迫る後続フェルスタッペンに対してDRSを使わなかったガスリー、タイトル争いをサポート? それとも
ルイス・ハミルトン(メルセデス)と大接戦のタイトル争いを演じるシニアチームのエースドライバーをサポートするためだったのか。それとも…。ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)は迫る後続のマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)に対してDRSを使わなかった。
フェルスタッペンは本来、最前列2番手からF1カタールGPをスタートするはずであったが、予選でパンクに見舞われたガスリーがホームストレートで停車した際に振られたダブル・イエローフラッグを無視したとして、降格ペナルティを受けて7番グリッドについた。
初のチャンピオン獲得のためには事実上、2位必須という状況の中、フェルスタッペンは1周目に4番手にまで浮上すると、3周目の終わりに前を走る姉妹チームのマシンのDRS圏内に入った。
ガスリーもまた、前方を走るフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)の1秒以内に入ってDRSの使用権を得ていたが、最終コーナーでワイドに膨らんだ後、どういう訳かリアウイングの上部フラップを閉じたままスタート・フィニッシュラインへと向かっていった。
そしてミラーで後方を確認しながらフェルスタッペンが鼻先一つ前に出たのを目視した後、ようやくDRSを稼働させてドラッグ(空気抵抗)を低減した。フェルスタッペンは余裕を持ってターン1で前に出た。
追い抜きを許す前のラップの最終セクターでガスリーは、レースエンジニアから「マックスとはレースをしていない」「彼はDRSを得るだろうから先に行かせろ」との指示が飛んでいた。
見方によっては、同じレッドブル・ファミリーのドライバーを先行させるための一種のチームオーダーとも受け取れるが、そもそも、フェルスタッペンとは余りにペースが違っていた。後ろに留め置くことが100%不可能な状況で無理に防衛し、タイヤと燃料を使うことは懸命ではなかった。
アルファタウリ・ホンダはアルピーヌと同点でコンストラクターズ選手権5位を争う立場にあり、ガスリーの使命はアロンソの前に出る事にあった。フェルスタッペンへの不必要なブロックはアロンソを取り逃がす事に繋がる。
テクニカル・ディレクターを務めるジョディ・エギントンによると、ガスリーは第1スティントでマシンバランスと左フロントタイヤの摩耗に苦しみペースが不足していた。それはその後、やむを得ず計画を変更して1回目のピットストップを前倒しする事に繋がる。
結局のところ、ガスリーがDRSを使おうが使わまいが、最終的なリザルトに影響を与える事はなかっただろうが、それでもなお、レース前のグリッドでレッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコとどんな話をしていたのかは気になるところではある。