リッチエナジーのロゴが掲げられたウィリアムズの2019年型F1マシン「FW42」
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皮肉?買収? リッチエナジー、売却視野に入れるウィリアムズF1に絡む

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敗訴に終わりロゴの差し替え命令を受けた著作権侵害訴訟、Twitter上で奇妙な言動を繰り返す最高経営責任者。2019年オーストリアGPを終えて一方的にハースとの冠スポンサーシップの解消を宣言した”あのリッチエナジー”が、チーム売却を視野に入れ財務再建を目指すウィリアムズF1に絡んでいる。

リッチエナジーは「打倒レッドブルを掲げながらも”ウィリアムズ”に負けている」との理由でハースに契約解除を叩きつけ、その後、契約問題を巡って当時のウィリアム・ストーリーCEOと株主との間で内紛が勃発。最終的にはマシュー・ケルが筆頭株主に就任して社名を「ライトニング・ボルト」へと変更し、問題行動を繰り返した経営トップはブランド資産と共に外部へ逃げ出して、企業としての「リッチエナジー」は消滅した。

決算発表並びにチーム売却の可能性を伝える先日のニュースに触れ、ウィリアム・ストーリーは個人のSNSアカウントを通じて「悲しいことに、ウィリアムズのような黄金の遺産を持つチームが悲惨な苦境に立たされている。責めを負うべきは、怠慢、マシン開発への集中の欠如、人事判断の甘さ、そして経営戦略の不備だ」と述べ、経営陣を非難した。

炎上的手法に代表されるような話題性に溢れるメッセージを使ってSNS上で注目を集めるのはリッチエナジーの十八番。それは権利元が移った今も変わらず、今度は公式アカウントがエンジンカバーに同ブランドのロゴが掲載された2019年型のウィリアムズF1マシン「FW42」と思しき画像を公開した。

この投稿には「ウィリアムズ本社に置かれたリッチ・エナジー・ウィリアムズ・レーシングのマシン案。適切な経営と投資があれば、偉大なチームはF1で再び表彰台に上がれる」とのメッセージが添えられており、一見すると「買収」や「新たなスポンサー」という言葉が脳裏をよぎるが、単なる皮肉のようにも受け取れる。

画像の中の「FW42」にはリッチエナジーのロゴがプリントされているが、実際にグローブのチームが2019年シーズン開幕に先立ってタイトルスポンサー契約を結んだのはROKitであった。なお先日のチーム発表では、株式売却のシナリオと合わせて、契約満了を待たずにROKitとの関係が解消された事が明らかとなっている。理由は公表されていない。

問題の画像は、この投稿のためだけに作成された”偽物”ではないように思われる。背景パネルにもロゴが掲載されるなど細部にまでリアリティがあり、ロゴそのものも著作権侵害が認められて現在は使用が許されていない旧型のものだ。実はウィリアムズは、ROKitではなくリッチエナジーと契約を結ぶ可能性があった。

遡ること2年前。リッチエナジーは当時財政難で消滅の危機に瀕していたフォース・インディアの買収直前にまで漕ぎ着けたもののローレンス・ストロール率いる投資家グループに破れ去り、その後、ウィリアムズに接触するも交渉は土壇場でひっくり返り、最終的にハースと契約を結んだ。ウィリアム・ストーリーはこの時ウィリアムズについて「過去の栄光から離れて暮らし、あまり良いビジネスを営んでいない」とこぼしていた。

公式アカウントのメッセージは「我々と契約していればこんな事にはならなかった」との嫌味として理解する事もできるが、単に新たな投資の受け入れを迫っているだけかもしれない。いずれにしても当該投稿のリプライには好意的な反応は殆ど見られず、ハースとの一件を悪夢とする多くのF1ファンが噛み付いている。

ウィリアムズは投資銀行の「アレン・アンド・カンパニー」と機関投資家向けの投資支援を行う「ラザード」を共同ファイナンシャル・アドバイザーに任命し、新たな資本調達と合わせて株式売却を評価している。具体的な名前は明らかにされていないが、興味を示す少数の潜在的な投資家との会談が既に行われている事が確認されている。