レッドブルもメルセデスもフェルスタッペンとハミルトンを制御する事は出来ない、とクリスチャン・ホーナー
シーズン中に2度のクラッシュを演じた事で、チャンピオンシップ争いを演じるマックス・フェルスタッペンとルイス・ハミルトンの更なる衝突が懸念される中、レッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表は「レッドブルはフェルスタッペンを制御できないし、メルセデスがハミルトンをコントロールできるとも思えない」等として、究極的にはチーム側に再衝突を防ぐ術はないと主張した。
慈悲無きフェルスタッペン、与えぬハミルトン
1回目の衝突はサマーブレイク前の7月のシルバーストンだった。両者は高速走行中にコプスで接触。ハミルトンは生き延びて逆転優勝を飾ったが、フェルスタッペンはバリアに弾き飛ばされ、予防措置とは言え病院に搬送される事態となった。スチュワードはハミルトンに「主な過失」があると判断した。
2回目は2週間前のモンツァだ。低速の第1シケインで衝突し、2台のマシンは折り重なるようにしてグラベルに囚われた。この時はフェルスタッペンに「主な過失」があるとの裁定が下り、ロシアGPでの3グリッド降格ペナルティが科される事となった。
14戦を終えての両者のポイント差は5点。僅かな違いがチャンピオンシップを決定し得るタイトな状況だけに、フェルスタッペンとハミルトンが再び衝突するのは避けられないとの見方が多いが、メルセデスのトト・ウォルフ代表はロシアGPの金曜記者会見の中で次のように述べ、両者は共にどのようなアプローチを採るべきかを理解しているはずだと語った。
「彼らは自分たちが何をすべきか、分かっているはずだ。両者が共に衝突を避けようとすれば、クラッシュは減るだろう。もし両者が衝突を避けようとせず、一歩引いたりスペースを与えない事が正しいと考えているならクラッシュは増えるだろう」
クリスチャン・ホーナーもトト・ウォルフの意見に同意し、クラッシュが起きるか否かは最終的にチームではなく2人のドライバー次第との見方を示した。
「彼らはレーサーでありレースを戦っているわけで、トトがルイスをコントロールできるとは思えないし、我々もまたマックスをコントロールする事はできない」
「(衝突が繰り返されるかどうかは)実際にクルマをドライブしている彼ら次第だ。彼らが懸けているのはモータースポーツ界最大のトロフィーなんだからね」
「もちろんシーズン終盤に向けては、激しいながらもクリーンなレースができればと望んでいる。だが、頻繁に隣り合ってスタートして非常にタイトなコースで争えば必然的に、マックスは慈悲の心を持たず、ルイスも相手に何も与えようとはしないだろう。そんな2人のレーサーがいればインシデントも起こるというものだ」
「モンツァでの一件は不運だった。あれは低速ながらもドラマチックに見える事故だった。どちらのドライバーにも譲る気がなく、結果的にああいった事になってしまった」
「事故を避けるためには、2人が十分に離れた場所にいる事が最も簡単な方法だが、彼らは今後もハードなレースをするような気がしている。これまでのシーズンで両チームの差は平均してコンマ1秒しかなかった。この状況は残りの3分の1でも続く事だろう」
フェルスタッペンは「極めて自己批判的」
クラッシュにまで至らなくとも、両者は先の2件以外にも何度かホイール・トゥ・ホイールのバトルを繰り返してきた。接触した際に過失割合が問われるような場面からは手を引くべきか否かといった事について等、チームはフェルスタッペンときちんと話し合っているのだろうか?
そう問われたクリスチャン・ホーナーは「勿論だ」と答え、あらゆるインシデントは全てチームによって「非常に注意深く」調査されており、フェルスタッペンは「極めて自己批判的」だと返した。
「我々はどんなインシデントであれ常に見直しを行っており、念入りに調査している。そして何か他にできる事はなかったのか、もっと上手くやれた方法はないのか?と分析するのだ。これについてマックスは常にオープンだ」
「彼は極めて自己批判的な人間で、常に学び続けているが、それと同時にハードなレーサーでもあり、それが彼の特徴なのだ。彼が支持されている理由の一つはそこにある」
「マシンをドライブしている時は110%を尽くす。そういうスタンスはレースをする相手方のドライバーの態度にも影響する事だろう」
「とは言え当然、見極めるという事も必要だ。今年の幾つかのレースで見てきたように、彼は適時、そうした慎重な判断を示してきたと思う」
「彼が攻撃的なドライバーであることは、彼のキャラクターの一部であり、彼という人物を構成する一つの要素なんだ。私はそれが今後も変わる事はないと思っている」
3度の王者と7度のチャンピオンに反論
ハミルトンはソチでの初日開幕を前に、2007年に自身が初めてタイトルを争った時の苦労を振り返り、今のフェルスタッペンは初タイトル争いのプレッシャーに晒されているとの考えを示したが、クリスチャン・ホーナーは「僕のことを知らない証拠」と等と否定したフェルスタッペンの意見に同意した。
「全く何も変わっていない。マックスはワールドタイトルを目指している若いドライバーであり、失うものは何もない。彼は幾度もの世界選手権を防衛するためにこの場にいるわけではない。彼は挑戦者なんだ」
「ザントフォールトでの母国ファンからのプレッシャーを見れば分かるように、あれ以上の重圧は存在しない。あの時は本当に上手く対処したと思う」
「彼は単に、この戦いを心から楽しんでいるのだと思う。我々としても、こうした状況を最後に経験したのは遥か昔の事だ。もちろん、それは彼にとっても我々チーム全体にとってもエキサイティングな事なんだ」
なお、3度のワールドチャンピオンに輝いたジャッキー・スチュワートはモンツァでの一件を経てフェルスタッペンを未成熟と批判したが、クリスチャン・ホーナーはこれについても退けた。
「もちろん、ジャッキー卿の意見は常にリスペクトしているが、今年のマックスは非常に成熟した姿を見せていると思う」
「人は常に成長し、常に学んでいる。ジャッキー卿もまた現役時代に何度かミスを犯した事だろう。だがそれが人生というものであって、人はあらゆる経験から学ぶものなんだ」
「F1デビューを果たした17歳から今日に至るまでのマックスの成長ぶりはかなり印象的だと思う」