トヨタ、2021年WECハイパーカー「GR010 HYBRID」と新カラーのヤリスWRCを発表

コースを走行するTOYOTA GAZOO Racingの2021年FIA世界耐久選手権(WEC)用ル・マン・ハイパーカーGR010 HYBRIDCourtesy Of TOYOTA MOTOR CORPORATION

TOYOTA GAZOO Racingは2021年1月15日(金)、2021年シーズンのFIA世界耐久選手権(WEC)に投入するル・マン・ハイパーカー「GR010 HYBRID」並びに、2021年FIA世界ラリー選手権(WRC)参戦車両「ヤリスWRC」の新たなカラーリングを発表した。

952馬力を誇るGR010 HYBRID

昨季のワールドチャンピオンとル・マン3連覇を成し遂げたWECトヨタは今季より新たに始まるハイパーカーカテゴリーでのタイトル防衛に向け、TS050 HYBRIDで磨き上げたハイブリッド技術「RACING HYBRID」を搭載したGR010 HYBRIDでシリーズに参戦する。

GR010 HYBRIDはチームの本拠地ドイツ・ケルンのエンジニアと、日本の東富士研究所に本拠を置くハイブリッドパワートレーンチームが一体となり開発。680馬力を発生させる3.5リッターV6ツインターボエンジンが後輪を駆動し、これにアイシンAWとDENSOの共同開発によって生まれた272馬力のモータージェネレーターユニット(MGU)をフロントアクスルに配す事で4輪駆動のパフォーマンスを発揮させる。

テクニカル・ディレクターを務めるパスカル・バセロンはGR010 HYBRIDについて、ゼロから再設計された従来とは全く異なるマシンであり、最も大きな違いはハイブリッドシステムの成り立ちにあると説明する。

「新型車はフロントにひとつの回生ブレーキを持ち、ブレーキバイワイヤシステムと連携する。このため我々はWECプロジェクト参入以来、初めてスターターモーターと完全な油圧ブレーキシステムを採用することとなった」

レギュレーションに組み込まれたコスト削減の一環として、GR010 HYBRIDは前季型TS050 HYBRIDと比較して重量が162kg増えた一方、パワーは32%絞られ、ル・マンのラップタイムは約10秒遅くなるものと予想されている。車両寸法は250mm長く、幅は100mm広がり、車高も100mm高くなる。

車体のエアロダイナミクスは、高性能な流体力学ソフトウェアと風洞を使用して最大効率を生み出すよう開発された。新しいレギュレーションは、シーズン中に特定の車体パッケージを持ち込むことを禁じており、各チームは異なるダウンフォースレベルの各コースを同一仕様のパッケージで戦う必要がある。

TOYOTA GAZOO Racing WECの村田久武チーム代表はGR010 HYBRIDについて「過去に耐久レースで磨き続けてきたハイブリッド技術とパフォーマンスを最大限に注ぎ込んだ最先端の技術ショーケース」であると説明した。

競争力の平準化を目的に導入されるBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)は、WECシリーズのオーガナイザーがエネルギー使用量や車両重量を規定し、レース毎に車両のパフォーマンスをコントロールするもので、これによりトヨタとスクーデリア・キャメロン・グリッケンハウスやバイコレス、さらにLMP1カーで参戦を表明しているアルピーヌといった競合チームとの接戦が期待されている。

ドライバーラインナップは2019-20年シーズンと変わらず、ディフェンディング・チャンピオンのマイク・コンウェイ、小林可夢偉、ホセ・マリア・ロペスがGR010 HYBRIDの7号車を、セバスチャン・ブエミ、中嶋一貴、ブレンドン・ハートレーが8号車をドライブする。ニック・デ・フリーズも引き続きテスト兼リザーブドライバーとしてチームに参加する。

3大陸全6戦で競われる2021年シーズンは3月19日のセブリング1000マイルを皮切りに、スパ6時間レース(5月1日)とシリーズのハイライトであるル・マン24時間レース(6月12-13日)、1992年以来となるモンツァ(7月18日)と富士スピードウェイ(9月26日)を経て、バーレーン(11月20日)6時間レースで閉幕する。

GR010 HYBRID テクニカルスペック

ボディ カーボンファイバー構造
ギアボックス 横置き7速シーケンシャル
ドライブシャフト トリポッドCVジョイント式ドライブシャフト
クラッチ マルチディスク
ディファレンシャル 機械式ロッキングディファレンシャル
サスペンション プッシュロッド式独立懸架ダブルウイッシュボーン(前/後)
スプリング トーションバー
アンチロールバー 前/後
ステアリング 油圧式パワーステアリング
ブレーキ アケボノ・モノブロック軽合金キャリパー/ベンチレーテッドディスク
ホイール レイズ マグネシウム合金, 13 x 18 インチ
タイヤ ミシュラン・ラジアル(31/71-18)
全長 4900 mm
全幅 2000 mm
全高 1150 mm
車重 1040kg
燃料タンク容量 90 リッター
エンジン形式 V型6気筒 直噴ツインターボチャージャー
バルブ数 4 / シリンダー
エンジン排気量 3.5 リッター
燃料 ガソリン
エンジン出力 500 kW / 680PS
ハイブリッドパワー 200 kW / 272PS
バッテリー ハイパワー型・トヨタ・リチウムイオンバッテリー
フロントモーター/インバーター アイシンAW / デンソー製

GRの文字をコンセプトとした新カラーのヤリスWRC

2021年シーズン仕様のヤリスWRCはGR010 HYBRIDと同様に、GRの文字をコンセプトとする新しいカラーリングを備えた。

2022年に新しいテクニカルレギュレーションが導入されるため、現行のヤリスWRCにとっては2021年が最後のシーズンとなる。

なお今シーズンからピレリがWRCトップカテゴリーの単独タイヤサプライヤーとなったため、ヤリスWRCは新たにイタリア製タイヤを履いてシーズンを戦う事になる。

ヤリスWRCはこれまでに出場したレースの3分の1以上にあたる17戦で勝利を収め、322回のステージ優勝を獲得。2018年にはマニュファクチャラーズタイトルを、2019年と2020年にはドライバーズタイトルとコ・ドライバーズタイトルを手にしており、2021年は3つの選手権タイトル獲得を目指す。

WRCの2021年シーズンは、1月21日(木)から24日(日)にかけてモナコおよびフランスで開催される伝統のターマックイベント「ラリー・モンテカルロ」で開幕を迎える。

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