バーレーンGPの開幕に先立ち準備をするランス・ストロール(アストンマーチン)、2023年3月2日バーレーン・インターナショナル・サーキットにて
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突き飛ばし疑惑のランス・ストロール「全く以て不適切」との批判、物に当たり散らし不遜態度でインタビュー

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今季10回目のQ1敗退を喫したF1カタールGP予選を経てランス・ストロール(アストンマーチン)は、ステアリングを投げつけクルマを降りると、ガレージ裏に去る際にトレーナーを突き飛ばすかのような行動を取り、その後のインタビューでも不遜な態度を続けた。

決して賢明とは言えないが、フラストレーションを抱えたドライバーがステアリングを投げる様は稀に見る。だが、プレシーズン中の自転車事故により手首を骨折した際、復帰に向けて支え続けたオステオパシー兼パフォーマンスコーチのヘンリー・ハウへの八つ当たりは、もしそれが事実とすれば横柄に過ぎると言える。

闇夜に浮かぶロサイル・インターナショナル・サーキットを周回するランス・ストロール(アストンマーチン)、2023年10月6日(金) F1カタールGP予選Q1Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

闇夜に浮かぶロサイル・インターナショナル・サーキットを周回するランス・ストロール(アストンマーチン)、2023年10月6日(金) F1カタールGP予選Q1

17番手で4戦連続のQ1敗退を喫した直後にストロールが、自身のトレーナーを突き飛ばしたかのように見えた事について英「Sky Sports」のアナリストであり、この予選後にグリッドインタビューを担当したナオミ・シフは「全く以て不適切です。あのような振る舞いは許されません」と批判した。

「たとえどんなに残念な1日だったとしても、彼らはあなたをコースに送り出すために働いてくれている人たちです。チームのメンバーをあのように扱う事はあってはなりません」

「悪い1日を過ごしたのなら、クルマから降りて謝罪するのが一つの筋というものでしょう」

ハウはガレージ裏に去ろうとするストロールに片手を回した。だがストロールはその手を右手で振りほどき、足を止めようとはしなかった。ハウはこれを追いかけ、ストロールがガレージ奥のパーテーションの後ろに隠れる前に彼の前に出た。するとストロールは両手を前方に激しく押し出す様子を見せた。肝心の場面はパーテーションに遮られ、カメラには収められていない。

セッション中、F1ドライバーは大量のアドレナリンによって交感神経が興奮状態にある。そのため苛立ちを感じるような場面で平静を保つのは難しい。コックピットの中や、クルマから降りた直後は特にそうだ。

だが、これ以降もストロールは自身の感情を抑えきれていない。それは、F1 TVとの次のインタビューでのやり取りによく表れている。

Q: ランス、テレビ画面を通してあなたがフラストレーションを抱えているように見ましたが、今、どのように感じていますか?

ストロール: (放送禁止用語で一言)

Q: 分かりました…言葉が悪く申し訳ありません。今ステアリングを握っているあなたにとって、何が上手くいっていないのでしょうか?

ストロール:分からない。

Q: 予選を経て、残りの週末に向けてどのように対処しますか? これをテストセッションと捉えて、スプリントで頑張るのですか?

ストロール:…ドライビングを続ける。(すぐに立ち去る)

著作権上、問題ないと思われる日本から閲覧可能な動画がないため紹介はできないが、クルマを降りた後のストロールの振る舞いはQ1終了後の国際放送に収められている。またF1 TVとのやり取りの一部はF1公式サイトで視聴できる

ガレージ内でヘルメットを被るランス・ストロール(アストンマーチン)、2023年10月6日F1カタールGPCourtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

ガレージ内でヘルメットを被るランス・ストロール(アストンマーチン)、2023年10月6日F1カタールGP

ストロールがインタビューで謙虚さを欠いたような態度を採るのは珍しいことではないが、今回はあまりに極端だ。

ナオミ・シフはアストンマーチンのリザーブ・ドライバーに触れて「舞台裏で出番を待っているフェリペ・ドルゴビッチなら、クルマを与えられたことに感謝するだけでなく、ああいった行動はしないでしょう」と付け加えた。

コンストラクターズ選手権4位につけるアストンマーチンの全得点(221点)の内、79%はフェルナンド・アロンソの手によるものだ。ストロールがチームメイトに匹敵するパフォーマンスを発揮していれば、アストンはメルセデスを抑えて2位につけている事だろう。

下回っているのはレース成績だけではない。アロンソが今季の全予選でトップ10に食い込んでいる一方、ストロールは10回に渡ってQ3を逃している。アロンソの平均予選順位は6.1位だが、ストロールは12.1位に留まる。

ナオミ・シフの同僚、カルン・チャンドックは、ストロールが期待外れのパフォーマンスを続けている事でアストンは「コンストラクターズ選手権争いで代償を支払っている。今年初めの段階で僕らは2位を予想していたが、マクラーレンがキャッチアップしてきている中、5位に終わる可能性が高い」と指摘した。

「実際、彼はアロンソの得点の3分の1未満しか稼いでいない。マクラーレンは2人ともが得点を積み上げていて、それによってマクラーレンは彼らが追いつく事ができている」

当のマクラーレンもチャンドックと同様の見方を示している。

ランド・ノリスは「間違いなく勝てると思う」と述べ、残り6戦でアストンマーチンを逆転する事は十分に可能だと主張し、アストンとは異なり「ポイントを争うドライバーが2人揃ってる」ことがその根拠だと説明している。

ストロールの肩にのしかかっているプレッシャーは、セルジオ・ペレス(レッドブル)のそれに匹敵するレベルなのかもしれない。


2023年F1カタールGP初日予選でポールポジションを獲得したのはマックス・フェルスタッペン(レッドブル)。2番手にジョージ・ラッセル、3番手にはルイス・ハミルトンと、後続にはメルセデス勢が続く結果となった。

2日目のシュートアウトは日本時間10月7日(土)22時から、F1スプリントは同26時30分からロサイル・インターナショナル・サーキットで開催される。セッションの模様はDAZNフジテレビNEXTで生配信・生中継される。

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