FIA、スキッドブロック規定の「抜け穴」利用を即時禁止…半数チームが影響か F1ラスベガスGPより
違法であるとのレッドブルからの指摘を受け国際自動車連盟(FIA)は、2024年のF1ラスベガスGPに先立ち、新たな技術指令(TD)の発行を通してスキッドブロックに設置する補助プレートの悪用を即時禁止した。
独Auto Motor und Sportによると、フェラーリやメルセデス、ハースを含むグリッド上の半数のチームがこの手法を採用していたという。一方で、マクラーレンとレッドブルは使用していなかった。
スキッドブロックと車高の関係
現行のグラウンドエフェクトカーから最大限のパフォーマンスを引き出す上での一番の課題は、「プランクが路面と接触して過度に摩耗しない範囲で、どれだけ車高を低く設定できるか」という点にある。
プランクは厚さ10mm±0.2mmの長方形状の板材で、フロア最前部のいわゆる”キール”から後輪前方付近にかけてのフロア下に取り付けられている。プランクにはチタン製の滑材=スキッドを取り付ける事ができる。
車体が地面を擦るとプランクが摩耗する。1mmまではOKだが、これを超えると技術規則違反により失格となる。最近では、2023年のアメリカGPでメルセデスとフェラーリが失格処分を受けた。
レッドブルの指摘とFIAの対応
旧来のTDにおいては、摩耗を測定する4箇所に設置されるメインのスキッドブロックとは別に、測定ポイントから離れた位置に補助用のプレートを追加することが許されていた。
今回のトリックは、このプレートを悪用するもので、フェラーリを含む一部のチームが、厚みに関する指定がないことを利用して、メインのスキッドを保護できるだけの厚みを備えたプレートを取り付けていることが判明した。
いち早くこれに気づいたレッドブルは、レギュレーションを厳密に適用すれば違法であるとして、サンパウロGP後にFIAに申し立てを行った。
これを受けてFIAは迅速に対応し、ラスベガスGPの1週間前にすべてのチームに対し、該当する保護スキッドを即時禁止する通達を出した。
なおフェラーリは、ラスベガスの1週間後に予定されているカタールGP以降への延期を求めたが、この提案は認められなかったという。
パフォーマンスにおける車高の重要性が高い空力設計を採用しているチームほど、今回のTDによる影響は大きくなるものと見られる。スキッドブロックの過度な摩耗を防ぐために車高を上げざるを得なくなり、ラップタイムに影響を及ぼす可能性がある。車高1mmの差はコンマ数秒に相当すると考えられている。