レッドブル・リンクを走行する2台のメルセデスW11、2020年F1オーストリアGPにてcopyright Daimler AG

“即死”の可能性もあったメルセデスのギアボックス問題、第2戦でも再発する?

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開幕オーストリアGPの決勝レース中に2台の「W11」を襲ったギアボックストラブルについて、メルセデスAMGのトト・ウォルフ代表は「即死」の可能性もあったという表現でその深刻さを表現した。1週間後に控える第2戦シュタイアーマルクGPは初戦と同じレッドブル・リンクが舞台だ。再発はあるだろうか?

振動による電気的ノイズがギアボックスに悪さを…

風光明媚なシュピールベルクのサーキットは、その美しき景観とは裏腹に”マシンクラッシャー”の異名を取るクルマに過酷なコースであり、レース中に2台のマシンはセンサーを通してギアボックスに重大な問題が発生している事をピットに伝えた。

この問題は、超攻撃的な縁石を含むレッドブル・リンクのコース特性がもたらす振動が直接の原因と考えられている。振動によってシステムに電気的なノイズが発生し、これがギアボックスの正常な稼働を脅かしているという事のようだ。

チーフストラテジストのジェームズ・ボウルズは「縁石が非常に攻撃的であるため、サスペンションメンバーとクルマに多くの負荷がかかる。ラップタイムを伸ばすためには縁石を使用する必要があるが、これはクルマに多くの振動を与え、大きな負荷を強いる事になる。ギアボックスの問題自体は本質的には電気的なものだ」と説明している。

ピットはテクニカルディレクターのジェームズ・アリソンが直々に、ドライバー2人に対して縁石を使わないよう強く警告した。英国ブラックリーのチームにとっては幸いな事に、2台共チェッカーフラッグを受け、ポールポジションからスタートしたバルテリ・ボッタスは通算8勝目を挙げたが、トト・ウォルフ代表は「即死」の可能性もありえたとして、勝利とリタイヤが紙一重の状況であったと明かした。

オーストリアGPはドラマチックなレース展開となった。

完走は僅かに11台で、メルセデス製PUを積むレーシング・ポイントのランス・ストロールはチームからセンサーの問題が報告された後にリタイアを喫し、ホンダエンジンを積むレッドブルの2台は各々異なる電気系統の問題によって、ルノーのダニエル・リカルドは冷却、ハース勢はブレーキのオーバーヒート、アルファタウリのダニール・クビアトはサスペンション破損とパンク、そしてキミ・ライコネンはホイール脱落によって、それぞれチェッカー前にマシンを降りた。

再発防止に向けた取り組み

この問題は初日金曜フリー走行の時点で既にボッタスのマシンで発生していたため、メルセデスは早々にファクトリーに数名のメンバーを帰国させ、昼夜を問わず問題の解決に当たらせていた。ジェームズ・ボウルズは、この問題は放置しておいても解決するものではなく、最悪2台共が完走できずにレースを終えかねない程深刻だと説明している。

メルセデスのトラックサイド・エンジニアリング・ディレクターであるアンドリュー・ショブリンは、問題の直接の引き金がアグレッシブなコース特性にある可能性が高いことを認め、今週末のダブルヘッダーの第2戦では更なる問題が予想されると語った。

「オーストリアはマシンにとって本当に酷いサーキットだ。凶暴なのは縁石だ。1ラップ中に多くの時間を縁石の上で過ごさねばならない。我々にとってはそれが問題だった。ここは気温が30度近くにまで達し、空気は薄く、通常のようにマシンを冷却する事ができず、車内の温度も高くなる。マシンに良いわけがない」

「毎年、ここでのレースは消耗戦になる」

第2戦には新コンポーネントを投入

先週末のレースから第2戦の初日までは4日しか空いておらず、新しいギアボックスを設計・製造するような時間はないとみられるが、トト・ウォルフは第2戦に先立って”状況の改善”を目的とした「新たなコンポーネント」を投入する事を明らかにした。

「初戦の結果は表面的には良いように見えるが、実際には運良く完走できたといった状況だった」とトト・ウォルフ。

「信頼性に関する不安を払拭するため最優先で取り組んでいる。シーズンは短く、最終的なレース数もまだ決まっていない中では、1レース1レースが非常に大きな意味を持つ。それだけにこの問題は一刻も早く改善しなければならない」

“コンポーネント”が具体的に何を指すのかは分からないが、注意すべきは問題の「解決」ではなく「状況の改善」のためのソリューションという事だ。上手く機能すれば再発の可能性は低減されるであろうものの、決してゼロになるわけではないようだ。

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