スーパーライセンス

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FIAフォーミュラ1ドライバー・スーパーライセンスとは、国際自動車連盟(FIA)が管理する最上級グレードのドライバーライセンス(免許証)で、FIAフォーミュラ1世界選手権に参戦するための要件となっている。

スーパーライセンスに関する規定は、FIA国際競技規則(ISC)付則L項で定められている。有効期限は取得年の終わりまでで、毎年更新が必要となる。

スーパーライセンスの種類

FIAのライセンスにはドライバー用とは別に、競技参加者、競技役員、オーガナイザー、サーキット用が存在する。本ページでは、ドライバー用のスーパーライセンスについて説明する。

スーパーライセンスには以下の2種類が用意されている。

  • フル・スーパーライセンス
  • フリー走行限定スーパーライセンス

フル・スーパーライセンスは、グランプリ・レースや公式タイヤテストに参加する場合に必要となる。

フリー走行限定スーパーライセンスは、将来有望な若手のサポートを目的に設けられたもので、その名の通りF1フリー走行のみを対象としている。

発行要件

要件は適時見直される。フル・スーパーライセンスおよびフリー走行限定スーパーライセンスは、いずれもまず以下の要件を満たす必要がある。

  • 初出走時に原則、満18歳以上である事
  • FIA発行の国際A級ライセンスを所持している事
  • F1競技規定及びFIA国際競技規定に関する質疑をクリアする事(初回申請時のみ)
  • 指定シングルシーター・カテゴリーの2つのフルシーズンそれぞれで80%以上のレースを完走していること(初回申請時のみ)

フル・スーパーライセンスの場合

上記に加えて以下のいずれかの要件を満たす必要がある。

  • 1:申請年の前年までの3シーズンでスーパーライセンス・ポイントを40点以上獲得するか、申請年の前年までの2シーズンと申請年の見込み獲得ポイントの合算が40点以上であること
  • 2:過去3年以内にF1フリー走行で100km以上を走ったフル・スーパーライセンス保持者であること
  • 3:過去3年以内にフル・スーパーライセンスを取得しており、かつFIAの裁量で資格があると認められた者であること
  • 4:スーパーライセンス・ポイントを30点以上獲得しているものの、不可抗力によって40点を満たせなかったとFIAが判断した者であること

上記2〜4については別途証明が必要で、申請日の180日以内に現行F1マシンまたは過去のF1マシンに乗り、レーシングスピードで2日以内に最低300kmを走破したことを示す必要がある。その方法は、(1)テスト実施国のASNによる証明、または(2)F1グランプリの週末の中での走行となる。

なお、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響を受け、申請日の直近3シーズンに2020年または2021年が含まれる場合は、直近4シーズンのうち最も獲得ポイントが多い3シーズンが考慮されるようになった。

フリー走行限定ライセンスの場合

フリー走行限定スーパーライセンスは、FIA-F2選手権へのフル参戦経験があるか、申請年の前年までの3シーズンでスーパーライセンス・ポイントを25点以上保有するドライバーに申請が限定される。ただし、初回申請の場合は前者の要件が「FIA-F2選手権での6戦以上の完走経験」に緩和される。

また、初回はドライバー本人が規則に関する質疑をクリアし、継続時はF1チームが規則に関するブリーフィングを実施したことを証明しなければならない。

これに加えて、起用するチーム側がFIAに対してドライバーの能力を証明することも要件とされる。申請前180日以内に最大2日間で、主にF1マシン(一般的には旧型車)をドライブし、300kmを超える距離をレーシングスピードで走行する必要がある。

なお、ポストシーズン・テストでは、条件付きながらFIA国際Aライセンスでの走行が認められている。

18歳の年齢制限と「17歳特例」

2015年、当時史上最年少でF1デビューすることが決定したマックス・フェルスタッペンの年齢(当時17歳)に対して、各方面から批判的な見解が寄せられた。これを受け、FIAは2015年1月、「18歳」という年齢制限をライセンス要件に加えた。ただし、適用は2016年以降だったため、フェルスタッペンは17歳でデビューを果たした。

その後、FIAは2024年6月11日にスーパーライセンス規定に変更を加え、「FIAの単独の裁量により、最近、かつ一貫してシングルシーター競技で卓越した能力と成熟度を示したと判断されたドライバーは、17歳でスーパーライセンスを付与される可能性がある」との文言を第13条2項に追加した。

アンドレア・キミ・アントネッリ(当時17歳)の早期F1デビューの可能性が取り沙汰される中での変更だった

以前は自国の自動車運転免許を所持していることも要件の一つとなっていたが、17歳特例の追加と合わせて撤廃された。アントネッリの母国イタリアでは、運転免許証の取得要件が18歳以上に定められていた。

