レッドブル・レーシングの2010年型F1マシンRB6のリアディフューザーcopyright Getty Images / Red Bull Content Pool

ブロウン・ディフューザー

  • Updated:

ブロウン・ディフューザー(英:Blown Diffuser)とは、エキゾーストパイプからの排気を利用して、リアディフューザーの効果を向上させ、更に大きなダウンフォースを得るためのシステムのこと。つまり、排気ガスを利用したダウンフォース増強デバイスと言える。ディフューザーが分からない方はディフューザーとは何か?を参照されたい。

1983年のルノーのF1マシン「RE40」のフロア後部にエキゾーストが配されていたように、F1で排気ガスを利用するというアイデアそのものは目新しくはないが、2010年にレッドブルの天才デザイナーであるエイドリアン・ニューウェイが既存のアイデアを発展させてRB6に実装したことで、コンマ5秒ほどのアドバンテージがあるとされ注目を集めた。

具体的には、リアタイヤの前方付近のフロアに排気管の出口を一体化させ、その後方にあるリアディフューザーへと排気ガスを吹き流す事でフロア下面を流れる気流を速めるとともに、車体両サイドから外側へと逃げようとする気流を抑えることで擬似的な密閉性を確保し、ディフューザー効果の最大化を目指す仕組みだ。

これは空力開発全般に言えることだが、ブロウン・ディフューザーはエアロパーツであり、ちょっとした想定外の風の流れでマシンの安定性が大幅に失われる可能性があるため、その安全性を疑問視する関係者も多い。

オフスロットル・オーバーラン

コーナーを曲がる時にこそダウンフォースが必要であり、ブロウンディフューザー効果を最大限に活かしたいところだが、コーナーリング時は基本的にアクセルを緩めるため排出される排気ガス量が減ってしまい、ディフューザーの効果を最大限に活かすことが出来ない。

レッドブルのブロウン・ディフューザーが成功した秘密の一つは、ルノーエンジンのセッティングとマッピングにあった。これは「オフスロットル・オーバーラン」として知られており、アクセルを踏んでない時でも十分な排気ガスが出るようエンジン側のセッティングを最適化するもので、コーナーリング中でさえ強大なダウンフォースを得ていたとされる。

コールドブローとホットブロー…合法から禁止へ

時代の流れは二酸化炭素排出削減、エコ。アクセルを踏んでもいないのに意図的に大量の排気ガスを排出することは、世間一般では燃料を無駄に使ってると見なされる。

2010年には合法だったブロウン・ディフューザーだが、翌2011年シーズン途中のイギリスGPからアクセルオフ時は10パーセントのスロットルブローしか認められなくなり制限がかかった。ホットブローイングとコールドブローイングの禁止だ。いずれもアクセルオフ時の排気ガス量の急激な変化によって、ダウンフォースが瞬時に失われる事を避けるための仕組みだ。

コールドブロー(Cold blowing)とは、オフスロットル時にもエキゾーストから排出される空気量を確保するために、ドライバーがアクセルペダルから足を離してもなおエンジン内に空気が取り込まれるようにして、それを燃焼に使う事なくエンジン内部を通過させ排気管へと排出する仕組みの事。燃焼に使われないために気流が「冷たい」事から名付けられた。

ただし、ブロウン・ディフューザーから最大効率を引き出すためには排ガスは低温よりも高温の方が望ましい。そのためのソリューションがホットブロー(Hot blowing)だ。

ホットブローはコールドブローとは対照的に、アクセルオフ時であっても燃料を注入し続け、これをエンジンバルブを介して直接エキゾーストに運び、高温のエキゾースト内で着火させる。コールドブローと比べて排ガス量と温度は増加し流速も上がる。

コールドブローは不要のようにも思われるが、ホットブローはエンジンへの負荷が大きく損傷の可能性があるため、主として予選で使われていたものとみられている。

最終的に2012年にはエキゾースト周りのレギュレーションが変更され、ブロウンディフューザーの使用は全面的禁止されることとなった。

他カテゴリでのブロンディフューザー

creativeCommonsAudi USA

こうして、F1の世界でブロンディフューザーを拝むことはできなくなったが、2013年のアウディLMP1マシン「R18 e-トロン・クワトロ」にも同様のシステムが搭載されていた。R18はターボエンジンであり、F1でブロンディフューザーが使われていた当時のF1マシンは自然吸気エンジンである。ターボエンジンの排気エネルギーは、自然吸気エンジンのそれと比べて極めて少ないため、まったく同じ仕組み、というわけではないだろうが、排ガスをダウンフォースに利用する、というブロンディフューザーのコンセプトは間違いなく生き続けている。