注目のフェラーリ「SF21」、ワイドノーズ健在も開発トークン投じたリアエンドを中心に大きく様変わり
フェラーリの名で史上初めて生み出された1947年のスポーツカー「125S」の”バーガンディレッド”を彷彿とさせる彩度の低い赤をリアに配したフェラーリの2021年型「SF21」は、パワーユニットの全面改訂に加えて、リアエンドを中心に大幅な変更が加えられた。
マラネロがF1世界選手権用に開発した67代目の「SF21」は昨年型の「SF1000」を進化させたものだが、事実上新型と言っても差し支えないパワーユニットをはじめ、エアロダイナミクスからリアエンドに至るまで、開発が凍結されている以外の全ての領域に手が入れられた。
注目は凍結部分の開発を可能とする2つのトークンの用途だが、過去40年の中でワーストのコンストラクター6位に終わった絶望的な昨シーズンの挽回を目指す上で、チームはリアエンドに注力する事を選んだ。
シャシー部門を率いるエンリコ・カルディーレは、2つの開発トークンを新型ギアボックスに費やしサスペンションシステムを再設計したと明かした。パワーユニット部門の努力もあり、SF21のサイドポッドはスリム化され、リアのボディーワークはタイトにまとめられている。
リアサスペンションは昨季型SF1000の課題の一つとして上げられていた部分であり、このエリアにトークンを投じたのは、より安定したリアエンドを志向した事によるものだろう。
冷却システムの改定もスリム化を可能とした要因だ。SF21のロールフープ内のエアインテークは扁平化され、エンジンの再パッケージ化による恩恵を感じさせる。
カルディーレは「中央ラジエターの効果を向上させるとともに、従来よりも”ダウンウォッシュ”なボディワークを意図してデザインした」と説明する。
「エアロダイナミクスは、タイヤへの負荷を減らすために垂直方向の荷重を低減させるというレギュレーション変更の影響を受けた分野の一つだ。それ故、空力開発に取り掛かるに際しては、規約変更によって失われたエアロダウンフォースの回復と、車体の空気抵抗を減らすことの2つを目標に定めた」
空気抵抗が大きい、所謂”ドラッギー”な車体は、エンジンのパワー不足と合わせてフェラーリの2020年シーズンの成績不振の一因であった。
リアエンドがオーバーホールされた一方、フロントエンドには大きな変化は見られない。トークンを車両後方に投じたためだ。そのため、トレンドに逆らうようにマシンの先端にはワイドノーズがぶら下がっている。
ノーズには立体的な造形が施され、これに呼応するようにフラップ内側部分が極端に織り込まれた新しいフロントウイングが装着されているが、トークンを使い切っているため衝撃構造部の変更はなくモノコックも昨年型の流用だ。
チームは11日(木)にシャルル・ルクレールとカルロス・サインツを伴ってシェイクダウン走行を行い、12日(金)開幕の公式プレシーズンテストに備える。SF21は昨季型よりどの程度進化したのだろうか?非常に楽しみだ。