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伝統シルバーストンでのF1イギリスGPに赤信号、19年で終了の可能性が浮上

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11日(火)、シルバーストン・サーキットを所有するブリティッシュ・レーシング・ドライバーズ・クラブ(BRDC)は、19年を以て同サーキットでのF1イギリスGPが終了する見込みであることを発表した。

BRDCによれば、F1の新たなオーナーである米リバティ・メディアとの交渉が難航しており、2020年以降のイギリスGP開催権利を放棄する権利を行使したという。これは、再来年のイギリスGPがシルバーストンでの最後のF1グランプリとなる可能性を意味している。

赤字膨らむ英F1グランプリ

シルバーストンは、1950年にF1世界選手権が初めて開催された最も長い歴史を持つサーキットとして知られているが、2015年には£2.8m(およそ4億円強)、16年には£4.8m(およそ7億円強)の純損失を出しており、この額は年々増加する見込みだと言われる。

損失が増え続ける理由のひとつとされるのが、F1運営者に支払われる開催料だ。シルバーストンのオーナーは1年毎に5%ずつ増加するプロモーター費用の支払い義務を課せられている。2011年の開催料がおよそ17億円だったのに対し、6年後の今年17年はおよそ24億円に膨れ上がっている。BRDC会長を務めるジョン・グラントは、開催権利放棄を行使したのは財政的な理由だと語る。

F1イギリスGPは、英国内で最も人気のあるスポーツイベントであり、35万人以上の人々が生放送で視聴しているが、主催者であるBRDCは長年に渡り損失を計上してきた。同サーキットはF1のみならず、多くのモータースポーツイベントが開催される場所であり、このままではF1開催のためにサーキットの所有を放棄せざるを得ない事態になる、とグラントは語った。

リバティ・メディアとイギリス政府への駆け引き

今回の権利放棄宣言にもかかわらず、BRDCはF1イギリスGPの開催の可能性を否定してはいない。

「我々は、リバティ・メディアの友人たちと協力して、全ての利害関係者が満足するような解決策を講じることが出来るはずだ。我々の希望は契約の再締結にある。もしこの希望が叶えば、シルバーストンでの英国グランプリには、持続可能かつ経済的に実現可能な未来が保証される事だろう」

リバティ・メディアは負債を計上し続けるシルバーストンに対して、その一部を肩代わりする提案を行っていると言われるが、今回の契約解除条項の行使発表を見る限り、BRDCはその額に滿足していないものと思われる。

F1イギリスGPの開催は、シルバーストンの財務状況のみで決定し難い側面を持つ。今季F1に参戦しているチームの内、7チームは英国に本拠地を設けており、その多くはシルバーストン近郊にある。これは地域経済にプラス要因として働く他、国全体に対して多くの仕事をもたらしている。英国のモータースポーツ業界は455,000人の雇用を創出しており、その経済効果は105億ポンド、日本円にして1.5兆円規模であるとBRDCは主張している。

今回の声明は、英国でのグランプリ開催の継続を希望しているF1オーナーとの今後の交渉を有利に進め、リバティ・メディアとイギリス政府に対して財政的援助を要請する意図があるものと思われる。

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