ジャン・トッド会長「逆らうべきではない」マシやスチュワードへの批判に対してFIAは「寛大すぎたのかも」
国際自動車連盟(FIA)のジャン・トッド会長は、チーム代表やドライバーがレースオフィシャルに数々の批判を寄せた今シーズンを振り返って、FIAは「寛大」に対処し過ぎたのかもしれないと述べた。
激闘のチャンピオンシップ争いが続いた事もあり、2021年シーズンのF1ではFIAレースディレクターのマイケル・マシによるインシデントに対する判断やスチュワードの裁定への批判が続出した。
中でもマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)とルイス・ハミルトン(メルセデス)が同一ポイントで並ぶ状況で行われたアブダビでのタイトル決戦では、最終盤のセーフティーカー解除を巡るプロセスが話題となった。
メルセデスはレース後に2件の異議申し立てを申請するも、スチュワードはこれを却下した。そこでチームは控訴の意思を表明し、4日間に渡って沈黙を続けた後、控訴期限を直前に控えて最終的にこれを取り止めたと発表した。
シルバーアローの指揮官、トト・ウォルフ代表は控訴撤回に際して「個人的な観点からもプロとしての観点からも、私は受け入れる事ができない。私の価値観や誠実さは、日曜日に行われた決定とは相容れない」等として不満を並び立てると共に、シーズンを通して続いたライバルチームとの「不要な論争の多くの原因」は「コース上でのスポーツ的な判断や、レギュレーション適用の矛盾」というオフィシャルによる「一貫性のない意思決定」により引き起こされたとの考えを示した。
ウォルフの発言から数時間を経て、トッドはFIA会長としての最後の職務となった16日(木)のFIA表彰式でフェルスタッペン並びにレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表と同席し、各種の批判を受け止めて継続的な改善に取り組む事は必要との認識を示しつつも、FIAはオフィシャルへの批判を寛大に受け止め過ぎたのではとの考えを示した。
トッドはフランスの日刊スポーツ新聞「レキップ」での記事に触れ、「審判の悪口を言ったためにリヨンのサッカークラブ会長が10試合の出場禁止処分を受けたと書いてあった。もしかすると我々は余りに寛容すぎたのかもしれない」と語った。
「統括団体、チーム、ドライバー、商業権所有者の間での対話は重要だと思うが、それが我々に逆らうものであってはならない」
その一方でトッドは、緊迫した状況下で過ぎた発言が生まれるのはある意味、人間の本質的な部分だと指摘した。
「マックスはターン1の後に、右側からルイスにオーバーテイクされた時『僕は迫害されている』と言っていた。つまりだ、信じるにせよ信じないにせよ、誰もが迫害なんてされてはいないわけだ」
「でも、それが人の感じ方というものなんだ。白熱した状況では誰もが自分自身の感じ方というものを持っている」
トッドはレースディレクターやスチュワードを含めたFIAという組織が「完璧ではない」と認めているからこそ、「詳細な分析と解明作業」を通して来シーズンの開幕までにこうした状況の再発防止を目指していくプロジェクトを立ち上げたのだと説明した。
「今回の出来事を踏まえ、何を改善すべきかという事を含めて全面的な見直しを提案したのはそのためだ。今回だけでなく、この1年間に起こった事も含めてね」