フロイド暴行死 黙認せず、ハミルトンの”批判”に応え声を上げるF1ドライバー
ルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)の一声に続き、多くのフォロワーを持つ現役F1ドライバー達が、人種差別と不当暴力に対する抗議の声をソーシャルネットワーク上で上げ始めた。
最悪規模の暴動…フロイド死亡事件への抗議
5月25日ミネソタ州、「息ができない」と懇願し続ける黒人のジョージ・フロイドの首を9分近くに渡って膝で押さえつけ死亡させたとして、白人警察官のデレック・チョーヴィンが殺人罪で起訴された。これに関わったとされる他の3名も懲戒免職となった。
その残虐な様子を収めた動画がSNS上で拡散された事から、本件のみならず人種差別や黒人への不当な暴力に対する積年の怒りと鬱憤が爆発した。遡ること6年前、2014年にはフロイドと同じアフリカ系アメリカ人のエリック・ガーナーが白人警官に締められ窒息死している。
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同州で発生した抗議デモに対して、警察が催涙ガスやゴム弾を使った事から一部が暴徒化し、衝突や暴動だけでなく便乗の略奪事件が多発。第二次大戦後としては最悪の規模と伝えられている。
こうした事態を受けてミネソタ州のみならず、ジョージアやペンシルベニアなどの複数の都市で外出禁止令が出され、トランプ大統領が軍を派遣する用意があるとの声明を発表するに至った。
暴力に対して暴力で応える流れに対して、批判の矛先に晒されている警察官の中にも声を上げる者は多く、平和的な手段による抗議活動は日を追う毎に全米から全世界へと拡大し、大きなうねりを見せ始めた。
無反応のF1界を批判するハミルトン
ソーシャルネットワーク上で各界の著名人や大手企業などが「#BlackLivesMatter(黒人の命を守れ)」と声を上げる中、F1ドライバーの中でまず最初に口を開いたのがグリッド唯一の黒人であるハミルトンだった。
© Daimler AG
「どうして沈黙し続けているのだろうか。このような不当な只中にあってですら、大スターの中にも未だ声を上げていない人がいる」
ハミルトンはインスタグラムを通して、誰一人として声を上げようとしないF1界を批判した。
「白人が支配するこのスポーツ界からは何も反応がない。僕はF1で唯一の有色人種だ。孤立している。事態を理解して何か発言してくれる人が出てくるかと思っていたけど、誰も寄り添ってはくれない。お互いに知った関係なのに」
メルセデスドライバーからの批判の声を受けての事だろう。24時間を待たずに、続々とF1ドライバー達から人種差別に対する反対の声明と、問題提起と解決のための団結と行動を呼びかける声が上がり始めた。
自らを恥じた、とルクレール
ダニエル・リカルド(ルノー)はフロイドの死を「不名誉なことだ」と述べ「人種差別は有害であり、暴力や沈黙ではなく団結と行動で対処する必要がある」と訴え、ニコラス・ラティフィ(ウィリアムズ)は「これは正すべき事だ」と投稿した。
ハミルトンと同郷のランド・ノリス(マクラーレン)は「僕には愛を持って支えてくれるファンやフォロワーがいる。そして僕にはこれを通して、多くの人を導き鼓舞する力がある。正しい事のために立ち上がる。どうか行動を起こして欲しい」と呼びかけた。
© Ferrari S.p.A.
シャルル・ルクレール(フェラーリ)は即座に声を上げることをためらった自分自身を非難し「不正に対して声を上げるのは全員の責任だ。沈黙しないで」と訴えた。
「正直に言うと、この件についての自分の考えをソーシャルメディアで共有することに違和感と居心地の悪さを感じていたため、今日まで自分を表現する事が出来ないでいたけど、僕は完全に間違っていた」
「インターネットに上がっている動画の残虐性については、未だに何と表現すればよいのか苦労している。人種差別には沈黙ではなく行動で対応する必要がある。積極的に参加して、問題意識を広めるために他の人に訴えかけて欲しい」