追従性が”明らか”に向上した次世代F1マシン、オーバーテイク促進の要改善点はタイヤ
マックス・フェルスタッペン(レッドブル)とシャルル・ルクレール(フェラーリ)による激しい優勝争いで重要な役割を果たしたために、F1サウジアラビアGPではDRSに大きな関心が集まる事となったが、注目すべきは次世代車両におけるドラッグ低減システムの有用性ではない。
ジェッダ市街地コースでの50周のレースを終えて行われたTOP3会見では当然DRSに関する質問が飛んだ。今季のグランドエフェクトカーはホイール・トゥ・ホイールを実現させるために導入されたものであり、DRSを廃止できるかどうかが新しい技術規定の成功判定の基準の一つと考えられているためだ。
開幕バーレーンGPを見ても明らかなように、確かに今季型マシンは従来型と比較してコーナーでの追従性が飛躍的に向上している。それは映像をひと目見るだけで分かる程に大きい。だが、それによってオーバーテイクまでが容易になったとは言えない、というのがドライバーの主張で、依然としてDRSは欠かせないと感じている。
2位のルクレールは「そうだね、今のところまだDRSは必要だと思う」と述べ、3位表彰台に上がったチームメイトのカルロス・サインツは「DRSがなければパッシングはかなり減少すると思う」「DRSは間違いなく必要」と指摘した。
また4番グリッドからの逆転優勝を果たしたフェルスタッペンも「もしDRSがなかったら、今日は絶対に追い越せなかったと思うよ」と答えた。
ただこれらの意見はDRSそのものについての質問にドライバー達が答えたものであって、次世代マシンが当初約束されたホイール・トゥ・ホイールの実現に役立っていないと主張するものではなかった。
ロス・ブラウンとニコラス・トンバジスが開発を主導した2022年型マシンについてドライバー達は、前走車に対する追従性が明らかに向上したと認めた上で、今後レース性を更に改善するために最初に検討すべきはマシンではなくタイヤとの考えを示した。
「クルマの追従性は向上したと思う。ただ、タイヤ次第だね」とフェルスタッペンは語る。
「ハードタイヤを履いていた時は接近できたけど、他のコンパウンドはねえ…もちろんコースによりけりだけど、とにかく、ダメなんだ」
「何周かついて行くだけですぐに音を上げちゃうんだ。タイヤもそうだけど、車重がタイヤの限界を越えてしまうというのもあるんだろうね」
「クルマの追従性は向上しているし、レースも上手くいっているわけだから、この点に関しては今後に向けて考えていかなきゃならないテーマだと思う。もしタイヤや車重がレースを妨げるのであればちょっと残念だからね」
「実際、タイヤが死ななければ第一スティントで僕らはもう少しレースができたと思うし。基本的にあの時点では誰もが同じ状況に手を焼いてたと思うんだ」
フェルスタッペンの発言を聞いていたルクレールは「そうだね、僕もかなり似た考えを持っている」と口を開いた。
「去年と比べれば、追従性という点では間違いなく一歩前進してる。フロントとリアのどちらが無くなるのかかなり分かりにくかった昨年のマシンと比べて、今年はマシンバランスがより予測しやすくなっている」
「そのおかげで自信を持ってドライブできている。実際、誰かの背後にいてもプッシュして接近できるんだ」
「だから一歩前進したって事なんだけど、マックスが言ったように、より良いものにするために他にも色んな事が考えられるんじゃないかとも思うんだよね」
タイヤの改善が必要という事は、タイヤを上手く使いこなせた方がレースの主導権を握るという事でもある。
サウジでのフェルスタッペンの逆転優勝についてレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は「マックスの戦略勝ちだった。タイヤをあまり使わないようにして、終盤の攻勢に向けて十分に余力を残していたんだ」と語った。
次戦オーストラリアGPはコースレイアウトの改修と合わせて、1996年のF1初開催以来となる路面の再舗装が行なわれているだけに、余計にタイヤのパフォーマンスが注目されるところだ。