インテルラゴス・サーキットのレッドブル・ホンダのガレージと33号車RB15、2019年F1ブラジルGP予選にて
Courtesy Of Red Bull Content Pool

エンジン性能問われるインテルラゴスの上り坂、ホンダは本当にストレートで速かったのか?

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パワーセンシティビティの高いインテルラゴス・サーキットで、28年ぶりにポールポジションを獲得したホンダ。ライバルたちがそのストレートスピードの速さに不意を突かれたとあって、大きな話題となっているが、ホンダは本当に速かったのだろうか?

ホンダの速さに驚くライバル

F1ブラジルGP予選後のFIAの記者会見では、ホンダのF1パワーユニットに関する意見が飛び交った。無論、オースティンでの”フェラーリ不正疑惑発言“という伏線があった事もあり、メディア側がエンジン周りについての話題をドライバーに振った部分があったわけだが、そもそも最初に口火を切ったのはドライバー達の方だった。

F1ブラジルGP予選後会見で談笑するレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンとメルセデスのルイス・ハミルトン
© Getty Images / Red Bull Content Pool、予選後会見で談笑するフェルスタッペンとルイス・ハミルトン

予選2番手でポールを逃したセバスチャン・ベッテルは、「マシンバランスに満足していたか」と問われると、レッドブル・ホンダのストレートでの速さに話を切り替え「ちょっと驚いた」と語り、それに続いて「クルマとセッションの出来について教えて」と投げかけられた予選3番手のルイス・ハミルトンが、「マックスに対してストレートで大きく負けていた」と切り出したのだ。

ホンダの直線スピードに仰天「何か疑わしい」

セクター3で上位に付けたホンダ勢

2人の言うストレートとは、ターン12からターン1へと続く1.2kmの上り坂のロングストレートの事だろう。サーキットの総距離約4分の1を占めるこのセクションは、およそ16秒間のエンジン全開区間となる。セクターで言えば第3セクターに含まれる。

インテルラゴス・サーキットのコースレイアウト図

以下は予選のセクター別タイムだが、ポールを獲ったフェルスタッペンは、うねるような第2セクターで全体ファステストをマークしているものの、パワーがモノを言う第3セクターでは5番手タイムに留まっている。最も速かったのはフェラーリであった。

Pos Sector 1 Sector 2 Sector 3
Driver Time Driver Time Driver Time
1 C.ルクレールLEC 17.417 M.フェルスタッペンVER 34.195 C.ルクレールLEC 15.804
2 M.フェルスタッペンVER 17.425 L.ハミルトンHAM 34.248 V.ボッタスBOT 15.817
3 S.ベッテルVET 17.462 C.ルクレールLEC 34.265 L.ハミルトンHAM 15.819
4 L.ハミルトンHAM 17.532 V.ボッタスBOT 34.33 S.ベッテルVET 15.823
5 V.ボッタスBOT 17.621 S.ベッテルVET 34.346 M.フェルスタッペンVER 15.827
6 A.アルボンALB 17.631 A.アルボンALB 34.384 A.アルボンALB 15.897
7 L.ノリスNOR 17.717 R.グロージャンGRO 34.83 P.ガスリーGAS 15.915
8 C.サインツSAI 17.728 K.マグヌッセンMAG 34.932 A.ジョビナッツィGIO 15.96
9 K.ライコネンRAI 17.731 P.ガスリーGAS 34.955 K.ライコネンRAI 15.973
10 A.ジョビナッツィGIO 17.754 N.ヒュルケンベルグHUL 34.973 D.リカルドRIC 15.982
11 K.マグヌッセンMAG 17.756 L.ノリスNOR 35.052 L.ノリスNOR 15.987
12 P.ガスリーGAS 17.773 D.リカルドRIC 35.052 N.ヒュルケンベルグHUL 16.024
13 R.グロージャンGRO 17.786 S.ペレスPER 35.094 S.ペレスPER 16.028
14 D.リカルドRIC 17.799 K.ライコネンRAI 35.122 K.マグヌッセンMAG 16.065
15 S.ペレスPER 17.822 A.ジョビナッツィGIO 35.205 R.グロージャンGRO 16.089
16 N.ヒュルケンベルグHUL 17.857 D.クビアトKVY 35.227 D.クビアトKVY 16.093
17 D.クビアトKVY 17.899 L.ストロールSTR 35.393 L.ストロールSTR 16.203
18 L.ストロールSTR 17.926 C.サインツSAI 35.553 J.ラッセルRUS 16.229
19 J.ラッセルRUS 18.093 J.ラッセルRUS 35.669 R.クビサKUB 16.266
20 R.クビサKUB 18.199 R.クビサKUB 36.119 C.サインツSAI 18.929

