フェラーリのガレージに立つオリバー・ベアマン、2024年3月8日F1サウジアラビアGP
Courtesy Of Ferrari S.p.A.

オリバー・ベアマン「本当に惜しかった」初のF1予選で王者をQ2敗退寸前に追い込む、”考える暇を与えない”ほどの土壇場代走決定

  • Published:

オリバー・ベアマンは赤旗により走行時間が失われたFP3のみを経て、軽タン、エンジン全開、ガチンコ勝負の予選に挑まなければならなかったが、それでもQ3まで0.036秒という印象的な結果を残した。

虫垂炎と診断されたカルロス・サインツに代わり、F1第2戦サウジアラビアGPでの残りのセッションでSF-24をドライブする事をベアマンが知ったのは、現地16時30分に開始が予定されていたFP3の2時間半~3時間前という土壇場の事だった。

ガレージに入るオリバー・ベアマン(フェラーリ)、2024年3月8日F1サウジアラビアGP FP3Courtesy Of Ferrari S.p.A.

ガレージに入るオリバー・ベアマン(フェラーリ)、2024年3月8日F1サウジアラビアGP FP3

チーム代表を務めるフレデリック・バスールは「午後の1時半か2時だったと思う!でもそれで良かったんだ!考える暇を与えないほど遅い決定だった」と説明した。

今年、FIA-F2選手権で2シーズン目を過ごす18歳のイギリス人ドライバーは昨年、ハースから2度に渡ってFP1に参加し、今年はフィオラノでフェラーリの型落ちマシンをドライブしているが、SF-24のステアリングを握るのも、予選に参加するのも今回が初めてだった。

ドライバーであれば誰もが常設コースでの初陣を望む事だろう。ジェッダに作られた世界屈指の超高速コースはエンジン全開のブラインドコーナーが多く、コースのすぐ脇にはウォールが迫っており、僅かなミスが致命的な結果に繋がる場所だ。

実際、FP3では周冠宇(ザウバー)がクラッシュを喫し、ローガン・サージェント(ウィリアムズ)もターン22でウォールに接触してクルマの修復を余儀なくされた。また初日にはランス・ストロール(アストンマーチン)が同じようにクルマにダメージを負った。

それでもベアマンはミスらしいミスもなく、たとえチームメイトのシャルル・ルクレールから0.530秒遅れたとは言え、7度のF1ワールドチャンピオン、ルイス・ハミルトンに1000分の36秒差にまで迫り、Q2敗退寸前にまで追い込んでみせた。

ハミルトンは「危うく蹴落とされるところだった!」「FP3で飛び入り参加した彼が、こういう走りを見せた事は本当に印象的だ。彼にチャンスが巡ってきて本当に嬉しい」とする一方、「クルマがかなり良いという事も明らかになった」と述べ、SF-24のポテンシャルの高さに警戒感を示した。

ジェッダ市街地コースを周回するオリバー・ベアマン(フェラーリ)、2024年3月8日F1サウジアラビアGP 予選Courtesy Of Ferrari S.p.A.

ジェッダ市街地コースを周回するオリバー・ベアマン(フェラーリ)、2024年3月8日F1サウジアラビアGP 予選

前日に同じジェッダで行われたF2予選でポールポジションを獲得していたベアマンは、F1マシンの圧倒的なパフォーマンスに「ショックを受けた」と明かし、慌ただしい1日となったイベント2日目を次のように振り返った。

「今朝起きた後は10番手からスタートするF2のレースについて、どうすれば最高の成績を収められるかを考えていたんだけど、ある段階で、F1マシンに乗らなければならない事がハッキリしたんだ」

「カルロスが早く良くなる事を心から祈っているけど、僕にとっては最高のチャンスだし、この機会を最大限に活せるだけの準備はしてきたつもりだ。予選に関しては少しガッカリしたけど、全体的に言えばそれほどガッカリする事もないのだろうと思う」

ジェッダ市街地コースを周回するオリバー・ベアマン(フェラーリ)、2024年3月8日F1サウジアラビアGP FP3Courtesy Of Ferrari S.p.A.

ジェッダ市街地コースを周回するオリバー・ベアマン(フェラーリ)、2024年3月8日F1サウジアラビアGP FP3

0.036秒差でQ3を逃した事については「本当に惜しかった」と語り、「だから少し余計に痛かった。1回目のプッシュラップでミスをしてしまったから、ベストとは言えないタイヤで2回目のラップに行かなきゃならなかった。あれは僕のミスだし、その事を受け止めないとね」

ベアマンについてバスールは「プレッシャーを掛けるつもりはない」として、「目標を設定したり、これをやれなどとは言いたくない。それは間違いだと思うし、私としてはクリーンにやってくれればそれで満足だ」としており、本人もあまり気負わずにレースに臨むつもりのようだ。

レースでの目標について問われたベアマンは「兎に角、クルマを持ち帰ることだね。ポイントを獲得できればボーナスだ。走行距離を稼げば経験になるし。初めてのレースだからあまり期待できないし、ここでのレースは本当に難しいからね」と語った。

ベアマンは土曜の決勝レースで、フェラーリ史上最年少F1デビューを果たす事になる。ベアマンより若くF1デビューしたドライバーはマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とランス・ストロール(アストンマーチン)の2人しかいない。

フェラーリSF-24に乗り込むオリバー・ベアマン、2024年3月8日F1サウジアラビアGPCourtesy Of Ferrari S.p.A.

フェラーリSF-24に乗り込むオリバー・ベアマン、2024年3月8日F1サウジアラビアGP

F1サウジアラビアGP特集