今季F1ではエンジン交換に2倍の時間が必要か…事故やトラブルは致命的
レーシングポイントのテクニカルディレクターを務めるアンドリュー・グリーンによると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として導入される新たなプロトコルの影響で、F1パワーユニットの交換に掛かる時間は従来の2倍に達する可能性があるという。
レーシングポイントは6月18日(木)、英国シルバーストン・サーキットに2020年型F1マシン「RP20」を持ち込み、7月5日に迫る開幕オーストリアGPに向けての準備に取り組んだ。この日、ステアリングを握ったランス・ストロールは、規約で制限された100kmの上限を超えない範囲内でコースを周回。フィルミングデイを利用して、約3ヶ月半振りにマシンの感触を確かめた。
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アンドリュー・グリーンはこの日のセッションを終えて、感染拡大防止のための新しい手順の潜在的な影響について説明。F1公式サイトは「従来とはまるで違う。大きな課題となるだろう」とのグリーンの言葉を伝えた。
「クルマに関する作業時間が大きく変わる事になる。同じ仕事であっても遥かに多くの時間がかかってしまう。上手くマネジメントする必要がある」
「レース週末にはカーフュー(夜間作業時間制限)があるため、通常行っているようなパーツ変更や調整にどれ位の時間が必要となるのかを事前に把握しておかなければならない。カーフュー規定に反することなく必要な作業を確実に行えるようにするために、週末のスケジュールを調整する必要がある」
安全確保のために設けられた新たなガイドラインは、ガレージ内で作業に取り組むメカニックやエンジニアの数を制限しているだけでなく、フェイスシールドやマスクなどの保護具の着用を義務付けているため、作業効率の低下が予想されていた。
グリーンは「エンジン交換のためにはかなりの時間が必要になると思う。一度に作業できるのは特定のクルーだけだから、パワーユニット交換のスピードが制限されてしまう」と語り、予期せぬエンジン交換が致命的な結果に繋がる可能性を指摘。従来と比較した場合「場合によっては2倍の時間がかかる事になるだろう」と説明した。
昨年のベルギーGPでは、派手なクラッシュを喫したルイス・ハミルトン(メルセデス)のマシンが大破し、危うく予選欠場となるところであったものの、予選Q1でロバート・クビサ(ウィリアムズ)が大量の白煙と炎を吐いたために赤旗中断となり、ギリギリのところでセッションに合流する場面があったが、今シーズンはFP3で予期せぬトラブルに見舞われた場合、予選欠場は免れないかもしれない。
より多くの作業時間が必要となるのはエンジン交換だけでなく、また、一旦何某かのアクシデントに見舞われれば問題の修正に多くの時間がかかる可能性があるため、信頼性の確保と合わせて今季のF1ではマシンの損傷を防ぐことがこれまで以上に重要になる。
グリーンは「重大な信頼性の問題が発生すると、時間内に修理・修正するためにチームに負担を強いる事になる。イベント前にできる事を終わらせておく事も重要だ。2人のドライバーには、プラクティス中に大きなダメージを受けた場合、修復に多くの時間がかかる可能性があることを認識して欲しいね」と付け加えた。