フェラーリ、逆襲の2021年型F1パワーユニット「065/6」…改良ターボを含む全方位開発で性能アップ
12日(金)開幕のF1プレシーズンテストを2日後に控え、遂に(一応)全ての新車が出揃った。最後の1ピースであったスクーデリア・フェラーリ「SF21」に搭載のパワーユニット「065/6」は、改良型ターボチャージャーを含む全方位的な開発で性能の向上が図られた。
イタリアの名門チームは2019年末の燃料流量及びオイル燃焼不正疑惑に端を発するFIA技術指令書の発効を経て性能が大幅に低下。過去40年で最悪の成績に終わった2020年シーズンを闇に葬るべく開発を続けてきた。
一部で囁かれていたようなターボとコンプレッサーを分割配置するメルセデス型のアーキテクチャは採用されていないようだが、今季型PU「065/6」は全面改訂されたターボの他にも、ICE(内燃エンジン)、MGU-Hを含むエネルギー回生システムの様々な領域に手が入れられたようだ。
フェラーリのエンジン部門を率いるエンリコ・グアルティエーリは、まずは昨シーズン中に自分たちの正確な立ち位置を描いた上で、「設計、シミュレーション、開発、トラックなど、改善のために全部門が協力」する「体系的アプローチ」でマシン開発に臨んだと説明した。
内燃エンジンに関しては、燃料及びオイルを供給するシェルのサポートを得て熱効率の改善に努め、結果的に「コンマ1秒以上のラップタイムの向上」を果たしたと主張した。
また、ターボ・コンプレッサーについてはモーター側の要求に応じて見直しが行われ、これと同時に排気ガスの回生効率の改善が図られた。グアルティエーリは「電子部品、ハイブリッドシステムにも取り組んでおり、すべてのコンポーネントを見直し、最適化を図った」と付け加えた。
新スペックPU「065/6」の全面的改良に力を注いだマラネッロだが、決してリソースのすべてを今シーズンにつぎ込んだわけではない。
グアルティエーリは「我々はこのプロジェクトに多大なエネルギーを注いできたが、同時に、2022年のパワーユニットの開発にも力を注いでいる。来年デビューするこのパワーユニットは、少なくとも後3年間に渡って使われるわけで、より重要だ」と語った。
パワーユニットのパフォーマンスが向上したとのグアルティエーリの発言は、マッティア・ビノット代表の説明を追認するものだ。
赤きレーシングチームの指揮官は先月末の体制発表において次のように述べ、新車「SF21」は昨年型マシンの最大の課題であったトップスピード不足を克服できているはずだとの認識を示している。
「昨年の主だった課題は直線区間の速さにあったと考えている。パワー(不足)だけでなく、(車体の)ドラッグの両方に足を引っ張られていた」とビノット。
「我々は今季に向けてパワーユニットの改善と、空気抵抗を減らすべく車体側のエアロダイナミクスの両方に多くの時間を割いてきた」
「現時点において、ダイナモ上でのパワーユニットの出力と風洞から得られるクルマのドラッグに関するシミュレーションデータを見る限り、ストレートラインでの速度は大きく改善されていると考えている」
フェラーリは、バーレーンでのプレシーズンテスト開幕前日となる11日(木)、フィルミングデーを利用して「SF21」のシェイクダウンを行う。