エイペックス
エイペックス(英:apex)とは、英語で「頂点」「先端」「頂上」の意味をもつ言葉で、モータスポーツの世界においてはコーナーの内側の頂点を指す。
一般に、1つのコーナーには1つのエイペックスが存在するが、複雑な形状のコーナーなどは複数存在する場合もある。これをマルチ・エイペックスと言う。
似たような言葉に「クリッピングポイント」がある。エイペックスと同義で使われるほか、実際のコーナリング中にマシンが最もイン側に寄った地点を指すこともある。
コーナーのイン側の頂点をわざわざ「エイペックス」と呼称するのは、それがモータースポーツレースにおいて重要だからである。
どういったレーシングラインでコーナーを走れば早く走れるのか?これを理解するためにエイペックスという概念の理解は欠かせない。
早く走るために必要な”エイペックス”
コーナリングの基本的なライン取りは「アウト・イン・アウト」であり、一般的にはエイペックスを捉えることが望ましいとされる。
それは、ステアリング操作を最小限に抑え、可能な限り真っ直ぐなラインを取ることでコーナリング速度をできる限り維持するに有利である傾向があるためだ。
もちろん、レーシングラインに関するあらゆる説明は”基本的”にという条件がつく。最善のライン取りは、路面状況やマシン特性、コーナーを抜けた先のコース形状、他車とのバトル状況などによって変わるためだ。
ジオメトリカル・エイペックスとレーシング・エイペックス
エイペックスをより深く理解するには、2種類の派生用語を知る必要がある。ジオメトリカル・エイペックスとレーシング・エイペックスだ。
ジオメトリカル・エイペックスは文字通り、”幾何学的な頂点”を指す。つまりコースの形状によって自動的に決定する。ジオメトリカル・エイペックスは、常にイン側コースラインの中心ポイントになるが、レーシング・エイペックスはそうではない。
レーシング・エイペックスとは、ジオメトリカル・エイペックスの地点に関わらず、実質的に”有益な”エイペックスのことを指す。
先に、「路面状況やマシン特性などによって最善のライン取りは変わってくる」と述べたが、この部分を考慮に入れたうえで導き出されたものをレーシング・エイペックスと呼ぶのである。
エイペックスという用語がしばしば混乱の元になるのは、これら2つの派生用語の存在に拠るところが大きいと言えるだろう。
3つのレーシング・エイペックス
次にレーシング・エイペックスの派生概念について述べていく。レーシング・エイペックスは以下の3つに分けられる。
- トラディショナル・エイペックス
- アーリー・エイペックス
- レイト・エイペックス
トラディショナル・エイペックス
レーシング・エイペックスという観点から見た際のコーナーの幾何学的な頂点を「トラディショナル・エイペックス」あるいは「ミドル・エイペックス」という。
物理的な位置としてはトラディショナル・エイペックスと全く同じで、トラディショナル・エイペックスを通過するレーシングラインのことを「トラディショナル・ライン」という。
アーリー・エイペックス
トラディショナル・エイペックスより手前にレーシング・エイペックスを取ることもある。これを「アーリー・エイペックス」という。
アーリー・エイペックスは一般に、コーナー脱出後の進路という点で融通が効くため、当該コーナーの後にコーナーが続いている場合に有効な選択肢となり得る。
レイト・エイペックス
トラディショナル・エイペックスより奥に取る場合のエイペックスを「レイト・エイペックス」という。
コーナーを抜けた先がストレートである場合などは、レイト・エイペックスを通るラインを走ることで加速を最大化することができるが、コーナリングのタイムそのものは遅くなる。