ガレージ内で会話するレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表、2022年5月8日F1マイアミGP
Courtesy Of Red Bull Content Pool

移籍人員による”犯罪行為”疑惑…レッドブル、酷似アストンを巡り独自ソフト管理システムを使って内部調査

  • Published: Updated:

RB18に酷似する改良型アストンマーチンAMR22を巡ってレッドブルは、移籍した元チームスタッフによる「犯罪行為」の有無について確認すべく、独自のソフト管理システムを使って内部調査を行う方針を示した。

F1第6戦スペインGPの週末に向けてアストンマーチンはアップグレード・パッケージを投入した。開幕前日に公開された大幅改良のAMR22には、レッドブルの2022年型F1マシン「RB18」との明らかな類似性があった。

アストンマーチンAMR22とレッドブルRB18の比較、2022年5月20日F1スペインGPフリー走行1にてCourtesy Of Aston Martin / Red Bull Content Pool

アストンマーチンAMR22とレッドブルRB18の比較、2022年5月20日F1スペインGPフリー走行1にて

統括団体の国際自動車連盟(FIA)はシルバーストンにあるアストンマーチンのファクトリーまで足を運び、関連データと開発プロセスについて調査を行った上で、リバース・エンジニアリングを禁じるレギュレーション違反にあたらないとの判断を下した。

だが、チーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーは、元スタッフがアストンマーチンに引き抜かれた後に、これほどまでに似通った空力コンセプトが出てきた事は「偶然ではない」と考えており、不正行為の有無について内部調査を行うと説明した。

レッドブルの指揮官はバルセロナでの金曜フリー走行を経てSky Sportsに対し「この冬から今シーズンの始めにかけてレッドブルからアストンマーティンに移籍した人物が何人かいたのは偶然ではない」と語った。

「今週の初めにFIAから『あなたのクルマとよく似ているクルマがあるので、彼らの移籍先を確認するために離職者のリストを見せてもらえるだろうか?』との知らせが来た。つまり注意を呼びかけてきたんだ」

「パドックではガーデニング休暇の後に他のチームへと移籍する事が認められており、彼らの頭の中にあるものは彼らの知識であり、フェアなゲームだとされている」

「だが知的財産権の流出があった場合は別だ。それはフェアではないし、全く受け入れられない」

証拠について問われるとホーナーは「特定の個人について言及するつもりはないが、知的財産は何百万ポンドをも投資じてきたチームの生命線であり、犯罪行為に該当しうるものだ」と答えた。

サイドポッドが酷似しているアストンマーチンAMR22とレッドブルRB18、2022年5月20日F1スペインGPフリー走行1Courtesy Of Aston Martin / Red Bull Content Pool

サイドポッドが酷似しているアストンマーチンAMR22とレッドブルRB18、2022年5月20日F1スペインGPフリー走行1

FIAは既に規制違反がない事を確認しているが、ホーナーは「不正行為の証拠が明るみに出れば、それは別の問題になる」と述べ、この問題はまだ完全には解決していないと指摘すると共に、内部調査を行う考えを示した。

「我々には独自のソフトウェア保護システムがある。どのソフトウェアが何処で使われているのかを正確に把握しているんだ」

「ただそれは本来、規制当局であるFIAの仕事だと思う。彼らはアクセス権を持っているし、IP(知的財産)の移乗や乱用がないことを確認する作業に関しては彼らを信頼している。つまり取り締まるのは彼らの仕事なんだ」

渦中の一人である元エアロダイナミクス責任者のダン・ファローズの移籍の経緯について振り返ってみたい。

アストンマーチンは昨年6月、15年に渡ってレッドブルのエアロ開発を先導してきたファローズをテクニカル・ディレクターとして引き抜いたと発表した。だがファローズとレッドブルとの契約は2023年まで有効だった。

そこでアストンマーチンは契約の早期解除を求めて一件を法廷に持ち込んだ。最終的に和解へと至る事となり、ファローズは4月2日付けでアストンマーチンでの職務を開始した。

一方でRB18の現行デザイン、あのサイドポッドが日の目を見たのはF1バーレーンテスト最終3日目、3月12日の事だった。アストンマーチンが物議のアップグレードを公開したのは5月19日。ファローズの職務開始から47日後、RB18の現行デザイン公開から68日後の事だった。

アストンマーチンが突如タイトル争いに絡むような状況にでもならない限り、レッドブルが今回のアップグレード問題に過度に噛み付く必要はない。チャンピオンシップには何の影響もないからだ。

それでもホーナーは前面に立った。

「アストンマーチンが我々を打ち負かさない限り、我々にとってこれは大きな問題ではない。だが、ミッドフィールドのチームにとっては重大な影響が出る可能性がある」とホーナーは語る。

「我々が最も重視しているのは、自分たちのIPが守られていること、そしてそれが悪用されていないことにあるんだ」

ホーナーは違法の証拠について明言を避けたが、レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコはその存在を認めている

F1スペインGP特集