3年ぶりのF1シンガポールGPが予測不能な「未知のレース」となり得る3つの理由
単に3年ぶりという理由だけではなく、2022年のF1シンガポールGPはチームにとって以前とは大きく異なる挑戦となる可能性がある。路面、タイヤ、マシンを理由にピレリのモータースポーツ部門を率いるマリオ・イゾラは「全くの未知のレース」になる可能性があると警告する。
F1初のナイトレースが行われたことでも知られるマリーナベイ市街地コースはパンデミックによる2年連続の中止を余儀なくされた後、2022年大会に先立ち路面が再舗装された。
以下のように再舗装箇所はサーキットの全面に及ぶ。
- メインストレートからターン1直後
- ターン5からターン7の制動ポイント手前
- ターン12~13
- ターン14
- ターン15手前からターン19
監修したのはシルバーストンやザントフォールト、ポール・リカールの再舗装を手掛けたことでも知られるイタリアのサーキットコンサルタント会社、ドローモだ。
敷かれたアスファルトは一般道ではなくグランプリレースを想定したもので、通常のストリートサーキットのような滑らかなアスファルトではない。
更には扁平大口径の18インチタイヤとグランドエフェクトカーの導入という要素もあり、マリオ・イゾラはこれまでの経験やデータが役に立たない可能性があると指摘する。
「3年前とはコンパウンドも構造もまったく違う18インチタイヤが導入された事に加えてアスファルトも新しいため、まるで全くの未知のレースといった感じだ」とイゾラは語る。
「23個のコーナーは全て低速であるため、ここではトラクションを最大化することが何よりも重要だ」
「スピードとグリップを最大化するためにソフト側の3種類のコンパウンドを用意しているが、リアタイヤのケアは必要不可欠だ」
「今年導入された最新のマシンはアンダーステア傾向にあるため、リヤの加速を損なわないようにフロントエンドを強化するための適切なセットアップバランスを見出すことがこれまで以上に重要になるだろう」
再舗装による影響の1つは、バンプが減ることによるポーパシング及びバウンシングの低減だろう。これは特にメルセデスにとって朗報と言える。2つ目は急激なトラック・エボリューションが挙げられる。
ウィリアムズの車両パフォーマンス部門を率いるデイブ・ロブソンは「我々が最後にシンガポールでレースをしたのは数年前だ。レイアウトはほとんど変わっていないが、路面は大きく変化した。週末を通して急速に進化する可能性がある」と指摘した。
DRSゾーンが3つあるにも関わらず、このサーキットはオーバーテイクが最も難しいサーキットの1つである。これまでに開催された12大会における平均オーバーテイク数は25回。路面の進化を見誤り予選でしくじることがあれば挽回は容易ではない。
これらの変化によりどの程度、予測不能性が上がるのかは分からないが、そもそもシンガポールGPは予測不能なレースである。何しろ過去5大会でセーフティーカーが導入された回数は10回に上る。
日没後のレースとは言え、高温多湿のコンディションはドライバー、エンジニア、メカニックにシーズンの中で最も過酷な状況を作り出す。更にブレーキングの時間は1周の約22%に相当するためマシンにとっても楽ではない。おまけに常に雨の脅威にさらされる。
確率的には確かに、ドライバーズ・チャンピオンシップ争いは鈴鹿での日本GPに持ち越しとなる可能性が高いものの、どう転ぶか分からないという点でシンガポールGPで決する可能性も十分にあると言える。