最弱アルファタウリでのF1復帰を語るリカルド、古巣レッドブルで取り戻した自信とマインドセット
ダニエル・リカルドは競争力不足のアルファタウリで自身のキャリアを賭けた大一番に臨む事になる。ドライブするのは角田裕毅が開幕10戦で2ポイントしか獲得できないないグリッド最弱のAT04だが、何も「怖くはない」と非常に前向きだ。
マクラーレンを去った後、リカルドは中団チームでの復帰のチャンスを断った。英国ウォーキングのチームで過ごした2021年からの2年は、決して笑顔を絶やさないオージーの自信を完全に打ち砕いた。それはF1でのキャリア継続に対する要求さえ確信が持てなくなるほどの経験だった。
そんなリカルドがシーズン途中で再びステアリングを握ろうと思ったのは、古巣レッドブルに戻った事で精神的、技術的にかつての自身を取り戻したと感じたためだ。
F1 YouTubeチャンネルのインタビューの中でリカルドは、マクラーレンでの厳しい2年を経て自信が揺らいだ事を認めた上で、レッドブルに戻って馴染みのある顔ぶれと共に過ごし、シミュレーター作業に取り組むに連れて再び「普通のダニエル」を取り戻したと明かした。
「6ヶ月間のオフは僕にとって本当に良かったと思う。帯同するレースが増えるに連れてシムでの作業も増えていき、言うなれば自分の中の熱を確実に取り戻していく事ができた」
「そして数日前にクルマに飛び乗った時『そうだ、これだ!』ってなってね。何も違和感がなく、コースに出ていった最初の1周目に『これは速い!』って感じて、もっと速く走りたいって思えたんだ。だから、本当に良かったよ」
レッドブルの首脳陣はこれまで、マクラーレン時代の経験がリカルドのドライビングに悪影響を与えたと仄めかしてきた。それはシミュレーター作業を通して見えてきたものだった。
リカルドについてヘルムート・マルコは以前、シムでの直接比較を通してフェルスタッペンやセルジオ・ペレスの「レベルに達していない」と厳しい発言を口にしていたが、「我々は彼を立ち直らせた。今ではシミュレーターで良い仕事をしている」と、ここ数週間で評価を一変させた。
そしてフェルスタッペンに迫るラップを刻んだともされるシルバーストンでのタイヤテストが決定打となり、ファエンツァのチームでの10年ぶりのドライブが発表された。
ただ、シーズンの残り12戦でドライブするのはRB19ではない。コンストラクターズ選手権で最下位に沈むAT04だ。アルファタウリの2023年型マシンの最大の問題は、レイトブレーキングでコーナーにアプローチする際、リアが不安定になり、ミッドコーナーでアンダーステアが発生する点にあると見られている。
これはリカルドにとって前向きな材料とは言えないだろうが、2014年のレッドブル時代に勝利を収めたハンガリーGPでの復帰戦を前にリカルドは「あまり先入観を持ちたくない」と語った。
「クルマに制約がある事は理解している。全体的にダウンフォースが足らないんだろうと想像してるけど、バランスの取れたクルマであるなら、数日前に運転したレッドブルほどグリップ力は高くないかもしれないけど、比較的バランスが取れていると感じられるなら、何とかやれると思う。それと同時に、自分の経験を活かして開発面でサポートしていく事も楽しみにしてる」
「でもブダペストでは、兎に角、コースを走って楽しみ、良い時間を過ごしたいね」
マクラーレンでの悲惨な経験に比べれば、グリッド最弱のマシンをドライブする事はリカルドにとって取るに足りない事のようだ。
「確かにこれは、いきなりクルマに飛び乗って走るというチャレンジではあるけど、昨年あるいはここ数年、色々な事を経験してきたから、何が起きても怖くはないし、楽しみなんだ」とリカルドは語った。
アルファタウリでのカムバックが決定したとは言え、リカルドが目指すのはレッドブルでキャリアを終える事であり、結果を残せば出戻りの可能性がある事を踏まえての決断だ。
ペレスとレッドブルの契約は2024年末まで有効だが、過去5戦での予選成績は非力なウィリアムズFW45を駆るアレックス・アルボンと五分五分で、レースクラフトは別にせよ、1ラップペースに大きな課題を抱えている。
最強最速のRB19をドライブしながらも、33歳のメキシコ人ドライバーはフェルスタッペンに大きく劣るどころか、フェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)にランキング2位の座を狙われる立場に甘んじている。
コストキャップの効果が徐々に出始める事が予想される今後に向けては更なる接戦が見込まれる。今季はさておき2024年以降もこの傾向が続けば、レッドブルは例え最速のマシンを作り上げてもコンストラクターズ選手権を落とすかもしれない。
アルファタウリでの復帰を告げるマルコからの電話は、ヒスパニア・レーシングからトロ・ロッソ、そしてレッドブルへと出世街道を突き進んでいたかつての気持ちをリカルドに思い出させた。
「レッドブル・ファミリーの中で仕事をしていた時のような気分だよ。結果を残す事で後押しされるというようなマインドセットだね」とリカルドは語る。
「このチームは今年、ポイントを獲得する事に苦労している。だから、このクルマをプッシュしてトップ10入りを目指せば、皆の気持ちが高ぶるだろうし、充実した気分に駆られると思う」
「僕に求められているのは結果やパフォーマンスだ。それが8位なのか14位なのか、実際にクルマに乗ってみるまで定義するのは難しい」
「プレッシャーがあるとは考えていない。サマーブレイクまでに2レースある。8月までにこれをしなきゃならない、ということはないと思う」
「だた、スロースタートを切りたいとは思っていない。兎に角、走りたいし、今回の休暇で学んだことを活用したいと思ってる」