報道陣の質問に答える角田裕毅(RBフォーミュラ1)、2024年6月27日(木) F1オーストリアGP(レッドブル・リンク)
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不正の温床に? 角田裕毅、レッドブルリンクの「完璧」なトラリミ対策に対する”3つの懸念”を提起

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F1レースディレクターのニールス・ヴィティヒが「完璧」と評したレッドブル・リンクのトラックリミット対策だが、角田裕毅(RBフォーミュラ1)は3つの懸念を提起した。

「1,200件以上」もの疑わしきケースの調査を強いられ、チェッカー後に計84件ものラップタイムが抹消された昨年大会を踏まえ、国際自動車連盟(FIA)は2024年大会に向けて最終2コーナーの外側にグラベルトラップを敷設した。

既存の縁石をそのままにしつつも、白線とグラベル間の距離を現行マシンの車幅より狭い1.5mに設定するという巧妙なアプローチにより、走路の端を示す白線を越えたクルマのホイールは確実にグラベルに落ちることになる。

トラックリミット対策としてグラベルと白線の距離が縮められたレッドブルリンク、2024年6月27日F1オーストリアGPCourtesy Of Red Bull Content Pool

トラックリミット対策としてグラベルと白線の距離が縮められたレッドブルリンク、2024年6月27日F1オーストリアGP

ヴィティヒは今回の対策を「完璧なセットアップ」と評したが、角田裕毅はコースとグラベル間の距離が近いが故に発生し得る問題点を指摘した。

「上手く対処したと思いますが、モンツァの第2シケインのようにならないといいなと思います。あそこは砂利がコース側に上に飛び出してしまい、パンクのリスクが高まるんです」と角田裕毅は語る。

「あとはグラベルがフロアにダメージを与える可能性もあります。モンツァとここでは速度が大きく異なるため、そうはならないかもしれませんが、もしそうなった場合、避けるのはかなり難しいと思います」

角田裕毅はさらに、百分の数秒、千分の数秒を争う予選において、これが深刻な問題に発展する可能性を指摘した。

「特に予選では、誰かがグラベルに飛び出して砂利がコースに入ってきた場合、間違いなく次のコーナー、つまり高速の最終コーナーに影響が及ぶことになりますが、そこではリアのグリップが重要です」と角田裕毅は語った。

レッドブル・リンクのコースレイアウト図2021年版copyright Formula1-Data

レッドブル・リンクのコースレイアウト図2021年版

意図的にこの状況を利用するドライバーが現れないとも限らない。予選Q3で暫定ポールタイムを刻んだ後、故意にターン9でグラベルにホイールを落とし、最終コーナー手前に砂利を飛び散らせておけば、後続のドライバーを妨害することも可能だろう。

意図せずともレッドブル・リンクでは、コース内に留まろうとしてもアウト側に膨らんでしまう罠が存在する。

「ここでは1周を通してフロントタイヤがオーバーヒートする傾向があって、それによってアンダーステアになってしまうのがちょっとした問題なんだ」とマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は指摘する。

「それによってコーナーに進入する段階で既にアウト側に膨らんでしまい、結果としてコーナーから抜ける際に数ミリメートルずれてトラックリミットになってしまうことがあるんだよ」

レッドブル・リンクの最終コーナーを駆け抜けるエステバン・オコン(アルピーヌ)、2023年7月2日F1オーストリアGP決勝レースにてCourtesy Of Alpine Racing

レッドブル・リンクの最終コーナーを駆け抜けるエステバン・オコン(アルピーヌ)、2023年7月2日F1オーストリアGP決勝レースにて

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