なお、この「次なるフェルスタッペン」を防ぐためのルール策定を任されたのはローラン・メキーズだった。当時、FIAセーフティー・ディレクターを務めていた彼は、後にチーム代表として、フェルスタッペンの成功を支える立場に就くことになる。

スーパーライセンスポイント付与表

スーパーライセンス・ポイントを獲得できるのは、以下のシリーズのみだ。フルシーズンの80%以上のイベントに出走する必要がある。

シリーズによって点数配分が異なるため、世界の主要レーシングカテゴリーは、FIAの名のもとに築かれたヒエラルキーに組み込まれている。この点には非常に政治的な側面もある。

当初は、年間に複数のシリーズに参戦しても、そのうち一つのシリーズの成績しかポイント対象とならなかった。現在は、開催期間が重ならない場合に限り、年間最大2つまでのシリーズの成績を対象にできる。

FIAカート選手権のポイントは最大12点までに制限され、有効期間は5年間だ。

耐久レースなど、同一車両を共有するシリーズでは、ドライバーのFIAドライバー・カテゴリーに応じて、以下の比率でポイントが与えられる。

  • プラチナおよびゴールド:100%
  • シルバー:75%
  • ブロンズ:50%
スーパーライセンスポイント配分表(2026年3月26日版)
シリーズ 1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位 10位
FIA-F2選手権 40 40 40 30 20 10 8 6 4 3
インディカー 40 30 25 20 15 10 8 6 3 1
FIA-F3選手権 30 25 20 15 12 9 7 5 3 2
フォーミュラE 30 25 20 10 8 6 4 3 2 1
WEC(ハイパーカーのみ) 30 24 20 16 12 10 8 6 4 2
全日本スーパーフォーミュラ選手権 30 25 20 15 12 9 7 5 3 2
FIAフォーミュラ・リージョナル欧州選手権 25 20 15 10 7 5 3 2 1 0
スーパーGT(GT500) 20 16 12 10 7 5 3 2 1 0
IMSA(GTP) 20 16 12 10 7 5 3 2 1 0
フォーミュラ・リージョナル・アメリカズ選手権 18 14 12 10 6 4 3 2 1 0
FIA公認フォーミュラ・リージョナル日本選手権 18 14 12 10 6 4 3 2 1 0
FIA公認フォーミュラ・リージョナル・インド選手権 18 14 12 10 6 4 3 2 1 0
インターナショナル・スーパーカーズ選手権 15 12 10 7 5 3 2 1 0 0
NASCARカップシリーズ 15 12 10 7 5 3 2 1 0 0
インディ・ライツ 15 12 10 7 5 3 2 1 0 0
ユーロフォーミュラ・オープン 15 12 10 7 5 3 2 1 0 0
全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権 15 12 10 7 5 3 2 1 0 0
FWEC(LMGT3) 12 10 7 5 3 2 1 0 0 0
FIA公認ブラジルF4選手権 12 10 7 5 3 2 1 0 0 0
FIA公認英国F4選手権 12 10 7 5 3 2 1 0 0 0
FIA公認F4中央ヨーロッパ・ゾーン選手権 12 10 7 5 3 2 1 0 0 0
FIA公認中国F4選手権 12 10 7 5 3 2 1 0 0 0
FIA公認フランスF4選手権 12 10 7 5 3 2 1 0 0 0
FIA公認インドF4選手権 12 10 7 5 3 2 1 0 0 0
FIA公認イタリアF4選手権 12 10 7 5 3 2 1 0 0 0
FIA公認日本F4選手権 12 10 7 5 3 2 1 0 0 0
FIA公認NACAM F4選手権 12 10 7 5 3 2 1 0 0 0
FIA公認東南アジアF4選手権 12 10 7 5 3 2 1 0 0 0
FIA公認スペインF4選手権 12 10 7 5 3 2 1 0 0 0
FIA公認アメリカF4選手権 12 10 7 5 3 2 1 0 0 0
FIA公認サウジアラビアF4選手権 12 10 7 5 3 2 1 0 0 0
AsLMS / ELMS / IMSA(LMP2) 10 8 6 4 2 0 0 0 0 0
F1アカデミー 10 7 5 3 1 0 0 0 0 0
インディ・プロ2000 10 7 5 3 1 0 0 0 0 0
GB3選手権 10 7 5 3 1 0 0 0 0 0
NASCARナショナルシリーズ 10 7 5 3 1 0 0 0 0 0
ユーロカップ3 10 7 5 3 1 0 0 0 0 0
FIA公認フォーミュラ・リージョナル中東トロフィー 6 5 4 3 2 1 0 0 0 0
FIA公認フォーミュラ・リージョナル・オセアニア・トロフィー 6 5 4 3 2 1 0 0 0 0
DTM 6 4 2 0 0 0 0 0 0 0
インターナショナルシリーズ登録GT3選手権 6 4 2 0 0 0 0 0 0 0
スーパーGT(GT300) 6 4 2 0 0 0 0 0 0 0
FIAカート世界選手権(シニア) 4 3 2 1 0 0 0 0 0 0

