メルセデスAMGが2014年のF1世界選手権に投入したパワーユニット「PU106A Hybrid」の拡大写真
Courtesy Of Mercedes

ホンダPU継承目指すレッドブルF1に追い風、エンジン開発凍結に向けた合意形成に進展

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ホンダのF1撤退後も日本のエンジンメーカーのパワーユニット(PU)を継続使用したいと考えているレッドブル・レーシングに追い風が吹き始めた。チェイス・ケアリーに代わって今年よりF1の新たな最高経営責任者の座に就いたステファノ・ドメニカリが凍結支持の立場を表明した。

去る昨年10月、本田技研工業株式会社は2021年シーズン末を以て、パワーユニットサプライヤーとしてのF1への参戦を終了すると発表した。心臓部を失う事となったレッドブル及びスクーデリア・アルファタウリは代替パワーユニットの選定を余儀なくされた。

過去のいざこざもありルノーとの提携、またカスタマーチームへの降格を嫌ったレッドブル首脳陣は、知的財産権のリースという形でのホンダPU継承計画を最優先事項とし、F1や国際自動車連盟(FIA)、F1を所有するリバティメディア社との協議を含めて水面下で交渉を進めてきた。

実現のための前提条件は2つ。何よりホンダ側の首を縦に振らせる必要があったわけだが、レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは先月、ホンダと合意に至った事を明らかにした。

もう一つは2022年からのエンジン開発凍結だ。如何に強豪とは言えミルトンキーンズのチームにはPUを開発するノウハウもインフラも予算もない。開発が継続される事になれば次世代パワーユニットが導入される2025年までの3年に渡って不利な状況に置かれる事になる。レギュレーション変更によってアップデートが禁止されない事には、ホンダPUの継続使用によるメリットを享受する事はできない。

ルール変更にはライバルメーカーの同意が必要となる。フェラーリは原則賛成の立場であり、メルセデスは条件付きで凍結を支持するとしているが、ルノーは12ヶ月後に大掛かりなアップグレードを予定しているため反対の立場を固辞している。

こうした状況の中、ステファノ・ドメニカリCEOはレッドブルが推進する2022年からのパワーユニット開発凍結を支持する考えを明らかにした。

その理由について、2008年から2014年までスクーデリア・フェラーリの指揮を執っていた55歳のイタリア人マネジメントは、開発凍結は「レッドブルのため」ではなく、コスト削減という観点で「F1界全体」の利益に繋がるものであると説明し、合意形成に楽観的な姿勢を示した。

運営コストの削減はF1が掲げる最重要課題の一つだ。今季からは史上初となる予算上限ルールが導入され、チームが年間に費やせる金額が制限される。

ルール変更のためにはチーム、PUマニュファクチャラー、F1、そしてFIAの各当事者による投票で大多数の賛成票を必要とする。チームとPUマニュファクチャラーは各1票、F1とFIAは各々10票を持つ。PU供給先の関係上、メルセデスは4票、フェラーリは3票、ルノーは1票を持っているものと見なせる。F1側の賛成票が見込める以上、凍結が実現する可能性は高い。

ホンダ製F1パワーユニットを引き継ぐ事が出来なければF1撤退も辞さないとの強気の立場を貫くレッドブル。彼らの命運を左右する投票は、2月11日(木)に予定されているF1コミッションで行われる見通しだ。