アンダーカット

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アンダーカット(英:undercut)とは、タイヤ交換を利用したオーバーテイク・テクニックのこと。新旧タイヤのパフォーマンス差を利用してトラックポジションを上げる戦略の一つで、ライバルよりも先にタイヤ交換を行う事で順位を上げる。反義語はオーバーカット。

アンダーカットの仕組み

ターゲットとなるライバル車両よりも先にタイヤ交換を実施してフレッシュなタイヤに履き替える事で、性能の落ちた古いタイヤを履き続けているターゲットよりも好ペースを刻み、ライバルが次にピットへと入ったタイミングで順位を上げる。

古いタイヤと新しいタイヤとのパフォーマンス差を利用して、ライバル車両をオーバーテイクするのがアンダーカットである。成功するか否かは、タイヤ交換によってラップタイムが向上するかどうかに左右されるが、ターゲットがトラフィックに捕まっている状況だと成功率が上がる。

現在のF1マシンはクルマの後方に強大な乱気流を発生させてしまうため、その後ろを走るマシンは前走車に接近して走行することが難しい。そのため、アンダーカットに代表されるようなレース戦略によって追い抜く事が重要となっている。

具体例

具体例で説明しよう。”佐藤琢磨”と”川井一仁”という架空のドライバーがレースをしているとする。川井は佐藤の3秒前を走っており、両者ともに全く同じペースで10周目のラップを走行中。ピットストップにかかる時間を20秒とする。

10周目の終わり、佐藤はタイヤを履き替えるためピットイン。一方の川井はそのまま周回を続ける。ピットアウトした時点での両者の差は23秒。新しいタイヤを履いた佐藤は当然、川井よりも速いペースを刻む事が出来る。ここでは1周あたり2秒速いペースとする。佐藤はニュータイヤのアドバンテージを活かして走行を続ける。

古いタイヤを履き続けていた川井は、佐藤がピットストップを行った2周後、つまり12周目にピットへと入る。佐藤は川井よりも1周あたり2秒速いペースで2周を走っているため、川井一仁がピットインしたタイミングでの両者の差は19秒。川井がタイヤ交換を終えピットから出てくる時、佐藤はジャスト1秒前を走行している。これがアンダーカットだ。

川井は遅いタイヤで2周分余計に走行してしまったがために潜在的に4秒を失うこととなり、ピットアウトした時に佐藤に抜かれてしまった、というわけだ。

2010年以前は存在しなかったアンダーカット戦略

2010年以前、つまりピレリが公式タイヤサプライヤーを務める以前のF1においては、アンダーカットなるものは存在しなかった。なぜならば、ピレリ以前のブリジストンタイヤは、走行摩耗による性能劣化(デグラデーション)が極限にまで抑えられていたため、新品タイヤに交換してもラップタイムは向上しなかったからだ。

ピレリのワンメイクになったことによって「ショーとしてのタイヤ」が求められることになり、意図的に性能が劣化するように設計されたタイヤが導入され、これによって初めてアンダーカット戦略が可能となったわけである。