スパ・フランコルシャンでのメディアインタビューに応えるウィリアムズのジョージ・ラッセル、2021年8月27日F1ベルギーGPにて
Courtesy Of Williams

ジョージ・ラッセルは第2のニコかバリテリか…メルセデス移籍はハミルトンとの摩擦を生む?

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ジョージ・ラッセルはメルセデスにおける第二のニコ・ロズベルグとなるのか、それともバルテリ・ボッタスの”忠実な後任”としてルイス・ハミルトンをサポートし、メルセデス王朝の隆盛を支えるのか?

2013年以降、メルセデスは対照的な2度のエポックを経験してきた。チームメイト同士が激しい火花を散らした”ロズベルグ時代”と、不満を感じても荒波を立てないウイングマンの登場でシルバーアローが「ハミルトンチーム」と化した”ボッタス時代”だ。

旧知の仲であるハミルトンに対してロズベルグは一歩も引かなかった。2014年と15年の相次ぐ同士討ちを経てチャンピオンシップ2位に甘んじた後が特にそうだった。それはカタロニア・サーキットでの2016年5月のあの一戦で明確に現れた。

開幕4連勝を記録していたロズベルグが2番手、ハミルトンが3戦ぶりのポールポジションというフロントロー独占で行われたレース1周目、両者はターン4で接触を喫してグラベルの中でレースを終えた。シルバーアローにとってV6ハイブリッド時代初のWリタイヤだった。

ロズベルグはハミルトンとメルセデスにとってチーム内に不協和音をもたらしたとも言える存在だった。対するボッタスはより内省的でチームプレイヤー意識が高く、ハミルトンに食って掛かる事は一度もなかった。

アルファロメオへの移籍発表に際してチーム代表のトト・ウォルフが口にしたように、ボッタスは2017年からのメルセデスのダブルタイトル4連覇に「不可欠」な存在だった。

ラッセルはチームに平穏と安定をもたらす第二のボッタスとなるのだろうか? はたまたチャンピオンシップとこのスポーツに刺激と興奮をもたらす第二のロズベルグとなるのだろうか?

若きイギリス人ドライバーはモンツァでのF1第14戦イタリアGPの開幕を前に、チームから”ハミルトンと対等な立場”との確約を得た事を明かし、メルセデスでナンバー2ドライバーを演じるつもりはないと主張した。

その上でラッセルは「当然、自分を信じているし高い目標を持っている」と語ったが、同時に相対するチームメイトが如何に強力であるかを説き、偉大な王者から学んでいく姿勢を示した。

「ルイスが7度のワールドチャンピオンに輝いたのには理由がある。彼から学ぶ事ができるという点で僕はおそらくグリッド上で最も幸運なポジションにいると思ってる」

「僕としてはメルセデスとのパートナーシップは長期的なものだと考えているし、来年は学ぶためのチャンスとして活用しなきゃならないとも思ってる。その上でレースごとに自分の出方を見極めていきたい」

同郷の大先輩から学ぶ姿勢を強調するものの、ラッセルがハミルトンへの対抗心を以て来シーズンに臨む事は確かであり、雨のイモラでのボッタスとの接触事故の際に冷静さを装った仮面が剥がれ落ちたように、ラッセルがボッタスより血の気が多い性格であろう事もまた、確かと言えるだろう。

しかしながら、当然といえば当然ながらも、本人はロズベルグ時代に見られたようなチーム内紛争の再発の可能性を否定する。

ラッセルは「メルセデスにはチーム内の力学が上手く機能しなかった経験がある。彼らは同じ事を繰り返したくないと明言しているし、個人的にもそういう事態は望んでいない」と語った。

「来年は新しいクルマと新しいレギュレーションが導入される。だがらどのチームのマシンが最速かは現時点では分からないわけで、僕としてはそれを達成できるように推し進めるのがドライバーとしての自分達の仕事だと思ってる」

「それにルイスと僕とじゃキャリアのステージが全く違う。彼の事は本当に尊敬しているし、何の問題もないと思ってる」

何にせよラッセルはF1ワールドチャンピオンになる事を固く誓ってキャリアを歩んできた野心家であり、その目標を達成するための第一条件であるトップチームのシートを手にした今、次なるステップは打倒チームメイトとなる。

ラッセルがハミルトンに対抗できる程の速さを発揮できるのかどうかは未知数であるものの、昨年のサクヒールGPでの代役参戦でボッタスと同程度のスピードを見せつけた事を踏まえれば、来年のハミルトンについてマックス・フェルスタッペンが「非常に難しい状況に陥るのは間違いない」と予想するのも頷ける。

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