ボーナスポイント

上記とは別に、ペナルティ・ポイント制度が導入されている選手権で、一度もペナルティ・ポイントを科されずにシーズンを終えた者には、追加で2点が加算される。また、FIA-F3ワールドカップ(通称F3マカオGP)の勝者には上記とは別に4点が、F3ワールドカップの優勝者には上記とは別に2点が加算される。

また2020年より、フリー走行限定スーパーライセンスの保持者は、F1フリー走行で100km以上を走行し、かつペナルティ・ポイントが科されなかった場合、各イベントにつき1点が与えられることとなった。このポイントはスーパーライセンスの申請において、合計最大10点まで考慮される。

ポイント減算

シーズンの第1レースのスタートドライバーが16名に満たない場合は、ポイント数が減らされる。

減点されるポイントは、16人を下回るドライバー数に比例する。最低人数を下回るドライバー1人につき10%が減点される。

たとえば16人以上のドライバーが第1レースに出走した場合は満額の100%のポイントが与えられるが、15人の場合は90%、14人の場合は80%と段階的に減っていく。

変遷

2018年に欧州F3、フォーミュラE、WEC(LMP1クラス)、GP3、フォーミュラ・ルノー3.5、スーパーフォーミュラの6つのカテゴリーが格下げ扱いとなり、以降はFIA-F2選手権(2016年までGP2と呼ばれていた)がF1へのルートの最上位に位置づけられた。

2019年は新設の女性限定シリーズ「Wシリーズ」が組み込まれたほか、スーパーフォーミュラやスーパーGT、ドイツ・ツーリングカー選手権(DTM)へのポイント割り当てが引き上げられた。

トヨタ・レーシングシリーズやWシリーズが組み込まれていた時期もあったが、対象となるシリーズは定期的に見直されており、2024年6月11日には新たにスーパーGTのGT300クラスが一覧に加わった。

ペナルティ・ポイント

一般の免許証が交通違反によって免停となるのと同様に、スーパーライセンスを取り消す仕組みとして、ペナルティ・ポイント制度が存在する。

レース中のインシデントなどで、特に悪質と判断された場合、スチュワードによってペナルティ・ポイントが科される。通常は2〜3点の違反ポイントが加算される。

スーパーライセンスに対するペナルティ・ポイントは12カ月間有効とされ、違反から12カ月後に削除される。12カ月の間に12点に達した場合、1戦の出場停止処分が下される。

なお、ペナルティ・ポイントとは別に、初めてスーパーライセンスを取得したシーズン(取得から12カ月間)は常に再審査の対象となる。資格がないと判断されれば、即時抹消される可能性もある。

取得の手順と費用

参戦を計画するイベントにおける車両検査の14日前までに申請を完了する必要があるが、やむを得ない事情で急きょドライバー交代が行われる場合には、48時間以上前までの申請に緩和される。

初めてスーパーライセンスを申請する際は、ドライバーの代理としてASN(各国のモータースポーツの管轄団体)が申請を行う。申請には以下の3つの書類が必要となる。

  • ドライバーが持つ国際A級ライセンス
  • FIAへの推薦事項
  • ドライバーのレース成績

ライセンスには年会費が必要で、FIAに直接これを支払う必要がある。基本料金は1万2800ドル、日本円で140万円程度で、これにチャンピオンシップ・ポイント1点あたり1280ドル、日本円で約14万円を支払う。

2009年のF1王者ジェンソン・バトンは、その翌年、128万ドル、日本円で約1億4000万円を支払った。

ライセンスに記載される内容

スーパーライセンスをはじめ、FIAが管轄するドライバーの免許証には主に以下の内容が記されている。

  • ライセンス番号
  • ライセンスのグレード
  • 有効期間の開始日と終了日
  • ドライバーの最近の写真
  • ドライバーのフルネーム
  • ドライバーの生年月日
  • 健康診断の結果
  • 視力矯正の有無
  • 特別な医学的注意事項