テンガロンハットを被りフェラーリF1-75に乗り込むカルロス・サインツ、2022年10月20日F1アメリカGP
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フェラーリF1-75は思考の「フル回転」を強いるマシン、とサインツ…ルクレールやレッドブルに遅れを取る理由を説明

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スクーデリア・フェラーリの2022年型F1マシン「F1-75」についてカルロス・サインツは、「ドライビング中に頭をフル回転させなければならないクルマ」と形容し、自身のドライビングスタイルに合っていないと主張した。

F1-75は思考の「フル回転」を強いる

サインツはフェラーリ加入1年目にドライバーズランキングでチームメイトを上回る成績を残したものの、今季は大きく水を開けられ、18戦を終えて3位につける僚友シャルル・ルクレールに対して45点ビハインドの5位に甘んじている。

ルクレールと比較してF1-75に苦戦している理由についてサインツはF1アメリカGPの開幕を前に、今年の跳馬グランドエフェクトカーはステアリングを握っている最中に試行錯誤を強いられるクルマなのだと説明した。

「クルマには考えながらドライブしなきゃならないものと、自然にドライブできてしまうものがあるんだ」とサインツは語る。

「今年のクルマはドライビング中にかなり頭を使わなきゃならない」

「このコーナーはああして、このコーナーはこうして…という感じに頭をフル回転させなきゃならないんだ。その結果、先に控えるコーナーのことを考えている間に100分の数秒、1000分の数秒とタイムを失っていくんだと思う」

「最近は特に1ラップペースで速さが出ているし、対応できてはいるけど、それでもレーシングドライバーとしては理想的な状況じゃないよね」

「今年のシャルルは明らかに僕より良い仕事をしている。ドライビングもレース運びもそうだ。彼は最初から僕よりもクルマになじんでいるように見えた」

サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)のパドックで2ショットを撮るスクーデリア・フェラーリのシャルル・ルクレールとカルロス・サインツ、2022年10月20日F1アメリカGPCourtesy Of Ferrari S.p.A.

サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)のパドックで2ショットを撮るスクーデリア・フェラーリのシャルル・ルクレールとカルロス・サインツ、2022年10月20日F1アメリカGP

サインツによるとF1-75は「何処へ行っても競争力を発揮できるマシン」であり、実際ポールポジションを量産しているのはフェラーリだが、それでもレースになるとレッドブルRB18の方が一枚上手だ。

「僕らは殆ど全ての場所でポールポジションを争っているけど、どう言う訳かレースになると、レッドブルは僕らがなし得ていない何かをひねり出してくるんだ」とサインツ。

「直近の4戦では少し実験的な事に取り組んでいたんだ。レースでもう少し競争力を高めるにはどうしたらいいか、タイヤマネジメントをどう改善すべきかってことにね」

「今週末の金曜は来シーズン用のタイヤが用意される。来季に向けてタイヤマネジメントや僕らに足りていない部分を理解し、改善させていく上での鍵になると思う」

5位でも4位でも構わない

曰く、依然として自身のドライビングを「かなり変えなければならない」状況だと言うが、サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)での週末を含めて、F1-75で戦う2022年シーズンも4戦を残すばかりだ。

理論的にはルクレールに対する逆転の可能性は残されているものの、5ポイント差で先行するジョージ・ラッセル(メルセデス)からランキング4位の座を奪還する方が現実的なターゲットと言える。

ただサインツは、あくまでもチームとして勝利を目指して戦い、表彰台に上がり、一貫性あるパフォーマンスを発揮する事がランキングよりも重要だと強調する。

「5位でも4位でも、僕のレーシングドライバーとしての人生に変わりはないし、僕の関心は兎に角、勝つこと、そして良いシーズンを送ることだけにある」とサインツ。

「今年は楽なシーズンじゃなかった。日本GPではミスをしてしまい、選手権争いで更に多くのポイントを失うことになってしまった」

「もちろん、4位なら4位で良いんだけど、例えそうでなくてもシーズンが終わるまでにレースで勝ちたい」

「それに僕らにとっては、勝つこと、表彰台を獲得すること、一貫性を保つことが重要なんだ。それができれば当然、4位を獲得できるだろうけど、僕はチャンピオンシップよりもその事に焦点を当てて取り組んでいる」

フェラーリのスポーティング・ディレクター務めるローラン・メキーズとマッティア・ビノット代表、2022年7月24日F1フランスGPCourtesy Of Ferrari S.p.A.

フェラーリのスポーティング・ディレクター務めるローラン・メキーズとマッティア・ビノット代表、2022年7月24日F1フランスGP

旧友フェルスタッペンにこれ以上の賛辞は不要

優勝やポールポジションを争えるだけのマシンがありながらもサインツは早々にタイトル争いから脱落。2022年シーズンのドライバーズ世界選手権を制したのはトロロッソ時代のチームメイト、マックス・フェルスタッペンだった。

サインツは「今年のマックスの業績についてこれ以上褒める必要はないと思う。だって、彼が素晴らしい仕事をしていた事は誰の目にも明らかだからね」と評価した。

「何度かリタイアがあったから特にシーズン序盤は楽じゃなかったはずだけど、彼らはそれを巻き返して一貫性を保って勝利を重ねていき、僕らが不得手とするエリアで力強さを発揮した」

「だから彼とレッドブルに祝福を送りたい。彼らは十分にそれに値する」

チームメイトだった当時と比べてフェルスタッペンはドライバーとして進化したと思うかと問われたサインツは「間違いなくね」と答えた。

「8年間というのはF1ではかなりの年月だし、F1での初日から8シーズンを過ごせば飛躍的に成長するものさ。彼があらゆるエリアで進化しているのは間違いない」

「成長していない分野なんて一つもないし、彼は一歩一歩、あらゆる面を改善し続けてきたんだ。8年で改善できないものなんて何もない。堂々たるものだよ」

「その上で彼は今、競争力のあるクルマから最大限のパフォーマンスを引き出している。F1で勝つためには欠かせない事だし、そうでなけりゃ決して勝ち取ることはできないんだ」

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