メディアランチイベントに参加したマクラーレンのランド・ノリス
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なぜランド・ノリスはINDYCAR iRacingデビュー戦でいきなり勝利を掴めたのか?

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ランド・ノリスは何故、デビュー戦でいきなり勝利を掴めたのだろうか? マクラーレンF1のレギュラードライバーは24日(土)、サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で開催されたインディカー公式仮想レース「INDYCAR iRacing Challenge」に初めて参加してポール・トゥ・ウインを飾った。スピンを喫して一時は11番手にまで後退を強いられた状況からの逆転優勝だった。

仮想戦とは言え、インディカー・シリーズは”リアル”に拘っている。現実と同じ様にゲストを呼んでレース前にアメリカ国家の独唱を行い、伝統のスタートコマンド「Start Your Engines」を再現する。プラクティスも2日間用意され、レース週末と同じ様にドライバーはエンジニアと共に昼夜を問わず仕事に取り組む。

INDYCAR iRacing Challenge第5戦サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)を走るマクラーレンのランド・ノリス
© Indycar

マックス・フェルスタッペンと同じく、世界的に知られる著名なシムレースチーム「Team Redline」の一員であるノリスは、プロのレーシングドライバーとしては駆け出しであるものの、バーチャルレースの経験という点では5度のインディカー王者であるスコット・ディクソンや40年近いキャリアを誇るトニー・カナーンより遥かに経験豊富なドライバーだ。

同じマクラーレンSPから参戦したパトリシオ・オワードを1.445秒差で下したノリスはレースを振り返り「グリッド上の他のドライバー全員がこれまでにiRacingに費やしてきた時間を合計したとしても、僕には届かないと思う。どうすれば速く走れるのかについて、僕は誰よりも理解していた」と語った。

「パト(オーワード)を始めとする他のドライバー達が1週間を通して学習し、改善し続けていく事は明らかだった。もちろん自信はあったけど、プラクティスの度に皆はどんどん速くなっていくし、その自信も少しずつ失われていった」

「真剣勝負の予選ではラップを確実に決めなきゃならず、競争心や心理的ストレスがかかるし、コース外に飛び出したり下らないミスをしないようにしなきゃっていう不安感がプレッシャーになる。僕はその感覚が嫌いなんだけど、それは同時に最高にクールで、何となくリアルなんだよね」

ノリスは今回、昨年のF1でレースエンジニアを務めていたアンドリュー・ジャービスと再びタッグを組んだ。別れのレースとなった最終アブダビGPでノリスは、ラストランとなる戦友のために特別仕様のヘルメットを持ち込んだ。レースを終えた二人は涙を流して別れを惜しんだ。

ノリスは「米国マクラーレンに異動になったジャービスと一緒に仕事が出来たのも大きかった。悲しい事に彼はチームを去った理由として、僕のことが嫌いになったからだなんて言ってるけど(笑)」と述べ、阿吽の呼吸でコミュニケーションを取る事ができるジャービスの支えも大きかったと説明する。

「でも、こうしてまた一緒に組むことが出来て本当に良かった。お互いに話し方を知っているし、理解し合っている。それに彼は僕のドライビングスタイルも熟知してる。リアルなレースとシムレースとの間には、似たようなところがたくさんあるから(互いを熟知している事がアドバンテージになり得る)」

「このイベントに際して僕らは、去年のCOTAでのF1のデータを幾つか持ち込んだ。良い意味でも悪い意味でも、レース、予選、プラクティスでは去年と全く同じことをやった。エンジニア達と一緒に仕事するというのもその1つだね」

マクラーレンMCL34に乗り込むランド・ノリス、2019年F1アメリカGP決勝レース
© McLaren、マクラーレンMCL34に乗り込むランド・ノリス、2019年F1アメリカGP決勝レースにて

次戦はインディ500の舞台として世界的に知られるインディアナポリス・モーター・スピードウェイでのオーバル戦だ。欧州のうねるようなテクニカルコースでの経験しかないランド・ノリスは参戦するのだろうか?

「そうしたいね」とノリスは答える。「iRacingで幾つかオーバルを走ったことがあるけど、インディアナポリスはまだないんだ。凄く大きな挑戦になるだろうね。だってインディカーのドライバー達はオーバルレースに慣れているから。僕は全く経験ないし」

「僕はiRacingでのトリックをかなり知ってる。特定のコースを特定のマシンで速く走らせる方法についてね。でもオーバルではタイヤを温存する方法や燃料の節約の仕方など、ずっとトリッキーなんじゃないかと思う。(競い合うためには)皆にもう少しキャッチアップしないと」

「やりたいと思ってる。これまでとは完全に違う経験になるだろうね。ただ、参戦資格が貰えるかどうかはチームに聞いてみないとね」

それは「Yes」という事か?と問われるとノリスは「今は肯定も否定もできない。そう願うよ!」と笑った。

インディ500カーブデイを迎えたインディアナポリス・モーター・スピードウェイ
© Indycar、インディアナポリス・モーター・スピードウェイ