戦略に憤慨のハミルトン、タイヤは最後まで持ち堪えられた? ピレリの見解とノンストップを止めさせたメルセデスの意図
ヘッド・オブ・カーレーシングとしてピレリF1の現場を統括するマリオ・イゾラは、ルイス・ハミルトンがタイヤ交換なしのノンストップでF1トルコGPをフィニッシュできたとは考えていない。
ピットストップ不要と考えたハミルトン
エンジン交換ペナルティによって11番グリッドからスタートしたハミルトンは各車がピットストップを消化する中ステイアウトにこだわり、終盤に表彰台圏内の3番手を走行していた。
だが摩耗は激しく、後続のピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)が凄まじい勢いで迫りゆく中、メルセデスは残り8周でハミルトンをピットに呼び、新品インターミディエイトを履かせてコースへと送り出した。
その結果ハミルトンは、セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)とシャルル・ルクレール(フェラーリ)に次ぐ5番手に後退。これに対して「ピットに入るべきじゃなかった。酷いグレイニングだ!だから言ったじゃないか」と不満をぶつけた。
レースを終えたハミルトンは、直近のライバル達に合わせてもっと早めにピットインするか、さもなくば最後までピットストップせずに走り切れるよう、チームはタイヤを温存するよう自身に指示するべきだったとの考えを示した。
ハミルトンはSky Sportsとのインタビューの中で「今にして思えば、もっと早くピットインするべきだったのかもしれない。というのも残り8周でピットインしたんじゃ、ドライ路面でのタイヤのグレイニング・フェーズを消化し切るだけの時間が足らないからだ」と語った。
最後まで持ち堪える事は出来なかった、とピレリ
唯一ノンストップで58周を耐え切ったのはエステバン・オコン(アルピーヌ)だった。入賞圏外からスタートしたオコンは、ハミルトンが推し進めようとしていた戦略で最後まで走り切り10位でフィニッシュした。ただしタイヤが極度に摩耗していたため、終盤のペースは著しく遅かった。
ノンストップ戦略はリスクが高いと判断した公式タイヤサプライヤーのピレリは、各チームの担当エンジニアを通してチーム側にタイヤを交換するよう警告していた。
ウォーターブラスト処理によって生まれ変わった路面は昨年よりグリップが向上しているが、同時に摩耗性も高くなっていた。
ハミルトンのタイヤが最後まで持ち堪えられたと思うかとのSky Sportsの質問に対してマリオ・イゾラは「レース後のタイヤの状態を見る限りノーだ。少なからず、かなり限界に達していた」と答えた。
イゾラによるとタイヤの摩耗具合はかなり酷く、終盤にはゴムではなく構造が路面と接しているような「少し危険」な状況だったという。
確かにオコンはノーストップ戦略を成功させたが、クルマとドライバーが違う以上、摩耗の度合も異なってくる。
「多かれ少なかれ、どのタイヤも全てコードが露出している状態で、オコンのマシンだけでなく、47・48周目以降にストップした殆どのマシンのタイヤは完全に終わっていた」
タイヤを交換しなければ順位を落としていた、とメルセデス
チーム代表を務めるトト・ウォルフは、あのままハミルトンが走り続けていたらペレスとルクレールに追いつかれていたはずであり、タイヤが壊れてリタイヤするリスクを避けるためにもハミルトンをピットに入れたのだと説明した。
「リタイヤしてすべてのポイントを失うのは明らかに破滅的だ」とトト・ウォルフはSky Sportsに語った。
「もし我々がステイアウトし続けていたら、いずれにせよペレスとルクレールに追いつかれていただろう」
「保守的な手を打って、ペレスとルクレールの背後にいた時に早めにピットインしてオーバーテイクを試みるのがおそらくベストだが、それも確率的には正しい事ではなかった」
10月10日(日)にイスタンブール・パーク・サーキットで行われた2021年F1第16戦トルコGP決勝レースでは、バルテリ・ボッタス(メルセデス)がポール・トゥ・ウインを飾り、2位にマックス・フェルスタッペン、3位にセルジオ・ペレスと、レッドブル・ホンダがダブル表彰台に上がる結果となった。
サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)を舞台とする次戦アメリカGPは10月23日のフリー走行1で幕を開ける。