角田裕毅、思わず”チビった”「最大のミス」と自身の技で順位を奪ったハミルトン、RBの野心的な目標を語る
あまりにセンセーショナルなランド・ノリス(マクラーレン)の初優勝がなければ、角田裕毅(RBフォーミュラ1)はF1第6戦マイアミGPでより多くのスポットライトが当たったドライバーの一人となった事だろう。
スプリント予選こそ15番手と悔しい結果に終わったが、その後のスプリントでは7台抜きの8位入賞を果たし、グランプリ予選ではトップ5の一角、アストンマーチン勢を蹴散らして10番手を刻み、決勝では今季最上タイの7位フィニッシュを果たした。
オスカー・ピアストリ(マクラーレン)の転落や、セーフティーカー(SC)の幸運が結果を後押しした事は確かだが、それでもそうしたチャンスを掴めるポジションを着実に捉え、これを最大限に活かして結果を残した事もまた事実だ。
そしてこれを可能たらしめたのは角田裕毅のドライビングだけではない。実際、角田裕毅は、不動と思われたトップ5チームの牙城を崩しうる程にVCARB 01の競争力が開発を通して高まってきていると感じている。
レース後のパドックで角田裕毅は、ランス・ストロール(アストンマーチン)を抜いてドライバーズ・ランキング10位に浮上したマイアミでの週末全体について振り返るよう求められると「信じられないほど素晴らしい週末でした」と語った。
「例えばフェラーリやマクラーレンと比べても大差はなく、今日はレースを通して終始、ペースが良かったです」
「これは最初の数レースでは決してなし得なかった事で、如何に僕らがプッシュしているか、特に舞台裏で取り組んでくれているみんなの努力を表すものだと思います」
「これまでのシーズンを通しての進化は本当に急速です。ダニエル(リカルド)が昨日(のスプリントで)、4位フィニッシュした事もそうですが、これが今の僕らのクルマのペースだと思います」
マイアミでのパフォーマンスは前戦とは対照的だった。中国GPでは週末を通して特にリアのグリップ不足に苦しみ、すべてのセッションでリカルドの後塵を拝するなど、角田裕毅は困惑の3日間を過ごした。
ただ、これを除けば開幕6戦で4度の入賞を果たし、シングルラップが問われる予選でも4回のQ3進出を果たすなど、角田裕毅とRBは単純に「トップ6以下」の中団チームとは言い難い部分もあり、実際、内部では今後に向けて野心的な目標が掲げられているようだ。
「中国での事についてはもう忘れました! 思い出したくもないので」と角田裕毅は語る。
「ただこれまでのところ、どのレースでも少なくとも10位前後につけ、殆どのレースでポイントを獲得できていますし、最近では10位どころではなく、8位、9位、7位、4位と、急速に進歩しています」
「現時点ではまだメルセデスのレベルには達していませんが、例えば今日はメルセデスの1台と比べても遜色ないペースを引き出す事ができました」
「なのでこの調子でいけば、いつかはトップ5チームに追いつけるかもしれません。もちろん今はまだ速すぎますが、どうなるかは分かりませんし、そうなることを目指しています」
終盤はライバルと直接的にホイール・トゥ・ホイールを演じるような場面もなく、孤独なレース展開となったが、ルイス・ハミルトン(メルセデス)を始め、序盤はコース上で多くライバルとバトルを繰り広げた。
「ターン7でハーフスピンを喫した時は、少しチビっちゃいました!」と角田裕毅は笑う。
「あれは少し余計でしたね。最大のミスでした。ただその後はペースも良く、序盤は上位陣とのバトルを楽しみました。ルイスとのバトルも楽しかったです。最終的には昨日、僕がやったみたいな形で追い抜かれてしまい、デジャヴのような感じでしたけど!」
ハミルトンは34周目のターン12でアウト側から角田裕毅を抜き去った。その様は、前日のスプリントで角田裕毅がハミルトンを交わした動きを彷彿とさせた。
インタビューアーのジェームズ・ヒンチクリフから「あの技を教えたのは君だったよね?」と問われると、角田裕毅は「その通りです。彼は上手かったですね!」と再び笑った。
次戦エミリア・ロマーニャGPはRBだけでなく、拠点を構える角田裕毅にとっても母国レースであり、舞台となるイモラ・サーキットはF1デビューに先立ち、2019年型のトロロッソ・ホンダ「STR14」で大量に走り込んだ思い出深い場所でもある。
「本当に楽しみにしています。好きなコースですし、チームにとってのホームコースでもありますし、僕にとっても第2のホームレースなので」と角田裕毅は語る。
「僕らのチームで働く人の50%近くがファエンツァ出身なんです。去年は洪水の影響でレースが中止になってしまい残念でした。困難な状況に直面したエミリア・ロマーニャの人たちのために良いレースをして、良いイベントにできればと思っています」
イモラ・サーキットを舞台とする次戦エミリア・ロマーニャGPは5月17日のフリー走行1で幕を開ける。