とは言え、当該区間ベストのルクレールとフェルスタッペンのギャップは1000分の23秒と僅か。”遜色ない”と表現しても差し支えない程度とも言える。また、フェルスタッペンのすぐ後ろに、同じホンダ製パワーユニットRA619Hを搭載するレッドブルのアレックス・アルボンとトロロッソのピエール・ガスリーが続いた点も興味深い。(ダニール・クビアトに関してはQ1敗退に終わっているため、以下、除外して話を進める。)

パワーハングリーなセクター3で、ホンダ勢が印象的なタイムを残していた事は確認できた。ではもう一つ。この区間でのトップスピードではどうだったのか? まずはスピードトラップをみてみよう。インテルラゴスのスピードトラップは、ターン1の90m手前に設置されている。

Pos Driver Team km/h
1 シャルル・ルクレール フェラーリ 330.6
2 ダニエル・リカルド ルノー 330.4
3 ピエール・ガスリー レッドブル・ホンダ 330.4
4 マックス・フェルスタッペン レッドブル・ホンダ 330.2
5 キミ・ライコネン アルファロメオ 330
6 セバスチャン・ベッテル フェラーリ 329.7
7 ランス・ストロール レーシングポイント 329.6
8 アントニオ・ジョビナッツィ アルファロメオ 329.5
9 セルジオ・ペレス レーシングポイント 327.7
10 ランド・ノリス マクラーレン・ルノー 327.6
11 ロマン・グロージャン ハース・フェラーリ 327.5
12 アレックス・アルボン トロロッソ・ホンダ 327.3
13 ジョージ・ラッセル ウィリアムズ・メルセデス 327.2
14 カルロス・サインツ マクラーレン・ルノー 327.1
15 ダニール・クビアト トロロッソ・ホンダ 327.1
16 ケビン・マグヌッセン ハース・フェラーリ 326.9
17 ニコ・ヒュルケンベルグ ルノー 326
18 ルイス・ハミルトン メルセデス 325.3
19 ロバート・クビサ ウィリアムズ・メルセデス 324.9
20 バルテリ・ボッタス メルセデス 324.7

ここでも最速はフェラーリのシャルル・ルクレール。ホンダ勢としては、ピエール・ガスリーが時速330.4kmで3番手、マックス・フェルスタッペンが時速330.2kmで4番手に続いた。

スピードトラップはスリップストリームの影響が大きい。より影響の少ないフィニッシュライン速度ではどうだったのか?以下にみてみよう。

Pos Driver Team km/h
1 シャルル・ルクレール フェラーリ 331.2
2 アントニオ・ジョビナッツィ アルファロメオ 329.8
3 キミ・ライコネン アルファロメオ 329
4 バルテリ・ボッタス メルセデス 329
5 ケビン・マグヌッセン ハース・フェラーリ 328.7
6 セバスチャン・ベッテル フェラーリ 327.5
7 ピエール・ガスリー レッドブル・ホンダ 326.8
8 ロマン・グロージャン ハース・フェラーリ 326.5
9 ルイス・ハミルトン メルセデス 326.2
10 マックス・フェルスタッペン レッドブル・ホンダ 325.7
11 ランス・ストロール レーシングポイント 325.6
12 ダニエル・リカルド ルノー 325.3
13 アレックス・アルボン トロロッソ・ホンダ 325.3
14 セルジオ・ペレス レーシングポイント 324.8
15 ジョージ・ラッセル ウィリアムズ・メルセデス 324.6
16 ランド・ノリス マクラーレン・ルノー 323.7
17 ダニール・クビアト トロロッソ・ホンダ 323.6
18 カルロス・サインツ マクラーレン・ルノー 323.2
19 ニコ・ヒュルケンベルグ ルノー 322.3
20 ロバート・クビサ ウィリアムズ・メルセデス 321.5

取り立ててホンダ勢がどうのこうのという点は確認できない。その一方で、上位にフェラーリ、アルファロメオ、ハースの跳馬PU勢がズラリと並んでいる点は見逃せない。

“穴”を塞がれながらも依然として速いフェラーリ

トップスピードはエンジン馬力やスリップストリームの有無の他、直前のコーナーの種類や車体のトラクション性能、ダウンフォースレベルや車体の空気抵抗といった様々な要素で上下するため、単純にエンジン性能を比較出来るというものではない。

とは言え、セクター3で最も速いタイムを刻んだルクレールが、スピードトラップでもフィニッシュライン速度でもトップであった点は注目に値する。付け加えると、ルクレールは先の2地点を含む4箇所の速度計測地点の全てで最高速を記録していた。

ホンダ勢が今回、ストレートで印象的なパフォーマンスを残した事は確かだ。だがそれよりも、燃料流量とエキストラオイル燃焼に関する規約の穴が塞がれたにも関わらず、依然として高いパワーアドバンテージを見せつけたルクレール、フェラーリの方が印象的とも言えそうだ。

ただしルクレールは今回、新しく封を切ったばかりのフレッシュなエンジンを使っているため、エンジンに対してかなり”無理強い”する事が可能だという点には注意が必要だ。

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