F1引退のベッテル、後任や如何に…アストンマーチンは2023年に誰を選ぶのか?
4度のF1ワールドチャンピオン、セバスチャン・ベッテルを失う事になったアストンマーチンは2023年以降の後任ドライバーとして一体誰を選ぶのだろうか?
ベッテルに関しては数年前からしばしば引退が囁かれてきたものの、フランスGPで現役続行への意欲を示したその1週間後に今季末限りでの引退を発表したという点で青天の霹靂だった。
チーム代表のマイク・クラックはベッテルとの契約更新が最優先事項であり、これに代わる「プランB」はないとしていた。だが現実にはベッテルはオファーを断わり、チームは後任の選定を余儀なくされる事となった。
父ローレンス・ストロールが会長職に留まる以上、結果やパフォーマンスがどうであれランス・ストロールの続投は明らかで、ベッテルの後継足るに相応しい経験と実績を持つドライバーは限られている。
フェルナンド・アロンソ
真っ先に思い浮かぶのはベッテルと同じ様に2度に渡ってF1を制した経験を持つフェルナンド・アロンソだ。アロンソとアルピーヌとの契約は今季末限りで満了を迎える。
豊富なエンジニアリング的知識と経験、確立されたドライビング、そして実績と、ベッテルの後任としては文句の付けようがない。
アルピーヌとしても、オスカー・ピアストリの来季処遇に頭を悩ませる必要もなく、全ては穏便に収まりそうだが、当人がアストンマーチンに魅力を感じるかどうかが最大の問題だ。
急速な規模の拡大に伴う課題や血縁関係に基づくドライバー起用など、アストンマーチンには長期的なポテンシャルこそあれど、現時点ではタイトル争いを期待できる状況にはない。
アロンソが求めるのは3度目のタイトル獲得だが、来年には41歳の誕生日を迎える事になる。5年も10年も待つ余裕はない。
ダニエル・リカルド
8度のグランプリ・ウィナーであるダニエル・リカルドはアロンソとは異なり、マクラーレンとの契約が来年末まで残っているが、一向に不振から抜け出せてない現状では、交渉次第で途中解除できる余地はありそうだ。
マクラーレンのF1テストプログラムにはコルトン・ハータやアレックス・パロウ、パトリシオ・オワードといったインディカー・ドライバーが大挙を成して列を作っている。リカルドを手放したとしても選択肢には困るまい。
リカルド本人にとってもアストンマーチンで再起を目指すのは懸命な選択肢と言える。
ピエール・ガスリー
レッドブル移籍の可能性が閉ざされているピエール・ガスリーにとっては一つのチャンスと言えるかもしれない。
26歳のフランス人ドライバーはアルファタウリのリードドライバーとしてチームを率い、ミッドフィールダーながらも既に1勝、3表彰台を獲得しており、パドックでの評価も高い。
目標とするF1タイトル獲得のためにはレッドブルへの再昇格の切符を掴むか、レッドブル・ファミリーを離れる必要がある。レッドブルはセルジオ・ペレスと2024年末まで契約を結んでいる。
問題は現行契約だ。レッドブルとの契約は2023年末までとなっており、本人が望んだとしてもチームが手放すとは考えにくい。
ユアン・ダルバラやリアム・ローソン等、レッドブルは多くの有望なジュニアドライバーを抱えているものの、モータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは6月の時点で、いずれも来季昇格は時期尚早だと語っており、ガスリーに代わる後任がいない状況だ。
ニコ・ヒュルケンベルグ
当然選択肢に入ってくるのがリザーブドライバーのニコ・ヒュルケンベルグだ。パンデミックが猛威を振るう中、これまでにスーパーサブとして見事な仕事をこなしてきた。
チームとの関係は深く、これまでの経緯も熟知しているだけに即戦力として申し分ない。
ただそれにも関わらず、シートを失って以降は各チームの有力リストに入ることもなく、アストンマーチン自身もヒュルケンベルグを優れたリザーブ以上の存在とは見なしていないように思われる。
ミック・シューマッハ
仮にベッテルが自身の後任としてチーム側から相談されたとすれば、ミック・シューマッハの名を挙げても何ら不思議はない。ミハエル・シューマッハを師としたベッテルは、彼の息子を同じ様に弟子のように扱っている。
言わずもがな、アストンマーチンの前身であるジョーダンはミハエル・シューマッハが1991年にF1デビューを果たしたチームであり、歴史的なつながりがある。
問題は、ミック自身の素質がアストンマーチンの要求に応えられるかどうかという点と、フェラーリがミックを手放すかという2点に尽きる。
2年目を迎えたミックはモナコでのクラッシュに端を発したシーズン序盤の不振を切り抜け、オーストリアでは僚友ケビン・マグヌッセンより速いタイムを刻むなど、成長を感じさせているが、それでもこれまでに挙げてきたベテランと比べればまだまだひよっこだ。
アストンマーチンがベッテルの後任に求めるべきは豊富な経験を持ち、チームを率いる事のできる人材だが、前述のようにこのチームには実力主義とは言えないコンテキストがある。
それだけの素質があるかどうかはさておき、オーナーがストロールをリードドライバーに引き上げたいと考えるのであれば、それよりも若くまだ2年目のシューマッハが選択肢に入ってきても不思議ではない。
ジュニア時代から長年に渡ってミハエルの息子をサポートし続けてきたフェラーリが放出を容認するかについては判断が難しい。
シャルル・ルクレールとカルロス・サインツのラインナップは少なくとも2024年末まで続く。後2年でシューマッハが化ける可能性を見い出しているならば決して手放す事はないだろうが、そうでないと考えているならば移籍を邪魔する事はないだろう。
ニック・デ・フリース
同じロジックで言えばニック・デ・フリースというシナリオもあるだろう。ウィリアムズとメルセデスから出走した今年のF1出走はパドックに感銘を与えた。
アストンマーチンはメルセデス製F1パワーユニットを搭載しており、交渉もスムーズに進むだろう。