DRSを稼働させてバトルするアルファタウリのピエール・ガスリーとメルセデスのルイス・ハミルトン、2022年4月24日F1エミリア・ロマーニャGP決勝レースにて
Courtesy Of Red Bull Content Pool

F1、DRS依存はいつまで続く? 段階的廃止を模索するFIA

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MGU-Hを廃した新たなパワーユニットと共に導入が計画されている2026年の次世代マシンにおいてなお、F1はDRS(空気抵抗低減システム)を撤廃できない可能性がある。

DRSはF1に新たなスペクタクルとゲーム的要素を付与した一方、人工的なオーバーテイクを生み出しているとの批判も根強い。

昨年のシルバーストンで公開されたFIA実寸モデルのリアウィングにアクチュエーターが搭載されていなかった事から廃止の可能性が浮上したものの、DRSは2022年も変わらずその役割を担っている。

DRSはリアウィングのフラップ角度を変更する事で直線区間においてマシンの空気抵抗を削減し、これによりトップスピードを引き上げる事でオーバーテイクの促進を目指すもので、2011年に導入された。

そもそもFIAは、2022年モデルの開発初期の段階から既に、DRSを廃止できない可能性を把握していた。

2017年6月から4年半に渡ってF1の空力責任者を務めた後、同じ肩書のまま今年2月にFIAに籍を移したジェイソン・サマーヴィルはピーター・ウィンザーとのインタビューの中で「(後続車が)失うダウンフォースが減る一方でトウも減少」する事が確認されていたため「レギュレーションからDRSを取り除く事はおそらく不可能だという事を少しは気に留めていた」と語った。

DRSは健在ながらも、グランドエフェクトカーの導入によってレースは様変わりした。ダーティーエアーの影響が軽減された事で前走車に対する追従性が改善され、車間は明らかに縮まり、コースの至るところで接近戦が見られるようになった。

サマーヴィルは「コーナーやその次に控えるストレートでマシンがより接近して走れるようになった」と指摘する。

「オーバーテイクしても、その追い抜いた相手がまだその場にいて、すぐに追いかけてくるというような状況はここ暫くなかったものだ」

「最初の数レースにおいて、これは本当に新鮮なものだった。単にDRSのおかげというわけではない」

ドライバー達は口を揃えて、今もなおDRSなしに追い抜く事はかなり困難だと認めているが、ウェットからドライへと移り変わる中で行われたイモラでのレースは、各コースにおけるDRSゾーンの設置を検討していく上でFIAに新たな視点を与えたようだ。

サマーヴィルは「レースのほぼ半分がDRSなしで行われたのは非常に興味深い」と指摘した。

「DRSの使用が許可される前には幾つかのオーバーテイクがあり、その後はDRSが互いを打ち消し合っていた」

FIAは段階的にDRSを廃止していきたいと考えているが、小型・軽量化が検討されている2026年導入の次世代マシンにおいてなお、DRSが消えてなくなる事はなさそうだ。

サマーヴィルは「2026年に向けて我々は様々な解決策を模索している」「そのクルマのコンセプトにおいては、DRSがさほど重要な役割を担わなくてもよくなるかもしれない」と述べ、完全撤廃の見通しが立っていない事を示唆した。