4度のF1ワールドチャンピオン、セバスチャン・ベッテルは、持続可能性を追求するために適切な措置を講じなければ、F1を含むモータースポーツが将来的に政府から禁止される可能性があると考えている。

F1は2026年よりパワーユニットの電動比率を引き上げ、100％持続可能な燃料に切り替える。また2030年までに二酸化炭素排出を事実上のゼロとするカーボンニュートラルに向けて、マシンだけでなくイベント運営方法やロジスティクスを含め広範な領域で対策を進めている。

昨年末を以てF1での現役生活にピリオドを打った36歳の元ドイツ人F1ドライバーは16日(日)、自身が提唱するプロジェクト「Race without a trace」の一環として、自宅ガレージに保管してあったウィリアムズ「FW14B」とマクラーレン「MP4/8」に持続可能燃料を積み、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード（FoS）でデモ走行を披露した。

ベッテルは強風と激しい雨の影響により全日程がキャンセルされた前日のFoS、そして大規模洪水被害により今季のエミリア・ロマーニャGPが中止された事に触れて、モータースポーツが気候変動の影響を受けている事を強調したうえで、二酸化炭素排出上限を表すカーボン・バジェットなどの観点から政府が削減・禁止する対象を検討する際に、モータースポーツがそのリストに含まれる可能性があるとの考えを明らかにした。

英「RaceFans」によるとベッテルは「異常気象と変化する世界、つまり温暖化との間には直接的な関係があると思う。イモラは中止され、昨日のイベントはキャンセルされた」と語った。

「目を背けずに物事を見れば、気候変動の危機は既に世界中の様々な場所で多くの人々に影響を与えている事が分かると思う」

「イモラが中止になったのはイタリアで大規模な干ばつが発生していたところに突然、果てしないような雨が降ったからだ」

「降り注いだ雨は地面に浸透できず他の場所に流れ込んだ。それがイモラのような場所に集まって大規模な洪水を引き起こしたんだ」

「今年のマイアミも（中止の）脅威にさらされた。2、3週間前に洪水が発生してコースが水没したんだ。レースが3週間前に開催されていれば中止になっていたかもしれない」

「カナダでは山火事が発生した。風向きや強さによってはもう少し長く続いただろうし、そうなればおそらくモントリオールはカレンダーから外れていただろう」

「これは真の脅威だ。来年はどのレースも脅威にさらされないかもしれないけど、それはこの世界が脅威にさらされていないという事を意味するわけじゃない」

「世界は変化していて、それが僕らの生活に影響を及ぼしていることを認識しなきゃならない」

「レースの当日やグッドウッドで（気候変動対策を訴える）人々が（デモのために）コースに侵入するかもしれないという脅威ではなく、ある時点で政府が制限や禁止を検討するようになった時に、モータースポーツがその一つとして脅威にさらされるかもしれないという事の方が大きいと思う。僕はそこまで考えているんだ」

「もちろん僕はそうなってほしくないと思っている。モータースポーツは素晴らしいスポーツだからね。見てよ、今日集まった人々の数を」

「だからもしそれを失う事になったら残念だ。もう猶予はない。政府関係者がカーボンバジェットのようなうんざりするようなものを見て『よし、真っ先に脱落するのはこの手のイベントだ』って言うかもしれないんだから」