
なぜ2026年のF1タイヤ内圧は異常に高いのか?ラッセルが語る、可変エアロが招いた“風変わりなルール”
ジョージ・ラッセル(メルセデス)が、2026年F1第8戦オーストリアGPの予選後会見で、今季のピレリタイヤの内圧が高い理由を明かした。ドライバーが共通して抱える不満の背景には、「風変わりなルール」に基づく安全策があるという。
前年比+4.0psiで「巨大な風船」と化すF1タイヤ
Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.
アストンマーティン・ホンダのガレージ前に置かれたピレリのソフトタイヤ、2026年3月13日(木) F1中国GPメディアデー(上海インターナショナル・サーキット)
ラッセルは、第3戦日本GP以降に実施されたレギュレーション変更に伴うマシンの変化を高く評価し、以前よりずっとドライブしやすくなったとしつつも、「すべてのドライバーが訴える唯一の問題」としてタイヤの内圧を挙げた。
今季のピレリタイヤは、走行中の内圧上昇を見越した初期設定(最低開始内圧)が前年までと比べて非常に高く設定されている。具体的な数値は、サーキットやコンディションごとにピレリが規定する。
例えば2025年のオーストリアGPでは、スリックタイヤの最低開始内圧に関して、フロントは22.5psi、リアは20.0psiに設定されていた。
だが、新たな規定が導入された2026年大会では、フロントが24.0psi、リアも24.0psiへと大幅に引き上げられた。特にリアタイヤは前年比で+4.0psiという大幅な増加となっている。
ラッセルが「まるで巨大な風船の上を走っているような感覚」と嘆くのは、この極端な内圧上昇が原因だ。
タイヤの内圧が高すぎると、路面との接地面積(コンタクトパッチ)が減少し、グリップ力が低下する。結果としてスライドが増え、タイヤの表面温度が急激に上昇し、接近戦でのバトルが困難になる傾向がある。
内圧高騰の裏にある「アクティブエアロ」
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アクティブエアロの一形態ストレートモードを稼働させたルイス・ハミルトンのフェラーリSF-26、2026年6月14日(日) F1バルセロナ・カタロニアGP決勝(カタロニア・サーキット)
なぜピレリはこれほどまでに高い内圧を義務付けるのか。ラッセルはその裏にある、2026年規定を特徴づける要素の一つ、アクティブエアロの存在を指摘した。
「風変わりなルールのせいなんだ。ストレートモードが故障してマシンにかかるダウンフォースが大幅に増えた場合に備えて、ピレリは2〜3psiの補正をしなきゃならない」とラッセルは説明した。
ストレートモードは、電力依存度を大幅に引き上げた2026年のPU規則に起因するラップタイムの損失を補うため、ストレート区間でリアウイングを開いて空気抵抗を減らす仕組みだ。
これが故障してウイングが閉じたままになると、本来想定していたよりも大きなダウンフォースが継続的にタイヤにかかることになる。
タイヤにかかる荷重が想定を超えれば、構造的な負担が増し、最悪の場合はタイヤの破損につながりうる。そのためピレリは、万が一ストレートモードが作動しなくなった場合でも、タイヤが負荷に耐えられるよう、最低内圧にあらかじめ余裕を持たせているという。
ナロー化に伴う負荷の増大
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ピットガレージでピレリタイヤを洗浄するアストンマーティンF1チームのメカニック、2026年5月8日(金) F1マイアミGPプラクティス(マイアミ・インターナショナル・オートドローム)
内圧の上昇には、2026年のタイヤそのものの変更も関わっているとみられる。今季のタイヤは、ホイールサイズこそ18インチが維持されているが、フロントで25mm、リアで30mm、幅が細くなっている。
タイヤが細くなれば、同じ荷重を支えるための条件も変わる。加えて、開発競争に伴いマシンのダウンフォース量はシーズンを経る毎に増大していく。特に新たな規則が導入された初年度は、往々にしてピレリやFIAの想定を上回るスピードで開発が進んでいく。
タイヤに想定以上の負荷がかかれば、サイドウォールが過度にたわみ、バーストを引き起こす危険性も高まる。新しいタイヤに対して、ピレリは安全マージンを確保する観点から内圧を高めに設定する傾向がある。
この「内圧過大問題」についてラッセルは、ピレリが改善に取り組んでいると明かしたうえで、内圧低減を実現できれば、2026年のF1はより魅力的になると訴えた。
「そこを改善できれば、ドライバーにとっても、レースにとってもずっと良くなると思う。オーバーヒートも減るし、もっと接近して戦えるようになる。次の大きなステップはそこだと思う」