周冠宇、イギリスでの戦慄の事故を回顧…火災への恐怖、敬意に溢れるラッセルとロールフープ破損を語る
アルファロメオの周冠宇がF1第10戦イギリスGPのオープニングラップで発生した恐怖の多重クラッシュについて振り返り、自身の身を案じて駆け付けたジョージ・ラッセル(メルセデス)への感謝を口にすると共に、エンジン火災への恐怖や予期せず破損したロールフープについて語った。
周冠宇がドライブするアルファロメオC42は、ピエール・ガスリーとの接触によって制御を失ったジョージ・ラッセルとの激しい衝突によって横転。仰向けのままターン1のグラベルへと飛び出してタイヤバリアを前に宙に放り出され、キャッチフェンスに激突した。
23歳の中国人ルーキードライバーは、レッドブル・リンクでのオーストリアGPを前に「ひっくり返った際にまずしたのは、ステアリングから手を離す事だった。ああいったクラッシュでは容易に手を骨折してしまうからね」と事故を振り返った。
「次に、できるだけ姿勢を低くして体を固定しようとした。地面に転がりながらもクルマが止まる様子がなかったから、かなりの衝撃が来ると思って、最後の衝撃に備えて手を後ろに回したんだ」
「僕はただ、クルマが止まるのを待ち続けた。止まった後は上下逆さまだったから、自分がどこにいるのか分からなかった」
「その後、自分の体からなのか、クルマからなのか分からなかったけど、何かが漏れているのに気づいたんだ。だからエンジンを切ろうとした」
「その時はまだエンジンが掛かった状態だったから、もし出火すれば脱出するのが難しくなると思ったんだ」
「痛みはなかったけど、体の左側が凄く冷たくてね。出血して感覚がなくなっているのか、なんなのか分からなかったけど、兎に角、エンジンに火がつく事の方が心配だった。あの位置じゃ全く身動きがとれないからね」
マーシャルに助け出されるまで間、周冠宇はフェンスとタイヤバリアとの間に挟まった車内に閉じ込められていた。ラッセルはライバルの身を案じ、その無事を確かめ、何か自身にできる事はないかと、クルマを降りて周冠宇の元に駆け付けた。
周冠宇はラッセルについて「僕は彼が事故を引き起こしたとは思っていないし、あれはレーシングアクシデントだと思っているけど、彼は本当にスポーツマンらしく、大きな敬意を示してくれた。本当に嬉しかった。その後も僕にも電話をくれたしね」と感謝と称賛を口にした。
軽い打撲を負ったものの深刻な怪我はなかった。周冠宇は「どうやって生き延びたのか分からないけど、振り返ってみるとヘイローが僕を救ってくれたのは明らかだ」と述べ、賛否両論ある中、2018年に半ば強硬導入されたコックピット保護デバイスに感謝した。
統括団体の国際自動車連盟(FIA)は更なる安全性の向上に向け一件の調査を進めている。検証が必要な要素の一つはロールフープだ。コックピット上部のインテークを兼ねるこの衝撃構造は、車体上部から地面に叩きつけられた最初の1撃で完全に破壊された。
F1技術規定はロール構造試験として、横方向に60kN、前後方向に70kN、縦方向に105kNに相当する荷重を掛けて耐え得るようにと規定しており、これにクリアしなければレースに出走する事はできない。
周冠宇は「最初の衝撃は安全検査で調査される数値よりも遥かに強く、数倍はあったと思う。だから問題が生じたんだ」と述べ、レギュレーションで規定されている以上の激しい衝撃がロールフープに加わったとの考えを示した。