリアム・ローソンについては、兎にも角にもレッドブルとの契約次第だ。レッドブルが今月中に来季シートを用意しない限り、ローソンは契約から開放される。
プルシェールとシューマッハの立場
他の候補としては、2023年のF2王者でサウバーのジュニアプログラムに所属するテオ・プルシェールが挙げられるが、本人は見通しがかなり暗いことを認めている。同じくジュニアのゼイン・マローニも候補となり得るが、その名は全く取り沙汰されていない。
ミック・シューマッハも噂に上がっているが、幸か不幸か、かつてのフェラーリ代表であるビノットはフェラーリ・ドライバー・アカデミー(FDA)時代のシューマッハをよく知っている。
オールドイツ人ラインナップはアウディにとって確かに魅力的だが、チームが低迷する現状においては特に、優先すべきはそこではないだろう。ハースでの厳しい2シーズンを経てFDAは2022年末、シューマッハとの契約を解除した。