ルノー・スポールのカルロス・サインツ
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レッドブルは、何故カルロス・サインツではなくピエール・ガスリーを昇格させたのか?

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レッドブル・レーシングは何故、カルロス・サインツではなくピエール・ガスリーを2019年のレギュラードライバーとして昇格させる事を選んだのだろうか?

今年のF1ドライバーズマーケットは近年稀に見る激しい動きを見せており、トップチームを含むおよそ半分近くが来シーズンに向けてラインナップを変更する見通しとなっている。

発端となったのはレッドブルのダニエル・リカルド。シーズン前半戦、ハンガリーGPが終わるや否や、パドック中の予想を裏切りルノー・スポールへの移籍を発表すると、市場は”玉突き事故”のような様相を呈した。

リカルドの移籍によって空いたシートには誰が座るのか?最有力候補とされたのはカルロス・サインツとピエール・ガスリー。トロロッソ時代のマックス・フェルスタッペンに対して、負けず劣らずの活躍を見せたサインツは、今季よりルノーへと貸し出されていた。

経験という点で言えばサインツが2歩も3歩もリードする中、レッドブルのお偉方が選んだのはF1フル参戦を果たしたばかりのガスリー。その理由についてサインツは、英Sky Sportsに対して次のように語った。

「もし2016年か17年にレッドブル内に動きがあれば、僕がそのチャンスを掴んだはずだけど、結局のところリカルドとフェルスタッペンは動かなかった」

「僕はその後ルノーに移り素晴らしいシーズンを過ごす事になったけど、それによって必然的にレッドブルとの接触回数はちょっと減ってしまい、チームは僕の状況をそんなにきちんとは把握してなかったんだ」

「で、結局彼らは安牌を切って、手の内にいて状況を的確に把握しているガスリーの方を選んだ。でもそれは理にかなったことだと思うよ。彼は素晴らしいドライバーだし、チャンスを得るに相応しいと思う」

レッドブルの基本哲学の一つに、ベテランよりも若手への投資を優先する、というものがある。セバスチャン・ベッテルやダニエル・リカルド、マックス・フェルスタッペンを見れば明らかなように、この考え方に基づいた起用方法はこれまでのところ成功を収めており、この点こそがフェラーリやメルセデスとは異なる存在感を足らしめている。

サインツとてまだ24歳であり、年齢だけ見れば若い事に違いはないが、F1でのキャリアはガスリーの4倍。将来の可能性への期待値という点で言えば、ルーキーにしてトロロッソ・ホンダを牽引するガスリーが大きく勝る。

中堅への階段を上る中、今年のサインツはニコ・ヒュルケンベルグに対して予選でも決勝でも遅れを取っており、対チームメイトバトルに対する印象という点でも、ガスリーに見劣りする部分があるのは否めない。

とは言え、サインツはこれまでの3年間、単年契約の更新を重ねる事によってF1に留まり続けてきた。常に来シーズンの状況を心配するような環境では、集中して競技に取り組む事も難しい。だが、この度発表されたマクラーレンとの契約は2年間。サインツは来年初めて、腰を据えてチャンピオンシップに挑戦する事が可能となる。