自分のポスターの前に立って笑顔を見せるレッドブルのマックス・フェルスタッペン、F1日本グランプリ 2018年10月5日
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ベッテル、予選9番手で選手権争いに危険信号「…タイトル争い?もう終わってるでしょ?」とフェルスタッペン

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レッドブル・トロロッソ・ホンダ陣営が喜びの興奮に包まれた一方で、フェラーリ陣営はまたしてもオペレーションミスの代償を支払い絶望に打ちひしがれた。ドライバーズタイトル争いで大逆転を狙うセバスチャン・ベッテルは、予選Q3のタイヤ選択を誤った事でまともにタイムを計測できず、鈴鹿でのグリッド争いで思いもよらぬ9番手に終わった。

倒すべきルイス・ハミルトンはタイムシートの一番上。キャリア通算80回目のポールを獲得し、追い抜きの難しい鈴鹿での決戦に向けて最高のスタートポジションを手にした。2番手にはチームメイトのバルテリ・ボッタス。シルバーアローの障壁がハミルトンを後方支援する。

ベッテルが挽回を成功させるための最初の課題は、予選3番手につけたレッドブルのマックス・フェルスタッペン。メルセデスへの挑戦権を手にするにはまずは21歳のオランダ人を倒さねばならない。だが、非力なルノーパワーを背負っているとは言えども鈴鹿でのオーバーテイクは極めて難しく、フェラーリエンジンを持ってしてもこれをを交わすのは容易ではない。

突如チャンピオンシップの板挟み・橋渡し(?)役を担う事となったフェルスタッペンは、ハミルトンとベッテルのチャンピオンシップ争いを妨害するつもりかどうかをデイビッド・クルサードから問われると、笑顔で次のように返した。

「え?まだ争ってるの?僕にはよく分かんないけど」

鈴鹿のグランドスタンドとファンを背景に写真を撮るレッドブルのマックス・フェルスタッペンとダニエル・リカルド
© Getty Images / Red Bull Content Pool、鈴鹿のグランドスタンドとファンを背景に写真を撮るフェルスタッペンとリカルド

今回ベッテルが9番手に沈んだ最大の要因は、予選Q3開始時のタイヤ選択ミスにあった。フェラーリは雨脚が強まる事を予想して、小雨が降るドライコンディションでスタートしたポール争いで、ベッテルとキミ・ライコネンに雨用のインターミディエイトタイヤを履かせてコースに送り出した。だがその読みは外れ、1回目のアタックラップを棒に振った。

スリックに履き替えて挑んだ2回目のランでは逆に本格的な雨が降り始め、ベッテルはスプーンでスピーン。真っ当なタイムを出せず仕舞いに終わった。予選を振り返ったベッテルはインターを履かせる決断を下したチームを擁護。状況が違っていれば、その戦略は利をもたらしたはずと主張した。

「仮にもう5・6分早く雨が降ってきたら僕ちが賢かったわけだ。今回はこういう形になったから僕らが間抜けに見えているだけなんだ。僕としては判断を尊重している」

「雨が降ると予想して外したわけだから判断を間違ったのは確かだけど、こういうコンディションだと、それが上手くいく時もあるし失敗する事だってあるんだ。僕は誰も非難したりはしない」

タイヤ交換作業を行うスクーデリア・フェラーリ、F1日本グランプリ 2018年10月6日

ハミルトンはドライバーズ・チャンピオンシップでベッテルに対して50ポイントもの大量リードを築いており、ベッテルの自力優勝の望みは絶たれている。

ベッテルが公に対してチームを養護する発言をしたのは懸命だと考える。メディアは誰がこの判断を下したのかを迫ったがベッテルは「そんな事聞いてどうするの?皆で判断したって言ったよね?」と返答。組織としての問題の原因を個人や他者に求めて物事が解決する事は極めて稀であり、組織の問題の原因はほぼ100%その組織が持つ”構造”にある。

ましてや仮に問題の本質が個人の資質にあるのだとしても、それをチーム外に対して明らかにしたところで問題が解消される事はなく、チームの団結力を低下させ不信感を生み出すに過ぎない。他者に責任を転嫁した末路がどうなるかについては、今年のマクラーレンが教えてくれる。

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