角田裕毅(アルファタウリ)とダニエル・リカルド、2023年
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角田裕毅、求められるリカルドのF1キャリア終焉…互いの競技人生が懸かった非情なドライバーラインアップ

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非情な話だが、角田裕毅がF1キャリアの次なるステップに進む上で求められるのはダニエル・リカルドを引退に追い込む事だろう。ハンガリーGP以降の残り12レースは両者にとってF1競技人生を大きく左右する半年となる可能性がある。

F1キャリア3年目を迎えた角田裕毅は、前評判の高かったFIA-F2及びフォーミュラEチャンピオンのニック・デ・フリースを大差で退けた。経験豊富なオールド・ルーキーに対してイギリスGPまでの開幕10戦で予選、決勝ともに8勝した。

アルファタウリのニック・デ・フリースと角田裕毅、2023年3月19日F1サウジアラビアGPのドライバーズパレード前Courtesy Of Red Bull Content Pool

アルファタウリのニック・デ・フリースと角田裕毅、2023年3月19日F1サウジアラビアGPのドライバーズパレード前

チームメイトに対するこの圧倒的なパフォーマンスはデ・フリースの僅か10戦での交代劇を生み出した。レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは28歳のオランダ人ドライバーの更迭の理由の一つに角田裕毅とのギャップの大きさを挙げた

無論、デ・フリースは確固たるベンチマークではなかった。例え数々のカテゴリーで勝利を収めてタイトルを獲得してきたとは言え、F1では評価未知数の新人に過ぎなかった。プレシーズンの段階では、仮にデ・ブリースを打ち負かしても「誰も気にしない」との指摘が飛んだ

しかしながらマルコは蘭「De Telegraaf」とのインタビューの中で「ユーキは多くの人に過小評価されていると思う。アルファタウリはドライビングが最も簡単なクルマではないが、それでもユーキは良い結果を得ることが可能だと証明してきた」として、デ・フリース更迭を経て角田裕毅を改めて高く評価した。

レッドブル・レジェンド・パレードでのBRM157のドライブに向けて記念撮影に応じるレッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコ、2023年7月2日F1オーストリアGPCourtesy Of Red Bull Content Pool

レッドブル・レジェンド・パレードでのBRM157のドライブに向けて記念撮影に応じるレッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコ、2023年7月2日F1オーストリアGP

一方のリカルドは評価が確立された真のベンチマークとなり得る。

4度のF1ワールドチャンピオン、セバスチャン・ベッテルを撃破し、若きマックス・フェルスタッペンに一歩も譲らぬ走りを見せ、ルノーではニコ・ヒュルケンベルグとエステバン・オコンを退けた。

今季型MCL60においても続く難解なドライビング特性に合わせ込めず評価を落としたとは言え、マクラーレンに加わるまでのリカルドは明らかにグリッド最速のドライバーの一人と見なされていた。

表彰台の上でガッツポーズをとるマクラーレンのダニエル・リカルド、2021年9月12日F1イタリアGP決勝レースにてCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

表彰台の上でガッツポーズをとるマクラーレンのダニエル・リカルド、2021年9月12日F1イタリアGP決勝レースにて

リカルドの加入は角田裕毅にとって、2023年の残りのシーズンの意味を大きく変える事になる。

もしリカルドを打ち負かすパフォーマンスを見せれば、角田裕毅に対するパドックの評価は著しく高まる事になる。これは事実上、リカルドのF1キャリア終焉を意味する事になるだろう。リカルドが以前のような状態に戻っているのであれば、これを成し遂げるのは至難の業だが。

仮に敗れれば、今年着実に積み上げてきた評価は崩れ去る事になる。相手がデ・フリースだったからか…との見方に変わるのは必至で、その才能に疑いの目が向けられる事になるはずだ。そうなればレッドブル・ドライバーとしてこれ以上、ステップアップする事は難しいかもしれない。

マルコが求めているのは将来のF1ワールドチャンピオンの器であり、3度目のタイトルに向けて快進撃を続けるマックス・フェルスタッペンの片腕となれる存在だ。

角田裕毅がリカルドを凌駕するパフォーマンスを発揮してマルコら首脳陣に更なる感銘を与えた場合、レッドブルはホンダに持っていかれる事を阻止すべく先手を打つかもしれない。それは例えば、オプション付きでの2025年末までの複数年契約といった形で。

2026年以降、レッドブルとホンダは若手育成プログラムにおける提携を解消する見通しだ。ホンダがアストンマーチンとタッグを組んだ以上、これは避けようがない。

双方の支援を受ける角田裕毅としてはレッドブルせよアルファタウリにせよ、2025年末までステアリングを握り続けて経験値を増やし、走りに磨きをかける事が重要だ。来年、あるいは再来年のシートを失えば、アストンマーチン・ホンダでのドライブの可能性も潰えかなない。

マイクを握る本田技研工業の三部敏宏社長、HRCの渡辺康治社長、アストンマーチン・パフォーマンス・テクノロジーズのグループCEOを務めるマーティン・ウィットマーシュ、2023年5月24日のF1パートナーシップ締結発表会見にてCourtesy Of Honda Motor Co., Ltd

マイクを握る本田技研工業の三部敏宏社長、HRCの渡辺康治社長、アストンマーチン・パフォーマンス・テクノロジーズのグループCEOを務めるマーティン・ウィットマーシュ、2023年5月24日のF1パートナーシップ締結発表会見にて

リカルドに敗北を喫し、伸びしろがないと判断されれば契約は更新されず、今シーズン末を以て放出される事も考えられる。レッドブルにとって、次の可能性を見据えてリアム・ローソンを含む別の若手にステアリングを握らせた方が賢明と言える状況になる可能性は否定できない。

無論、これを以て角田裕毅のF1キャリアが終わるかどうかは別の話だ。ウィリアムズには1つ、ハースには1つ、アルファロメオには1つ、そしてメルセデスには1つの空きがある。ライバルチームが触手を伸ばす可能性はゼロではないが、この場合はホンダとの関係性が障害になるかもしれない。

どう転ぶにせよ、角田裕毅とリカルドのチームメイト対決がお互いのキャリア終焉を賭けた目の離せないものになる可能性は少なくないように思われる。

なお、デ・フリース騒動以前の段階であれば比較的早い時期に発表が行われたかもしれないが、例え計画更新がなされるにせよ、それはリカルドとの比較が前提となる事が予想されるため、角田裕毅の2024年以降の計画が明らかになるのはシーズン後半になる可能性が考えられる。